2021.1.14 17:00
子どもにスマホを使わせるのは心配? ルールを決めて親も一緒に習慣を見直そう
(執筆:林幸奈)
電車に乗っていると、スマートフォンを見ている人がなんと多いことだろう。そう感じながら、ついつい自分も開いてしまう。また子どもに動画を見せている親もいて「こんなに小さい子も使っているのか」と驚くこともあるだろう。
令和2年の調査では、満10歳から満17歳の青少年のうち、スマートフォンを利用しているのは63.3%。
0歳から満9歳の子どもでも、57.2%がインターネットを利用し、31.2%がスマートフォンを利用している。
<参考:内閣府/令和元年度 青少年のインターネット利用環境実態調査 調査結果(速報) 令和2年3月>
最近では新型コロナウイルスの影響による休校で、時間をもてあましている子どもが1日中スマートフォンを見ている、という環境もある。
香川県では昨年4月から、ネット・ゲーム依存症対策条例が施行された。子どものゲームやスマートフォンの使用時間を制限するためのものだ。こうした条例が検討されるほど、子どものインターネットの使用状況が問題となっている。
大人もつい夢中になってしまう、インターネットを身近にしたスマートフォン。子どもが上手に利用するために、大人ができることを考える。
子どもがスマホに夢中になる背景は?
「家の中でずっと、スマートフォンを触っている」こうした子どもを放っておくと、「スマートフォンがないと不安」という依存に陥るかもしれない。
インターネットの発達により、ゲームや動画など、子どもの楽しみもスマートフォンでできるものが中心となった。SNSなどのコミュニケーションツールにより、いつでもどこでも友達と話せる。逆に返信の遅さなどから、トラブルが発生することに不安をもち、目が離せない背景もあるようだ。
スマートフォンの使用が長時間になると、視力低下のほか、姿勢が悪くなる・持ち方で指が変形するなど、健康にも影響が出る。対話の機会が減り、コミュニケーション能力が下がる可能性も考えられる。
しかし一番の問題は、スマートフォンの使用に多くの時間を割いてしまうことではないか。 夜遅くまでスマートフォンを使っていて、朝起きられず学校に行けない。学習時間も減り、勉強についていけない……という、最悪のケースも想定できる。
また親の不安としては、本を開いている・ゲーム機で遊んでいるなどと違い、スマートフォンはなにをしているかわかりにくい、というところがある。知らない人と連絡を取り合っていないか、不適切な情報が見えていないか……と心配は尽きない。
ただ「使用をやめなさい」と言っても不満がたまる。生活に欠かせない連絡手段でもあるため、取り上げることはできない。スマートフォンは、ルールのある適切な利用が必要になる。
60.7%の家庭が設けるルールはどんなもの?
平成30年度の調査では、
インターネットの利用に関するルールを設けている家庭は、全体の60.7%だった。0〜9歳の低年齢層では81.9%だが、学年が上がるにつれ、ルールを決めていない家庭は増えるようだ。
<参考:内閣府/令和元年度
青少年のインターネット利用環境実態調査 調査結果(速報) 令和2年3月>
主なルール
- 大人の目の届く範囲で使わせる(自分の部屋では使用しない、など)
- 場所・時間を指定する(使用はリビングに限定・1日2時間まで、など)
- 利用状況・使用目的を把握している
- フィルタリングを設定する
大切なのは、スマートフォンをどう使っているか、親がわかる環境をつくることだ。また夜遅くやテストの前は使用しない、休みの日は長く使ってもいいなど、細かく設定することで守りやすくなる。快適なルールにするため、積極的に話し合おう。
大人でも使えるルール
- スマートフォンを代用品にしない(目覚まし時計・音楽プレイヤーを使う)
- アプリの通知をオフにする
- ほかに夢中になれるものを探す(代わりに本を開いてみる、など)
- 使わない時間をつくる
なんとなく開くクセをなくすことで、使用を控える習慣が身につく。空いた時間でなにをするかを考えながら、生活に取り入れてみよう。
親子でスマホをうまく使うコツは?
また生活習慣同様に、スマートフォンの使用も親の習慣が手本となる。誰もがインターネットを利用する時代。
自分が子どもの手本となるよう、家庭で決めたルールは親子で一緒に守り、自身の使用状況も見直そう。
子どもがSNSなどで人と交流したくなる背景にも、家庭での会話の少なさやさびしさが関係していないだろうか。家庭での会話が増えるとコミュニケーションが取れるだけでなく、学校での様子や悩みなど、子どものことを理解し、生活習慣を見直すための情報が入ってくる。スマートフォンを閉じて、向き合って会話する時間を大切にしよう。
ほかに夢中になれるものを見つけるのも、スマートフォンから離れるきっかけになる。しかし家でできる読書や映画などに目を向けさせようとしても、残念ながら「すべてスマートフォンでできる」と言われてしまう時代だ。親子でやりたいことを話し、思い切ってスマホを置いて、外の世界を見に出かける時間をつくってみよう。
スマートフォンは情報収集や娯楽、コミュニケーションツールなど、便利に使えるものだ。それでも多くの時間をとられ、生活を振り回される使用状況は見直すべきだ。ただ悪いものととらえず、インターネットを利用する大人も一緒に、上手な使い方を考えよう。
この記事のまとめ
-
子どものスマートフォンの利用率は上がっており、10歳から17歳で63.3%、0歳から9歳で31.2%
-
子どものスマートフォン依存が心配される
-
どのように使用しているかが見える環境をつくろう
-
なんとなくスマートフォンを開くクセはなくそう
-
子どもの手本となるよう、親も使用状況を見直そう
“都生活文化局都政モニターアンケートの結果(H26)を見ると、守られていないルールやマナーとして「歩きスマホ等いわゆる『ながらスマホ』をしない」は大人77.9%、子ども66.3%。「公共の場でスマホや電話をマナーモードにする」は大人51.4%、子ども30.5%で、子どもより大人の方が守られていない。
また、家庭の教育力が低下したわけを尋ねると、第1位の理由は61.5%で「親自身に正しいルールやマナーが身についていない」。第2位は47.5%で「親自身の責任感や心構えができていない」という結果が示された。
一方、石川県の小中学生の保護者約200名に道徳教育に関する調査(H30)を実施した結果、保護者は学校の道徳教育に対して大変好意的に受け止めていることがわかった。道徳教育で他者や集団・社会とのかかわりに関するモラルを積極的に身につけてほしいと、保護者は願っている。今まで学校は家庭のしつけや親の教育への口出しを控えていた。
しかし親が情報モラルの教育について、しっかりと道徳教育で指導してほしいと願っている。学校で道徳講座が開催されたら参加しますか?との問いに、「学校で親子の情報モラルを考える場合は参加したい」という希望が7割に及んだ。しつけの点で親を社会から孤立させず、学校がイニシアティブをとってスマホのルールを考えるアクションを起こしたい。”