2021.1.22 17:00

ブラック校則と戦う子どもがいます。 熱中症や人権侵害、たくさんの危険が潜んでいる?


ブラック校則と戦う子どもがいます。 熱中症や人権侵害、たくさんの危険が潜んでいる?

(執筆:林幸奈)

 

学校の校則が厳しい、と感じたことのある人はどれほどいるだろう。生徒が安全に過ごすため、マナーを守り学校の風紀を正すため、校則は存在する。

そんななか、基準が曖昧で、「なんのために守るのかわからない」という校則は多い。たとえば「日焼け止めの使用は禁止」という決まり。「化粧品だから、不要なもの」「学校にふさわしくない」という考えのもと、設置した学校がほとんどのようだ。

しかし、日焼け止めを使いたい生徒の心情は「美容のために日焼けをしたくない」というだけだろうか?紫外線による被害は美容面だけでなく、皮膚ガンや白内障など、健康被害も多い。日差しに弱く、日光じんましんが出てしまう生徒もいるだろう。そうした場合も、医師からの診断書を提出させる学校が多い。

こうして見ていくと、多くの学校にあるルールでも「なぜ守らなくてはいけないのか」と思うものから、「生徒の安全は大丈夫だろうか」と心配になるものも出てくる。こうした校則は「ブラック校則」と呼ばれ、人権侵害や人種差別にも繋がらないかと議論されている。ブラック校則の危険性や、生徒が安全に過ごせる環境について考えてみよう。



髪型の指導で訴訟が起きた背景とは?


校則といえば、制服の着方や髪型について決めたものをイメージする人が多いだろう。制服ではひざより上のミニスカートが流行のようだが、多くの校則がひざ丈・ひざ下を指定している。しかし長いスカートは自転車通学で不便だったり、背が伸びて買い換えが必要になったりと、嫌がられる理由は機能性にもあるらしい。

髪を整え続ける・制服を買い替えさせるなどは、経済面でも負担がかかる。黒く染めたことにより、染料が肌に合わずアレルギーを起こしたり、さらに髪色が明るくなる場合もある。心地よく過ごすための校則が、生徒や家族を苦しめているのだ。

昔から生徒はそうした規則と対立し、1981年の熊本では「男子は丸刈りにすべきという校則は、基本的人権の侵害だ」と訴えた男子生徒がいるという。2017年には、大阪の高校に通う女子生徒が、校則で黒髪を強要されたとして訴訟した。生徒は地毛が茶髪であると認められず、精神的苦痛を受けたとして、約220万円の損害賠償を求めた。

こうした場合も、地毛証明書や幼児期の写真を提出させる学校が多いようだ。日本以外の国を見渡せば、生まれつき金髪や赤毛の人はたくさんいる。校則で髪色を指摘される生徒も、親が外国人という場合があるという。今後さらに国際化が進んでくと、さまざまな髪質を持った子どもが増えていくだろう。「地毛は黒髪である」という認識で指導をするのは、限界がないだろうか



30度を超えても「制服の下に体操服着用」


服装についての校則は、安全性についても問われる。冬場に防寒着が禁じられている場合もあるというが、近年問題視されるのは、30度を超す気温の日も多い、夏の過ごし方だ。令和元年の調査によると、全国の公立小・中学校における冷房設置状況は、普通教室が77.1%、特別教室が48.5%だという。
<参考:文部科学省/公立学校施設の空調(冷房)設備の設置状況について 令和元年>

資金面の問題で、すべての教室に冷房をつけられない、という自治体が多いようだ。しかし校則を守るために、涼しく過ごせる工夫ができない学校もある。制服の下に体操着を着用する、という校則がある。更衣室が用意できない学校に多いというが、気性が悪い服装で、冷房のない教室で授業を受けるのは、熱中症の危険が高まる。

屋外活動は、室内以上に注意が必要だ。部活動や屋外の活動で、熱中症になる生徒が毎年現れる。しかし冒頭にあるように、日焼け止めの使用や、通学路・授業中の水分補給が校則で禁じられている場合がある。2018年には、愛知県豊田市の小学校で、屋外での学習中に小1男児が熱中症により死亡している。その日の最高気温は37.3度で、教室には冷房が設置されていなかった。

自治体の都合により、今すぐ学校に冷房を設置することは難しいかもしれない。しかし生徒が少しでも快適に過ごせるよう、見直すポイントがあるのではないか。



学校生活に合わない校則があるのはなぜ?


オーストラリアでは、公立小学校でもサングラス着用が義務づけられている。日本にいる私たちには驚きの校則だが、強い紫外線から白内障などを予防するためだ。気候が異なる国の話ではあるが、こうしたものこそ生徒の安全を第一に考えたルールではないだろうか。

生徒に違和感を与える「ブラック校則」の原因は、学校設立時に設置された校則が、見直されずそのまま残っていること。設立時の気候では、冷房がなくても涼しく過ごせたかもしれない。しかし現在は、普通に生活しているだけで熱中症の危険がある日も多い。

「地毛は黒髪である」という認識も同様だ。生まれつきもった髪色を、「これではいけない」と言われる。多感な中高生は、自分を否定されたような気分になるかもしれない。多様化の進むこれからは、「いろいろな髪色の人がいる」と学校ぐるみで認識していく方が、時代にあった教育ではないだろうか。

子どもたちを取り巻く環境は変化し、校則を設立した時代とは事情が異なる。現在学校に通う生徒の安全を考え、校則を見直してほしい。厳しい校則により、苦痛に感じる子どもがいる。学校が辛くなり、最悪の場合不登校につながるケースもある。そんな子どもたちがいたら、「そんな小さなことで」と思わず、まずはその声に耳を傾けてほしい



この記事のまとめ
  • 生徒が苦痛に感じる「ブラック校則」が問題になっている
  • 「地毛は黒髪であるはず」など、人権の侵害だとされる指導もある
  • 水分補給制限・制服の下に体操服着用などの校則は、熱中症につながる
  • 髪型の強要による訴訟・熱中症による死亡事故も起こっている
  • 生徒の声を聞き、校則を見直す必要がある



今回のコメンテーターからのご意見

・今村 正美(いまむら・まさみ)

 『生徒が変わる五・七・五:国見発やる気をうながす生徒指導』 の著者。元長崎県立国見高等学校教師。

写真

「校則」を考える前に「学校」とは何だろう。「学校」ついて考えてみたい。
「学校は人を育てる学問所」
「学問で誠に至り人となる」
新島嚢は「学校は学生という名の人間に、良心をうまく働かせ、活用することを教える場」と述べている。『大学』には、「真の知識を習得すると、意志は誠実となり、意志が誠実であれば、心は正しくなる。」とある。学校は人間形成の場である。

だから、児童・生徒・学生は、それぞれの立場で児童らしく、生徒らしく、学生らしく当たり前に学校生活を通して人間形成に励まなければならない。その当たり前の学校生活の実践を妨げる敵が、欲望、誘惑、怠惰である。これらの敵に打ち克つためには、自制が必要である。この自制に力を貸してくれるのが、校則や制服である。

たとえば、夜間(9時以降)の外出を禁止する校則が、学習時間の確保に力を貸してくれる。また、夜の街の誘惑から守ってくれる。それぞれの学校の制服を身につけていることで、世間の大人たちは、児童・生徒即ち、未成年者であると強く認識し、他人の子といえども保護者的な立場で見守り、褒め、叱り、社会の宝として育ててくれるだろう。制服を着ている方が、悪の感化を受けにくい場面もあるだろう。

「校則」の見直し、改訂は必要である。「ブラック校則」になってしまったものも多々あると思う。校則も時代の変化に応じて、変えていくべきである。その場合、大人目線での改訂ではなく、児童会、生徒会の意見を聞き、改訂することが重要である。
「校則は自己実現の道しるべ」
「校則は生徒を守る命綱」
「校則は自制のための羅針盤」
コメント: 0