秋山紀勝の「世相、斜め斬り!」ー原発を失くすには

私は新聞記者を38年間務めたが、1975年頃、新潟県内に勤務した。当時、東電は柏崎刈羽原発(7基)を計画、各地で毎晩のように地元説明会が開かれ、私は記者として説明会に顔を出して取材した。その場で地元の人からは「原発が安全なことは分かった。

しかし、万一、事故が起きた場合の避難路とか避難場所はどうなっていますか」という質問が出た。これに対して東電は「原発事故は絶対に起きませんから、そのようなことを考える必要はないんです」と突っぱねた。会場からは「しかし、人間がやることですから万一、と言うことはあるでしょう」という声が出たが、東電は「原発は安全です。絶対に事故は起きません」と押し切った。1985年、柏崎刈羽原発は世界最大規模の原発として運転を開始した。

しかし、2011年3月、東日本大震災の際、柏崎刈羽から直線で約220㌔離れた東電福島第一原発で事故が起きた。それもメルトダウンという原発事故としては致命的な大事故だった。この瞬間、原発の安全神話は音を立てて崩れた。小泉純一郎元首相は今、「原発は反対だ」と言う。その大きな理由は二つ。一つは原発で事故が起きると取り返しがつかない。二つは原発の燃えカス(核のゴミ)の処理方法が決まっていない、である。

首相当時は「原発賛成」の立場だっただけにこの意見は重い。東電福島第一原発事故では3つの事を忘れてはならない。今も放射性物質が漏れ続けている、今も故郷に帰れない人が数万人もいる、今も原因は分からない。つまり原発は一度事故が起きると、まさに取り返しがつかないのである。特に狭い日本ではなおさら、である。

しかし、国は今すぐに原発を止めるつもりはない。原発はベースロード電源として維持する方針だ。その証拠に今、全国で数基の原発が稼働している。東電は柏崎刈羽も一部を稼働させたい意向だ。

「人間は大切なことは、二度経験しないと理解しない」という言葉がある。原発事故はこの「大切なこと」に当たる。従ってこの国から原発を失くすには、もう一度大きな原発事故が起きる事だ。それも東京都民が避難しなければならないような事故が起きる事だ。原発反対の人やグループは「原発事故を起こしましょう」という運動をした方が良い。その先に必ず原発廃止がある。それじゃあ、まさに「10日の菊」なのだが……。