愛する人と理解し合っていい関係を築く方法〜愛情と思いやりのちがいは何?〜
- 前編 -
愛情表現の方法としての思いやり
文学やダンスなど芸術からインスピレーションを受け、執筆活動に情熱を注いでいる鵜飼宏明さん(元大学教員、元TBS番組制作)は、愛と思いやりの関係についてこう語る。
愛情はさまざまなシチュエーションのもとに、さまざまな愛のカタチがあります。そのカタチを表現する方法のひとつが「思いやり」です。
これは相手に対する同情や哀れみなどではなく、「相手がいつも何を考え、何を望んでいるのか深く知りたい」という思いが原動力となった行動です。
心の距離を近づけるための愛情表現が「思いやり」なのではないでしょうか。
自分を理解してほしいという期待は、相手を理解することで自然と満たされます。
自分が相手に愛を与えたからといって、必ずしも相手から愛を与えてもらえる訳ではないが、与えてもらう可能性を高めることはできる。
これには、心理学の「返報性の法則」が影響している。
【返報性の法則】
〇人から何かもらったら自分も相手にお返しをしなければならないという心理が働くこと。
〇自分が好意を示すと相手も好意を示してくれることを「好意の返報性」という。
※相手との関係性や行動するときのタイミングなどによる影響がある。とくに、付き合いや関係性が長くて深いほど通用しなくなり、そのなかでもパワーバランスに偏りがある関係だと素直に受け取ってもらえない。
この「返報性の法則」は、意識しすぎると毒にもなり得るので注意が必要だ。相手に対する行動の動機がギブアンドテイクの見返りになっていると、相手にプレッシャーを与えてしまう。
なかでも危険なのが、自分では気づかぬ間に見返りを求めている場合だ。与える愛が大きすぎると、思いやりだったはずの気持ちが「わたしは〇〇しているのに」という不満や怒りに変わていく。
愛情の大きさはお互いのバランスが大切だと鵜飼さんはいう。
愛する人との出会いは、ひとりでは知りえなかった新しい自分との出会いをもたらしてくれます。
お互いが相手を力づけ、人としての成長を後押しできたとき、心の距離が近づくでしょう。
与えるだけ・与えられるだけではない、そんな「思いやり」もあるのです。