2020.09.01 15:00

アラサー女性教師がベンチャー出版社へ転職した体験談
~教員の転職は難しい? 後悔しないための注意点~



アラサー女性教師がベンチャー出版社へ転職した体験談

(執筆:SOCIO編集長 佐藤志乃)

小学生のころから「学校の先生」になることを夢見ていた私。地方から上京して4年制大学に通い、中学・高校の教員免許を取得しました。そして、卒業後すぐに長年の夢であった教師として5年間働きました。そして現在、教師からベンチャー出版社へ転職して丸2年が経とうとしているところです。

今回は自分の体験をもとに「教師の異業種への転職」をテーマに語り、転職の際の注意点を共有します。自分が転職活動をしようとインターネットで色々と調べたときに、自分に合った情報が少なく不安でした。だからこそ、転職理由も建前ではなく本音でお伝えしたいです。みなさまが自分の人生を自分のために生きるため、キャリア選択のよい材料になることを願います。


25歳までは転職活動をする時間と心の余裕がない

ブラック部活動や時間外労働の常態化などがテレビ番組などのさまざまなメディアに取り上げられ、教師の働き方改革が強く求められている昨今、転職を考える教師は多いのではないでしょうか。総務省の「平成30年度地方公務員の退職状況調査等」によると、定年退職などを除いた普通退職者のうち、25歳以上30歳未満の退職者がもっとも多く、ついで30歳以上35歳未満、35歳以上40歳未満の順となっています。この年代は、仕事に慣れてより責任のある仕事を任される働き盛りの年齢です。

それにくらべて25歳未満の退職者が少ないのは、転職について考える心の余裕や行動に移す時間が少ないからなのではないかと考えました。自分がこの年齢だったころを振り返ってみると、目の前の業務をこなすことに精一杯で自分が30~40代になったらどんなキャリアを築いていたいのかまでは具体的に考えられていなかったように思います。

また、公務員の安定は家族からの期待が大きく、「せっかく教師になったのにもったいない」という気持ちも関係しているのではないでしょうか。周囲からの期待や世間体を気にするマインドは「自分が甘いだけなのかもしれない」、「頑張って手に入れた今の環境を失いたくない」と思わせます。

これが現実の自分となりたい自分のギャップを生み、実際に行動に移せない原因のひとつなのかもしれません。しかし世間体という重しを取りのぞけば、潜在的な転職希望者はもっと多くいるはずです。


教師を辞めると伝えた時の親の反応

私が転職をしたのは27歳のときでした。転職するから教師を辞めると親に伝えたとき、ハッキリとは言われませんでしたが少しがっかりしている様に感じて、「教員になるために大学に行かせてくれた親に申し訳ない」という気持ちになりました。地方での教師という職業は人生の安定と充実を意味し、生涯定年まで勤め上げることを美徳とする傾向があります。親世代の人は転職に対するネガティブなイメージを持つ人も多いです。

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しかし、転職を考えた理由をしっかりと話したら納得してもらえ、最終的には自分が決めることなので反対もされませんでした。当時結婚したばかりだったこともあり、どんな家庭を築いていきたいかを軸に話したのがよかったのかもしれません。夫も「自分のことは自分で決めた方がいい」と言ってくれたので感謝しています。すべて自分で決めたおかげで現状に後悔はありません。


人には言えない転職を決意したネガティブな理由

結果的に転職をしましたが、決して教師の仕事が嫌いになったわけではありません。5年間の教師生活はツライという気持ち以上にいつもやりがいを感じていました。生徒の成長の瞬間に立ち会える喜びを感じていて、大人になってから嬉しくて泣けるほどの感動を得られる職業はそうないと思っていたからです。

それでも転職しようと決意したのは、結婚がきっかけでした。結婚以前から「ずっとこのペースで仕事が続けられるだろうか」という漠然とした不安がありました。それが結婚を機に、「自分の家族を一番大切にしたい」という思いがより一層強くなり、今の働き方でそれを実現するのは難しいのでは? と考えるようになったのです。

そう思った4つの理由がこちらです。
  • 将来自分の子どもが生まれても、入学式や卒業式などの学校行事が被る
    • 学級担任になったら我が子の節目に参加できない可能性大。もしも休んだら同僚・保護者から「担任が休むなんてあり得ない」と言われます。実際に言っている人を何人も見てきました。
  • 平日に休みをとることはほぼ無理
    • 現場は授業時数の確保が切実な問題になっているため、休んだ分を勤務時間内では取り返せません。とくに実技系の授業の場合、実習を座学で補うことができないため自習にするのは難しいです。
  • 定時で退勤することは不可能
    • 部活動の終了時刻(生徒の完全下校時刻)が定時以降に設定されています。部活動中は生徒の安全のためその場で見守る必要があり、他の業務ができません。日中は授業または生徒対応ですべて埋まっているため空き時間がなく、そのしわ寄せが放課後にいくのです。
  • 若いうちは運動部の顧問になるのが暗黙のルールで、休日出勤は当たり前
    • 土日どちらかは部活をやって欲しいという生徒・保護者の要望があるため、週休1日。大会前は週休0日になることもよくあります。

これらは学校の規模感(教師・生徒の人数)や管理職のマインドによって変わりますが、職業柄異動が必須で数年に1度は他社へ転職するくらいの大きな変化が起こり得るため、働いてみないとわからないことが多いです。このような働き方に関する理由にプラスして、学校の風土が自分の思い描く働き方と合わないのでは? と感じる部分もありました。
そう思った3つの理由がこちら。
  • やりがいはあるが、頑張りが給与に影響しない
    • 教員の給与制度について働きはじめる前からわかっていましたが、実際に働いてみると人によって労働量に大きな差があることに驚きました。必ずしも給与の高い人が責任ある仕事を担っているわけではありません。給与と労働量がとくに若手のうちはアンマッチだと感じていました。
  • 変化が苦手な組織で、新しい取り組みが受け入れられるまでかなりの時間がかかる
    • 革新よりも伝統を重んじる傾向が強く、あるものをやめることに反発する人が多いです。業務過多で新たな意思決定を実行する余裕がなく、会議で何かを決定する場面で「例年通りで」という言葉をよく聞きました。
  • 年功序列社会でサボったもの勝ちなところがあり、モチベーションが保てない
    • 授業以外の学校運営に必要な業務は多種多様です。適正よりもポジションの空きがあるかが重視されていると感じることがあり、何も知らない若手が業務量の多いポジションになることもよくありました。

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学校という組織はトップダウン方式であるため、自分が改善のためにできることには限界がありました。変化を諦めている、あるいは求めていない人が多い中で、風土そのものを変えることは非常にむずかしいです。


転職を決意したネガティブな理由をポジティブに言い換える

自分が不満に思っていたことを整理すると、仕事に求めているものが見えてきました。いざ転職活動をはじめても、上記のような転職理由ではもちろん通用しません。転職エージェントのキャリアアドバイザーにはじめて相談しに行った際、文字通り「相談」のつもりで素直にいろいろ話したところ全然お話になりませんでした。本当に無知で、自己PRなどの事前準備が足りなかったのです。そこで自分が働く上で求めていることを整理し、転職理由をポジティブに言い換えてみました。
  • 業務改善や変化を受け入れる風土があり、臨機応変に新しい取り組みができる組織で働きたい
  • ワークライフバランスを整えようと実践している組織で、プライベートの充実をアイディアとして還元できるような仕事がしたい
  • キャリアや年齢などで提案が制限されないオープンな組織で働きたい

これにプラスして「なぜその業界・業種なのか」というところが大切になりますが、大まかな理由としてはこの3つです。前職で抱えていた課題改善のため、自身がどのように取り組んだのか整理して話すことも大切です。


22世紀アート社長に聞いた、採用の注意点

弊社の最終面接を担当している社長の向田に面接で注意して見ている点について聞いてみたところ、つぎのような答えが返ってきました。

【面接時に要注意だと感じる人】
  • キャリアップ意識が強すぎるあまり、転職をステップアップの一部として語る人
    • 「御社の技術を1年以内に取得したい」と言う人は、入社してもすぐに離職する可能性が高いと感じる
  • 使っていない資格をたくさん所持している人
    • 手あたり次第な感じがある
  • 「パッション」という言葉を使う人
    • 目標ややりたいことが整理できておらず、勢いで動いていると感じる
  • 前職で規模感の違うところにいた人
    • 大手にいた人は常識(設備が整っている、先輩がいる、人数が多い分ごまかしがきく 等)が違うため、入社後のギャップを考えて慎重になる

【面接時に良い可能性を感じる人】
  • 人生の点と点が線になっている人
  • 迷いがあってもつじつまがあっている人
  • わからないを受け入れて頑張れている人
    • この3つについては、経歴に一貫性がないように見えたとしても現状を理解して今後自分がどうしたいのかが明確になっていれば入社後の活躍に期待できます。
  • 本音と建前の割合が社の求める像と一致している人
    • 最終面接ではその人が社のカラーに合っているかを見ています。会社によって建前が多い方がよいお堅めのところもあれば、本音で働ける人を求めている格式ばらないところもあります。弊社の場合、建前と本音のバランスが50:50の人が理想なので、少しくだけた会話の中でいつまでも本音が見えない人は会社の雰囲気と合わないかもしれません。

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東京日本橋の22世紀アートオフィスより

あわせて、私自身が転職活動中にキャリアアドバイザーから「教員から民間企業への転職はむずかしいことが多い」と言われたことをもあり、元教員の採用に不安はなかったのか聞いてみました。すると「元教員の採用いいと思います!」と意外な返事を聞くことができました。いいと思った理由はつぎの3つです。
  • 教員から民間企業への転職が難しいと思っている人は、学校が企業とは違うことを理解している
    • → 企業で働きたいという意欲が強い
  • ベンチャー企業がないがしろにしている小さな当たり前の感覚(HOWTO)が身についている
    • → 社内環境の美化や社内のルールづくりの面で力になる
  • 労働量に対する給与の面で納得いっていない人は、頑張りを給与に反映させたいと思っている
    • → 労働に対する意欲がある


今の会社に入社を決めた理由

教員から未経験での転職活動に不安を抱えている人は多いと思います。しかし、未経験でも自分に合った会社は必ず見つかるはずです。なかには大きな会社がいい、すでに世間から良い評判の会社がいい、といった希望を持っている人もいるでしょう。それもひとつの選択ではありますが、せっかくこれまでの安定した職を手放すなら「自分がこれからの人生で実現したいこと・大切にしたいことは何か」をとことん考えてみてほしいです。

転職活動ではさまざまな規模感の企業を受けていた私。最終的には当時5年目に差し掛かろうとしていたベンチャー出版社に入社しました。面接を受けた際に、質問内容や会話の雰囲気から自分を知ろうとしてくれていると強く感じたのが決め手です。大企業と比べて距離感が近いのも自分には合っていると思いました。

正直、これまでの公務員とは真逆の風土の会社で不安がなかったわけではありません。入社したばかりのころは業務のスピード感や変化の多さに戸惑っていましたが、現在は自分に合った会社に入社できて良かったと心から思っています。なぜそう思えるようになったのかは、またつぎの機会で記事にする予定です。

この記事を読んでくださった転職に悩む元教員の方々が、第二の人生を楽しめますように。

 

ライター紹介

佐藤 志乃(さとう しの)

株式会社22世紀アート SOCIO編集部 編集長。元中学・高校の家庭科教員という少し変わった経歴から2018年に入社。2019年に自社ウェブメディア「SOCIO」を立ち上げ、企画・執筆・編集を中心に運営を担当。出版社のメディアとして、人々がもつ悩みをテーマとし、読者にとってプラスになる内容の記事作りを心がけています。人間関係、働き方、マイノリティなどの多様性について勉強中。「自分を大切にするから他人も大切にできる」が信念。

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