2021.1.13 17:00

責任を持ってペットを飼うってどういうこと? 38,444頭の犬・猫はどうしたら救えたか


親子向け、参加型オンラインイベントの魅力

(執筆:林幸奈)

 

楽しそうに散歩中の犬や、家の窓から外をのぞく猫。そんな光景を見ると「うちにもペットがいたら、癒されるだろうなぁ」と考える。また幼い日に「ペットが飼いたい」と申し出たところ、「最後まで責任を持って飼えないとダメ」と言われた経験がある人も多いだろう。

飼う前から最後なんて言われても……と思うが、ペットを飼う上で「責任を持って飼う」というのは重要だ。動物を虐待したり捨てたりすることは、動物愛護管理法第44条に違反する。愛護動物を捨てた(遺棄した)場合は、100万円以下の罰金が課される。
<参考:環境省/動物愛護管理法 虐待や遺棄の禁止>

それでも、飼い主に捨てられてしまったり、引き取り手がなかったりする動物がいるのも事実だ。平成30年の犬・猫の殺処分数は38,444頭に及ぶ
<参考:環境省/統計資料 「犬・猫の引取り及び負傷動物の収容並びに処分の状況>

また犬や猫は20年ほど生きるものもあるのに対し、野良犬・猫の寿命は5年ほど。野良犬・猫の殺処分を無くし、安全で健康に生きる環境を作る活動が行われている。保護活動に触れつつ、ペットを責任持って飼うにはなにが必要かを考える。



保護犬・猫を迎えるための条件や手順は?


保護犬・猫活動とは、飼い主のいない野良犬・猫を保護し、里親を探す活動。NPO法人や地域が運営するものから、SNSや個人のホームページまで、里親募集の場は多い。直接その場で動物と対面する、譲渡会も開催される。

保護犬・猫譲渡までの流れ
  • 事前調査(条件に当てはまるか、しっかり飼育できるかの厳しいアンケート)
  • 面会・面談(犬・猫との愛称は大丈夫かを見る)
  • ご自宅訪問(本当に飼育できる環境かを見る)
  • トライアル(お試し飼育期間)
  • 問題なければ、正式譲渡

過去には保護活動の中で、動物が悪質なブリーダーの手に渡った、家族の動物アレルギーが発覚して飼育ができず捨てられた、という事例もあった。そのため家族全員が飼育を望むこと(単身者は不可)や、飼育に適した環境、不妊手術に同意し健康管理に務めることなど、里親になる条件は厳しい。

責任と覚悟が必要だが、飼い主のいない犬や猫を減らすことにつながる。ペットショップに行く前に、保護犬・猫を迎えることも検討してほしい。また野良犬・猫を保護することになった場合は、病院での健康調査をし、保健所やSNSで探している飼い主はいないか、情報を確認しよう。

ちなみに他者のペットを勝手に拾って飼うと、遺失物等横領罪にあたる可能性がある。保護できることがわかってから、飼育するための環境を整えて迎えよう。



地域で暮らす「さくらねこ」とは?


「あの野良猫、耳の先が切れているみたいだけれど、ケンカでもしたのだろうか。そんな猫を見かけたら、地域猫という言葉を思い出してほしい

地域猫活動は、地域住民と行政が一体となって、野良猫の世話に取り組む事業。不妊手術済みの猫は、印として耳の先端をカットされているため「さくらねこ」とも呼ばれる。

主な地域猫活動
  • トイレなどの公衆衛生管理
  • 適切な餌やり
  • 不妊手術の実施
  • 活動を周知し、理解を得る

野良猫はトイレやエサの管理、騒音や周囲への危害など、問題が多かった。また猫は繁殖力が高いため、放置しているとトラブルはますます大きくなる。しかし地域猫は認知が低く、「勝手に手術して耳を切るのはかわいそうだ」「繁殖をうながすような餌やりと、なにが違うのか」などと議論されやすい。

地域猫は「飼い主のいない猫をゼロにする」を目標にしている。活動に同意する場合は、ボランティアの参加や寄付いった支援の仕方もあるが、まずは活動内容を理解することが大切だ。
<参考:環境省/ 地域猫活動>

町でさくらねこを見かけたら、こうした活動を思い出して見守ろう。



1頭の猫が、1年で20頭産むかもしれない


野良犬・猫の現場から考えて欲しいのは、動物は責任を持って飼うべきということ。毎日エサをあげる、トイレは清潔に保つ、病気になったら病院に連れていく。それも大切だが、認知が必要なのは不妊手術の重要性だ

冒頭でも触れた通り、平成30年の犬・猫の殺処分数は38,444頭に及ぶ。うち、猫は30,757頭。猫の方が多いのは、繁殖能力が高いためだ。

犬の場合
  • 発情周期が6~12ヶ月
  • 自然排卵で、妊娠できる期間は5日間ほど
  • 1度に4~5頭を産む

猫の場合
  • 自然排卵でないため、1年中いつでも妊娠できる
  • それぞれ2ヶ月の妊娠期間・授乳期間が終わると妊娠可能
  • 1度に4~8頭を産む

多くの場合は、1頭の動物をペットとして迎えるだろう。しかし不妊手術をしない場合、1年で20頭ほど産まれる可能性がある。その世話ができないのであれば、不妊手術は必須だ。犬の平均寿命は13年、猫は15年とされる。長い時間を共にするため、まずは「責任を持って飼うとは、どういうことなのか」を知ろう。


 この記事のまとめ 
  • 平成30年の犬・猫の殺処分数は38,444頭に及ぶ
  • 取り組みとして、野良犬・猫の里親を探す保護犬・猫活動、地域で野良猫を世話する地域猫活動がある
  • 育てられない命を増やさないため、ペットの不妊手術が必要
  • 10年以上生きるペット。責任と覚悟を持って飼おう




今回のコメンテーターからのご意見】

・山田 進二(やまだ・しんじ)

 『カンガルーってどんな味? 獣医さんの生きもの四方山話』 の著者。獣医師。

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本稿はよくまとめられている。ペットをめぐる問題点はいずれも飼育放棄から出発していることがわかる。放棄されたペットは放置したり、保護センターに送られる。現在のペット対策はほとんどが生かすことにある。そのための条件、環境の整備など多彩な対策がなされている。

さて最後まで飼育するつもりでいた飼育者は生活、環境の変化から飼育放棄せざるを得なくなる可能性がある。そのため保護センターも譲渡会活動も必要である。殺処分を零にすることは難しい。放棄された猫のふえることを防ぐ不妊手術は積極的に行なうべきである。私の近くにも不妊手術を積極的に行っている獣医師がいる。

日本の現状では飼育放棄を絶対にさせない努力と工夫が必要である。ペットの飼う責任をおもうとき、本稿のような啓蒙記事の書かれた意義は大きい。
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