『子供の弱気を克服する空手』
社会の理不尽に負けないメンタルトレーニングとは?
子供に「礼儀が身につく」と習い事として人気がある武道。その種類は柔道・剣道・弓道などさまざまあるが、2020東京オリンピックでようやく正式種目として採用された「空手」に注目が集まっています。
世界中で愛される空手、愛好者人口はどのくらい?
「空手」は日本の沖縄で発祥し広まったが、現在はヨーロッパでの人気も高い。
海外の愛好家たちは肉体よりも精神面の鍛錬に魅力を感じ、人間力アップに重きを置いている。
そして、空手は流派が多く存在し、ルールが統一されていないため、町道場など習える場所が多いのも人気の理由だ。現在の空手人口は、次のようになっている。
日本の総人口は1億2614万人です。(令和元年10月1日現在)空手の世界愛好者数が1億3000
万人以上いることから、世界中で愛されている競技だとわかります。
ちなみに、同じ武道である柔道の世界愛好者数は数百万と言われており、そのなかでも全日本柔道連盟登録人口は14万9301人だ。(平成31年3月1日現在)
<出典:公益財団法人全日本柔道連盟 / 登録人口の推移について>
空手で鍛えられる、世界で通用する力とは?
グローバル社会に通用する強い精神を育むにはどうしたらよいか、富樫宜資さん(全日本武道空手道連盟総裁、日本空手道無門会会長・最高師範)に話を伺った。
子供たちはいま、さまざまな解決困難な課題を課せられています。
グローバル化社会を生き抜くためには、多くの優秀な外国人たちとの激しい経済的そして社会的な競争意識が必要です。
無門会空手の特長は、物事の本質を純粋に追求することにあります。その方法として、スポーツ競技的な勝ち負けを競い合うだけではなく、日本古来から伝わる伝統的な武道としての心身鍛錬を積むのです。
「本質を極める」心持は、世界トップ水準の知識や道理を身に着けるために重要なスキルになります。
「本質を極める」と自信が付き、物怖じしない姿勢が身につく。海外では次のような態度が好印象だ。
・ 疑問に思ったことや違うと思ったことに質問や意見が言える人
・ 「なんでもいい」ではなく、「はい」か「いいえ」が言える人
理不尽に負けないメンタルをつくるためには?
では、空手の稽古で精神面がどのように鍛えられるのだろうか。富樫さんは2つの効果があるという。
子供でも初歩から安全に段階的な練習を行うと精神面の成長が期待できます。
1つめは、大人になるための人生指針を築くことができます。社会には理不尽なことが蔓延しており、どんなに努力しても、自分の思い通りに進まないことが多くあります。
純粋な武道技術を養う過程は、この不当さと不公平を跳ね返し、自分の中に強い自信を芽生えさせることができます。
これらは、少年・若者だけでなく、医師や弁護士、教育関係者など、社会人として成熟した中高年の空手愛好者が多いことから証明されます。
2つめは良いこと悪いことの判断ができるようになる、教育的効果です。空手の稽古にゴマカシやズルは通用しません。
自分が努力したことだけが結果として評価される世界です。
子供や若者たちは、正しく真っ直ぐに生きる、イジメなどの理不尽な仕打ちに決して負けない強い心と身体を鍛えることができます。
空手はさまざまな年代や立場の人に愛されている武道だ。
子どものころから自立した精神を持つ大人たちと稽古をすると、子ども自身も自立する。
家族以外のどんな人と関わり合っていくかが成長の鍵といえるだろう。
(企画・執筆:佐藤志乃 / 企画・制作:一条恒熙 )