2021.1.6 17:00

気軽に対話ができ、市長に意見が届く工夫とは?
ツイッターでの発信力・災害時の対応力が人気に


親子向け、参加型オンラインイベントの魅力

(執筆:林幸奈)


とある市のホームページで「イベントで市長を見かけたら、気軽に声をかけてくださいね」という1文を見つけました。声をかけるなんて勇気が必要だと感じますが、そんな関係が理想なのかもしれませんね。みなさんは住んでいる市の市長がどんな人か、すぐに思い浮かべられますか?「他市の市長の方が、メディアなどで見かける機会が多いな」と感じる人もいるかもしれません。

市長の仕事
  • 会議・決裁・調査などの「行政」
  • 年4回の定例会や臨時会などの「議会」
  • 地域のイベント・学校行事などの「イベント参加」

市議会議員とともに条例や予算案をつくり、住みやすい市を考えます。市長は25歳以上の日本国民であれば立候補可能で、任期は4年ですが、再選を果たす市長も多い印象です。

新型コロナウイルス感染拡大による緊急事態宣言下で、地方の知事・市長の判断や動きに注目が集まりました。最近ではSNSで市民の声を聞いたり、災害や行政についての意見を述べたりする市長も増えています。「ツイッター市長」という言葉もあるようで、地域色や実績よりも、情報の早さや親しみやすさが見られるアカウントに注目が集まっているようです。権力によって指示を出す存在というより、市民に寄り添って地域の動きを見直せるリーダーの方が、時代が求めているように感じます。市民が注目している市長は、どんな取り組みをしているか見ていきます。


発信力のある最年少市長。対話室もSNS?


政令指定都市は、地方自治法で規定された、政令で指定する人口50万以上の市です。また、一般の市では都道府県にまかせている市民の健康や福祉に関する多くの事務を行うなど、市レベルで密着した行政を行います。

人口の多い都市の首長選はニュースでも目にしますが、多くのことを任される市長に注目が集まります。地方自治は民主主義の学校とも言われますが、自分の票で市が変わると意識できる環境ですよね。

指定都市市長会副会長でもある、千葉市長の熊谷俊人氏も、SNS上の積極的な発信で注目されています。2009年、当時最年少であった31歳5ヶ月で市長に当選しました。市債残高を8年間で600億円以上削減、2014年~2015年度に2年連続待機児童ゼロを達成など、実績を残しています。

市長はSNSのツイッターを用いて、季節行事から行政・予算案などについても発信をしています。2019年9月の台風15号や、新型コロナウイルスの自粛下に置ける報道に対する疑問など、行政やメディアについての厳しい意見も述べており、市外からも注目されました。

発信だけでなく、投稿に対する市民のコメントを引用し、質問に答えています。千葉市には市長と対話会を定期開催していますが、ツイッターを活用した対話室もあります。テーマは事前に指定され、市政に興味があれば誰でも参加可能です。

市民と近い存在にある市長。2017年の3選に向けた選挙期間には、駅前や街頭で市政報告とともに「くまちゃんハイタッチ」と呼ばれる、市民とのふれあいがハッシュタグとして話題になりました。大きな発信力により、市や行政に対するイメージも変わっていきそうです。


「ライオンが逃げた」混乱下で市長の対応は?

台風や地震の発生時、インターネットでタイムリーな情報を得たい人が増えています。市長によるSNSでの情報発信は、とくに非常時、不安で情報が欲しい市民からの需要が大きいようです

熊本市長の大西一史氏も、「ツイッター市長」と呼ばれる発信力を持っています。2016年に発生した熊本地震の混乱下、安全な行動やボランティアの呼びかけ、困っている市民の意見を集める場もツイッターでした。また「動物園のライオンが逃げた」というニュースが流れ、市民は混乱しましたが、市長は「何かあれば、市のホームページから発信される」と正しい情報とフェイクの危険を呼びかけました。その後フェイクの投稿者は、偽計業務妨害の疑いで逮捕されています。

熊本市は2016年10月14日に「熊本市震災復興計画」を策定し、熊本市民病院や熊本城の再建、市街地開発による新たな経済成長など、前向き再建がされていきました。声をあげて政府とも連携した復興が評価され、市長は2018年に2度目の当選を果たします。

また先ほど紹介した千葉市長を含め、コロナ対策のために給与を減らして資金をつくると多くの市長が表明するなか、熊本市長も夏のボーナスを返上するとしました。パフォーマンスでよい手法ではないという意見を認めつつ、「市民と共に前進していく政治姿勢を示すことが重要だと考えた」と説明しています。

「SNSは市長の仕事なのか?」という考えの人はまだまだ多く見られます。しかし政治の話がタブーとされる日本で、立場や距離を気にせず、市長や議員と対話し、意見が言えるようになった。のは大きな進歩ではないでしょうか。気軽に市長の発言が見られるSNSから、市政に参加してみませんか。



 この記事のまとめ 
  • SNSで情報を発信する市長が増えている
  • ツイッターを活用し、対話室などの交流の場が設けられる
  • 震災・非常時の情報提供や、フェイクニュースへの指摘がされる
  • SNSは立場や距離を気にせず、市政に参加できる場となっている




今回のコメンテーターからのご意見】

・川崎 泰孝(かわさき・やすたか)

 『まちづくり、人づくり:ある町長のふるさと再生への挑戦(22世紀アート)』 の著者。元島根県桜江町長。

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インターネットによる情報化社会は著しく進展しており、行政における広報の広聴活動のあり方にも大きな変革が見られる。こうした動きに対応することに異論はないが、あらゆる階層の市民たちにその恩恵が及ぶ方策がとられなくてはならないと思う。

国は地方に対してさまざまな支援策を行っているが、受け入れる側の自治体の姿勢により、とくに過疎や高齢化が進む地方では、環境整備(ネット回線など)の遅れが生じているように思う。

まずはその整備を行い、首長の個人プレーに陥らないようにするべきだ。行政として職員とともに、市民に等しくその情報を双方向で共有する仕組みづくりが必要だ。それを職員の資質向上にも役立てる配慮が必要ではないかと思う。
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