|人とのつながりがはじまる場所

実際に足を運んで見たものをライフワークとして書き留めている赤間直さん(エッセイスト)。今の時代にこそ伝統の継承が必要だと言う。

こころの故郷のひとつに、地元のお祭りがあります。私が子どものころは戦後で、ものが少ない時代でした。
それでも楽しみがあって、前夜祭の鐘の音や夜に神社へ友達と出かけることに非日常を感じ、ワクワクしていました。地元の青年団が舞う神楽を見たことや、その周りで夜遅くまで遊んだことが大切な思い出となっています。


地域のお祭りをきっかけに日常が賑わい、人々のこころが潤う。神社の階段や何気ない道が特別な場所として地域に根付き、時代を超えて残っていくだろう。

伝統行事は人々のこころの故郷です。伝統行事が継承されることにより、年齢や世代を超えて多くの人々と語り合うことができます。共有できる話題で会話が増えていくと、人の営みを豊かにしてくれます。


伝統が人々をつなぎ、思い出を振り返る機会をくれる。そのトリガーとなるのが音や場所だ。写真だけではわからない高揚感を実際に体験し、人とのつながりを生み出す場としての価値を見出すべきではないだろうか。


|人の表現を自分のものにすり替えない

安孫子十字さん(歌人)は訪れた場所に想いを巡らせ、自分の人生を詠んでいる。

自分のなかから湧き出た感動を形にすると、より鮮明な記憶として残りつづけます。景色としての美しさよりも、一瞬をとらえた人間味のある情景を言葉で表現できたときに格別の喜びを感じます。


写真を撮り、SNSで「いいね!」をもらって楽しむこと自体は悪いことではない。美しいものや楽しいことへの興味が高まることはむしろ素晴らしいことだ。しかし、だれかの感性をまねし続けて自分のものだと勘違いしてはいけない。

現代人はSNSのタイムライン上の情報量が膨大で、他人の発信物へのリスペクトを疎かにしがちだ。本当の自分とかけ離れたおしゃれ感の演出だけが目的になっていないだろうか。

だれでも情報収集や発信のためにSNSを使うことができ、素人でもアプリの力を借りて「それっぽい」写真が撮れる時代になった。人からの共感が最優先でパクリに対する感覚が麻痺すると、創造する尊さを忘れてしまう。小手先のセルフプロデュースで失うものを考え、おしゃれ感の先にあるリアルを愛してほしい。

インスタ映えに執着している人たちが「本物がわかる人」になるためには、写真を撮ったときに感じたことと深く向き合わなければならない。目の前のものや景色をまわりの人と共有するとき、自分だけの感性で表現することに価値があるからだ。SNSとうまく付きあい、喜びにあふれた人生を送る人が増えることを願っている。

( 企画・執筆:佐藤志乃 / 企画・制作:一条恒熙 )


▼ゲスト紹介

【1人目】
澤田盛夫
(さわだ・もりお)。
歴史小説家。
【2人目】
赤間直
(あかま・なおし)。
エッセイスト。
【3人目】
安孫子十字
あびこ じゅうじ)。
歌人。
童子の像: 歌集』の著者。