2021.6.14 15:00

「アートで町おこし」の売りは地域色だけなのか 経済効果9,300万円。継続20年。その魅力は?


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観光の目的の一つに、博物館やアート鑑賞を取り入れる人も多い。地方でもアートフェスティバルが多く開催され、地域と結びついたアートが注目されている。ビエンナーレやトリエンナーレは、10年以上開催を続けているものもある。

ビエンナーレ…二年周期で開催される芸術祭
トリエンナーレ…三年周期で開催される芸術祭

文化庁の調査によると、芸術フェスティバルの開催目的は、「市民の暮らしへの文化芸術の普及」が51.4%、「地域の魅力向上」が47.1%。
<参考:文化庁/我が国で開催される文化芸術の フェスティバルの実態等に係る 調査報告書>

「伝統や地方ネタがモチーフの作品がメイン」「東京の方がメディアで紹介される展示、博物館が多い印象」と考えられ、後世に残すため伝統や観光地のアピールをイメージが強かった、地域資源としての芸術。

しかし今、「伝統を知ってもらう」「イベント性を持たせる」以上の趣旨を掲げるものも多い。日本中や世界からも注目を集め、アートによって地域の活気が戻った例もある。地域発祥のアートが注目される理由、伝えたいこととは。




地方だからこそつくれる新たな芸術とは


各地で開催される芸術祭も、それぞれ狙いは異なる。新潟県越後妻有地域で開催される「越後妻有 大地の芸術祭」は、野外彫刻作品や、廃校や空家を活用した作品が見られる。

「瀬戸内国際芸術祭」は瀬戸内の12の島と2つの港で開催され、野外彫刻や地元の伝統芸能が楽しめる。全国から募集するボランティアサポーター「こえび隊」が有名で、2022年に第5回目を迎える。

どちらも継続的な開催がされているほど、参加者は多い。芸術祭は多数の企業・団体・アーティストが参加しており、開催期間以外でも見られる作品もある。期間によって展示は異なり、芸術祭では事前チケットが必要になる場合が多いため、ホームページの確認が必須だ。

芸術により、ほかの産業のアピールも期待できる。青森県田舎館村が発祥の田んぼアートは、稲作が盛んな地域に広まった。新たな名物となって、稲作を知ってほしい・足を運んでほしいという狙いがあり、田舎館村では、田植えや稲刈りの参加者も募集している。平成28年度は展望料収入が9,300万円に上ったほど、経済効果があるという。
<参考:首相官邸/地方創生事例集 平成29年1月>

いずれも自然をテーマに、地域の再生を掲げているが、地域色だけにしばられる形ではなく、新たな芸術をつくりだしている。その土地の新たな魅力として、アートが人を集めているのだ。




芸術は市民にどう貢献していくのか


芸術を通じた町おこしは、外部から人を集めるだけでなく、地元の良さを市民に再確認させることにも有効だ。

「さいたま国際芸術祭」は、地域文化の発信も目的としたイベントの一つ。さいたま文化の創造・発信、人材の育成、まちの活性化が目的だ。旧大宮区役所のほか、付近の劇場や博物館が会場となっている。

各地の博物館も、地域色の強い観光地として注目される。博物館は芸術と市民をつなぐ施設で、次のような目的が期待される。

◯地域文化の発信→情報発信、地域資源の利用など
◯あらゆる人が参加できるプログラム→学習講座、創作支援など
◯学校教育等との連携によるアウトリーチ活動→団体見学、芸術鑑賞の場として利用
◯新たな機能の創造等の支援→観光やまちづくりとの連携
<参考:文化庁 地域と共働した博物館創造活動支援事業>

地域文化と芸術。どちらにも親しみが持てるよう、双方をつなげる活動となっている。市民も注目できる話題性と、地域色を両立させる企画は、どのようにしてできるのか。



継続的に結果が出るアートイベントとは


地方創生のためのアートイベントで目が行きがちなのは、目新しさや作品・アーティストの話題性だろう。

しかし目的は一時的なイベントとして注目されることではなく、継続的に集客を見込み人の流れをつくること。他の成功例や流行りを取り入れるのは、その地域に有効でない場合もある。過去には資金面や集客の見込めなさを理由に、継続が困難になったアートイベントもあるため、現実性のある計画を立てよう。

地域の名前やイメージを背負ったイベントは、行政や地方団体の協力もしてもらい、地域を団結してこそ開催できる。継続的に実施されている芸術祭は、協力者や理解者の存在が欠かせない。市民に理解されるコンセプトをつくりこみ、「人が来てほしい」「地域を知ってほしい」といった期待に応え、結果を出すことが必要だ。

都心や遠方からの集客を期待するのであれば、情報発信は欠かせない。現地への行き方や見方が心配な人も多いため、巡り方や交通アクセス、見所をまとめたホームページは有効だ。さらに専用バスなど移動手段の確保、ツアーの実施、来場者の参加型イベントもあると行きやすくなる。

訪問者と市民、どちらも考慮したイベントが継続性を生む。たくさんの人の参加によって育ったアートには、今後も注目が集まるだろう。


執筆:林 幸奈




この記事のまとめ
  • 伝統にしばられない形の、地域特有のアートが注目されている
  • 新たな魅力をつくり、地域文化を発信する力がある
  • 利用者や市民の気持ちを考え、継続性のあるものにしていく



今回のコメンテーターからのご意見

熱田親憙(あつた・ちかよし)

写真

この記事は、町おこしに果たすアートの役割として、アートの地域的特性、魅力的な地域文化の発信、継続性の三点を強調されている。どれも納得のいくキーワードであるが、もう少し補足すると、効果的な町おこしが得られると思うので、補足を以ってコメントとしたい。

①町おこしのために地域文化の発信は、言い換えると、その地域に於いて癒される、快い暮らしをするには、どんな暮らしをしたらよいかを気づいて貰うために、その地域にしかできない生活体験を呼び掛けることである。青森県田舎館村のように田植えや稲刈りの体験を観光化し、参加者には美味しいお米を勧めて9,300万円の経済効果を農村に寄与させるだけでは、継続20年は無理であろう。参加者の利益を更に考えて、農家は美味しいお米だけでなく、例えばお米を使った発酵食のメニュウを参加者に提案する周辺情報の発信が大事であろう。そうすれば、地元市民も近隣市民も集まってきて、町は盛り上がるであろう。さらに、市民からこんな食べ方はどうですかと、逆提案されたら、コミュニテイは永続するであろう。

②文化を発信するためアートする人としての心掛けを申しあげたい。自分の体験で恐縮です。「紀伊山地の霊場と参詣道」が世界文化遺産に登録されて10周年になった2014年、「熊野古道みちくさ記」の新聞連載をする機会を得た。取材を通して、道はその地域の生活道路から始まり、日本全国の公の街道として、修行の道、祈りの道となり、時代と共に商いの道、情報の道、社交の道へと役割が変化したことを歴史として学んだ。ある時、熊野街道沿いの神社境内の欝蒼と茂った樹木の巨木の前に立つと、その生命力に尊厳な気持ちになり、オゾンの豊な空気に深呼吸したくなり、揺りかごの赤ちゃんのように癒された。森の持つセラピー効果に気づいたのです。現代的価値として発信した。発信者として引き出しを多くするためにはフットワークと好奇心を持つ大切さを学びました。

③町づくりの必要を叫ばれて久しいが、成功例はあまり聞かない、いや聞かされていないのかもしれない。TV, ビデオ、ケータイの普及につれ、映像文化が普及し、ユーザーは流れいく映像で分かった気になり、物事をゆっくり考えず表皮的になっているように思う。この欠点を補うのが文字文化である。幸いにも、コロナ禍を避けるため自粛生活は文字に親しむよき機会と思い、拙著「熊野古道みちくさ記」の電子書籍化を決意したのである。文字に親しむことで、物事にストーリーを読み取り、アートで表現された事柄にははっきりとした生活シーンがイメージできるので、読者が正しく理解し感動することを期待しているのである。これもアートする人のこころ構えかもしれない。
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