2021.1.20 17:00

みんなが都会の大学を目指す時代は終わった? 地方は学びの特色だけでなく、サポートの充実も魅力


みんなが都会の大学を目指す時代は終わった?

(執筆:林幸奈)

 

地方の学校と聞いて、思い浮かべる光景はどんなものだろう。のどかな自然に囲まれ、農業や伝統に触れる学習。少人数の学級は、大人の目が行き届くが、子どもに窮屈さがあるかもしれない。

地方の過疎化は、依然として問題だ。少子化が進み、廃校になる学校も増えている。平成14年度~29年度の間に、廃校になった公立学校の数は以下の通りだ。

廃校になった公立学校
「都心の方が、学校がたくさんある」「塾などの施設も充実している」「人が多く、年の近い子どもと交流しやすい」という思いから、若者が都心へ流出し、高齢化や人手不足を招いていた。

地方はそうしたイメージを払拭し、「都心から学生を呼びたい」「地域ならではの経験をさせたい」と動いた。マッチングを大切にし、都心の人々も安心して過ごせるものが多く、就職や進路のサポートも充実している。

地方への移住や就職に、魅力を感じる人が増えている。子どもたちが地方で学び、進路を考えるための取り組みの例を見ていく。



都心の子どもが地方で学ぶためのプログラム


都心の子どもたちが、地方で学べる機会が増えている。移住を検討する中で、都心と地方の学校を比べるプログラムもある。徳島県教育委員会が推進するデュアルスクールは、都心と徳島の学校を行き来し、双方の教育を受けられる事業。三大都市圏および徳島県内の公立小中学校に通学する、小学1年生〜中学2年生が対象だ。

双方の学校で授業の進みに差がある、不在の間になにをしているかの不安など、まだ課題も多い。しかし抵抗なく地方に馴染めることや、地域移住の促進や交流人口の拡大、多方から物事を見る力がつくと期待できる。県外からも生徒を集める「地域留学」を導入する高校も増え、現在県外からの募集を実施している高校は341校
<参考:文部科学省/公立高等学校入学者選抜における県外からの募集実施状況>

中でも島根県立隠岐島前高校は、地域ならではのプログラムを実施する「高校の魅力化」発祥の地。学校・行政・地域住民が協働し、全国から生徒を集める島留学、それを支える島親制度がある。さらに地元ホテルとコラボし、生徒がホテルスタッフの「マイプロジェクト」を応援するなど、地域の課題に取り組む探求学習も行われる。

子どもが幼いうちは、家庭環境の影響を受けやすく、地方への移住も親の決めた場合がほとんどだ。自主的に「地方で学びたい」と考えたときに、寮のような安心して生活できる環境や制度が、学習と共に必要となる。数年間の暮らしを考えた計画をしよう。



なぜ地方大学は就職率を伸ばしているか


「地域で学んでほしい」とは、「学んだことを地域で活かしてほしい」という思いでもある。大学や企業が集中するため、都心の方が就職に有利だと考えられてきたが、地方の特色を就職率に結びつける大学が増えている。

福井大学は地域と密着した人間力育成事業の実施により、地域とのネットワークと就職活動に必要な力を同時に養える。県内就職率は38.0%。満足度も高く、ほぼ100%の学生が希望の企業に就職、3年以内の離職率は7.1%。(全国平均は31.0%)
<参考:首相官邸/地方創生事例集 平成29年1月>

愛媛県は6大学が地方公共団体や企業などと協働して、地域に求められる人材をつくりながら、雇用を増やしている。1年次より愛媛についての基礎知識を学び、地域の問題を考える。2年次に地域社会で働くこと3年次からは県内就職のためのキャリア設計を行う。キャリア形成センターの設置・インターンシップの充実など、細かい支援がされている。

3年の3月に解禁だと言われてきたが、開始時期が年々早まる就職活動。入学してすぐに進路を考え、やりたいことに専念できる環境は、就職に不安を抱く学生に今後求められるだろう。

学習塾に通うことが当たり前で、偏差値による進路指導が熱心な都心部では、地方の大学に関する情報は入りにくい。しかし現在、就職率で見ると地方の大学が目立つ。大学を選択する時期から、就職も視野に入れた進路を考えることで、道は広がるのではないか。



地方移住の需要が高まる理由とは


「地方への移住・就職がさかんになる中、「Uターン」「Iターン」「Jターン」と呼ばれる形の移住がある。地方と都市を見た人の、それぞれの状況や気持ちがうかがえる。

  • Uターン:地方から都市に出た人が、再び故郷に戻ること
  • Iターン:都市部から地方に移住すること
  • Jターン:地方から都市に出た人が、故郷近くの地方都市に移住すること

社会に出てから理想とのギャップや、地元のよさに気づくこともあるだろう。しかし就職する前に見極める機会があれば、理想に振り回されたり、進路に悩んだりことは少なくなる。「地方に若者を増やしたい」というだけでなく、「将来を考え決めていく場所」として地方での教育。やりたいことができる場所はそれぞれで、生まれ育った場所だけで、進路は決められない。教育の価値や、就職条件の多様化が、地方の特色とマッチしている。

多くの地域が若者を呼び戻し、就職率の高さを得られているのも事実だ。一時的なブームではなく、継続的な活動が期待される。



この記事のまとめ
  • 都心の子どもが地方で学べる機会が増えている
  • 地方大学の就職率は高まっていて、地域に根づいた就職活動のサポートが充実している
  • 進学・就職に対する価値観の多様化に、地方が求められている



今回のコメンテーターからのご意見

・駒田 格知(こまだ・のりとも)

 『長良川のアユ【電子書籍版】:40年間の現地調査から』 の著者。日本の魚類学者。医学博士。

写真

日本社会が経済の成長を目指し、安定を求めている時代は都会に人々が集まり、大学自ら都市に集中する傾向にあった。しかし、今新型コロナウイールス感染症による社会騒動を目の当たりにし、さらに高齢化や少子化が進行している現代では地方にこそ可能性があるのではないか。だからこそ自立が求められ、いまや都会中心の考えは主流とはいえなくなっていくと考える。

それぞれの大学には教育目標があり、その内容と立地条件等に共感して教員が集まり、その結果として大学の特徴や伝統が形成されている。加えて、最近の大学の周辺社会も地域文化の育成に力を入れて“産学連携”を推進していることが多い。

教育は教室における勉学だけではなく、学生時代を過したトータルな環境が人格形成にも大きく影響していることを思えば、都会だけではなく、自然も社会も多様性の豊かな地方にこそそれぞれに掛け替えのない魅力があるとも言えよう。地方の時代のさらなる進化が期待される。
コメント: 0