2020.01.15 15:00
ペットと災害に備える
ペットの迷子や避難所トラブルを未然に防ぐ方法とは?

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「ナイス犬しまい」というハッシュタグをご存知だろうか。台風の際に、室外で飼われている犬をはじめとするペットを家のなかに「しまう」という考えからきている。ペットを屋内で保護し、被害から守ろう、という呼びかけである。

2019年は、災害の多い年だった。9月9日に上陸した台風15号は、千葉県を中心に、都心の交通網にも数日間影響が及ぶほど、被害が大きなものだった。避難指示は4県8,613人に出され、実際に避難したのは1,128人にのぼる。
10月12日に上陸した台風19号は、東北地方・関東地方・甲信地方と広範囲に被害は広がった。避難指示は21府県22,525人に出され、実際に避難したのは13,579人。 

15号よりも19号の避難人数の割合が増えているのは、そうした情報を受けての結果ではないか。繰り返し大きな台風を迎える中で、避難所の様子や現地で必要なもの、もっと早くからやっておくべきだったことなど、多くの情報が発信された。避難や準備の大切さを痛感した人も多い。「ナイス犬しまい」も、こうした思いから生まれたものだろう。

また2011年の東日本大震災では、青森県で少なくとも 31 頭、 岩手県で 602 頭、福島県では約 2,500 頭の犬が震災により死亡したことがわかっている。無事に災害を逃れた場合でも、飼い主がわからなくなってしまったペットの保護や、避難所でのペットの受け入れなど、問題はいくつもあった。

ペットを飼っている人は、避難で離ればなれになりたくない、自分で世話をしなくてはいけない、という思いが当然あるだろう。家族と同じようにペットも最優先で避難ができるように、事前にできることはなんだろうか。


ペットと防災を考えるため、阪神・淡路大震災の体験記『阪神大震災と7匹の猫』の著者である大鳥喜平さん(医学博士 / 大阪府医師会会員)に話を聞いていく。

 

登山で自然と身につく緊急時の状況判断力とは?

登山歴65年でお遍路エッセイの著者である田口隆二さん(登山家)は、登山でいざというときの対応力が身につくという。

 

<ゲスト紹介>

田口隆二(たぐち・りゅうじ)
1951年から山歩きを始め、現在まで登山歴65年。山行回数1700回。
山男の歩き遍路: 四国八十八ヶ所巡礼の著者。


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“ 山歩きは体力・気力・緊急時の状況判断力などが総合的に身につきます。家族で取り組みやすいアウトドアです。登山の経験がない人は、専門的な知識や特別な体力が必要で素人には危険、といった先入観をもつ人もいるでしょう。

しかし、山歩きといっても色々あります。やさしい里山歩きであれば危険が少なく、費用もさほどかからないので意欲さえあれば誰でも挑戦できます。それでいて、楽しく健康的で、災害対応能力も自然に身についてしまう、一石三鳥も四鳥もあるアウトドア活動です。

都心からでも行きやすい場所にも小川や里山はあります。どこの市町村でも散策目的の人向けに無料マップが用意されているので、親子でお弁当を持って歩いてみるのもいいでしょう。 身近な里山にも傾斜の急な坂や水たまりがありますし、急な天候の変化もよくあることです。シーズンによって突然の雷雨、猛暑、寒風などさまざまです


山は標高差が大きいほど天気が変わりやすい。スポーツ庁は登山事故防止について、つぎのことが大切だと通知している。
〇 数日前からのゆとりある計画を立て、備えること
〇 目的に合わせた装備を持参すること
〇 最新の気象情報の把握すること
〇「つまずき」などの小さなきっかけによる転倒が大けがにつながるため、無理をせず一歩一歩慎重に進むこと
・参考 🔗 - スポーツ庁 / 冬山登山の警告文夏山登山の警告文


これらは登山に限らず災害時にも意識すべき注意点だ。体験をともなうからこそ学べることがあり、いざというときに学んだことを応用する方法が思い浮かぶ。



“ 災害時にも通用する技術や用具などのノウハウが、とくに意識をせずとも楽しみながら身につくのが登山のよいところです。継続的に行うとより効果的でしょう。実践的な学びにするため、つぎの3つを取り入れてみてください。”
1 現地まで車を使わずに行くこと。電車やバスなどの公共交通機関を利用し、現地はすべて徒歩が望ましい。
→どこで被災するかわからないため、車がない状況に慣れておく必要がある。

2 スマホアプリなど自動的にルートをナビゲートする手段に頼りすぎないこと。緊急連絡のためにスマホは必要だが、地図を見ながら親子で相談し、場面に応じて自分たちで判断する。
→災害時は電波がつながりにくいため、アナログの方法に慣れておく必要がある。

3 登山後に反省・感想を記録しておくこと。体験を次回の準備に役立てる。
→記録することで記憶を整理して残せるので、体験を応用しやすくなる。

クーラーボックスとペットボトルが命を救う!?

20年前の玄倉川水難事故のニュースに危機感を覚えた安蔵貞夫さん(元高校教師  / 日本赤十字社特別社員)は、生徒と身近なもので身を守るための実験を行ったという。

<ゲスト紹介>

<ゲスト紹介>

安蔵貞夫(あんぞう・さだお)。
水戸南高校通信制勤務、日本赤十字社特別社員。
エッセイ 山からの手紙: 人生の単独行をゆく君へ』の著者。


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“ 神奈川の玄倉川水難事故では、キャンプ中の家族13人が亡くなりました。8月のキャンプシーズンのことでした。川の中州での野営は危険であるとの度重なる警告を、大人たちは完全に無視し、増水した中州に取り残されました。

状況の深刻さに気付いたときにはすべての資材が流され、ダンゴになって固まるしかなく、最終的に子供たちを含む全員が流されてしまいました。事故後、生徒といっしょに実験をした結果、つぎの4つのものが役立つとわかりました。”
1 空のクーラーボックスにヒモを十字に結び、持ち手をつくると5~6人の大人が放射状につかまって浮かべる。

2 空のペットボトルを着衣の胸に入れ、飛び出さないようにヒモで結べば簡易ライフジャケットになる。2リットルなら大人用のライフジャケットが作れる。1リットルのビンでも効果は高い。

3 グランドシート(テントの下に敷く保護シート)一体型のテント単体でプールに3時間くらい浮かべられる。赤ちゃんであれば短時間乗せて浮かべられそうなので、緊急時にボートとしての役割が期待できる。

4 釣り竿のおもりを遠くに飛ばし、糸づたいでロープをかけられる。水の中でもつかまる場所ができる。

これらはあくまでも緊急時の代用品だが、ほかの水害発生時にも応用できそうなアイディアだ。ただし子供がいる家庭の場合、より安全なライフジャケットを備えておくとよい。子供は着なれないものを拒否することが多いので、行楽シーズンに海や川で着用して遊んでおくとよいだろう。

大人は子供にとっての危険をよく考えてみてください。自然の危険を完全に避ける方法はないです。大人たちの力量、シーズン、装備などを十分に考慮して備えましょう。


この記事のまとめ 

〇 暮らしのサイクルに「備える」を組み込むことが大切。

〇 地震や台風による二次災害(地すべり・地すべり・転倒によるケガ 等)を想定し、行動面でも備えが必要。

〇 災害発生時に役立つ知恵登山は体力や気力だけでなく、急な気象の変化への対応が緊急時の状況判断力を育む。

 

〇 災害発生時に役立つ知恵家庭にある身近なもの(ペットボトルやクーラーボックス)を工夫すれば、いざというとき水に浮かべる。水や海でライフジャケットを着用して浮かぶ体験をするとよい。

 

〇 家族で継続的にアウトドアに出かけよう。自然とふれ合いながらさまざまな可能性を知っておくと、実践的な危機回避能力が育まれる。

(執筆:佐藤志乃 / 制作:一条恒熙)