2020.11.11 15:00

香害の問題は、においだけではない。
香りで頭痛やめまい。化学物質過敏症を知っていますか?


香害の問題は、においだけではない。

(執筆:林幸奈)



「くさいから窓を開けろ!」女子校だった高校時代、体育のあとの出来事でした。年配の男性教員には、制汗剤の香りが耐えられなかったようです。みんな体臭が気になるから気をつけていただけなのに……と当時は思いましたが、苦痛になるほどのにおい、実は社会問題になっています。

香害という言葉をご存知ですか? ここで問題となるのは、体臭などのにおいではなく、柔軟剤制汗剤などの人工的なもの。「いい香り」として宣伝されていますが、強いにおいに不快感を示す人も多いのです。

「においだけで気にし過ぎでは?」と思うかもしれません。しかし人工的な香りで体調を崩し、学校や仕事に行けなくなってしまう人も出ているのです。

あなたの香りが、知らないうちに誰かを苦しめているかもしれません。身近でありながら大きな問題、香害について考えていきましょう。


人工的な香りによる化学物質過敏症とは?

香害における香りとは、柔軟剤・香水・制汗スプレー・除菌・消臭剤といった、添加物や香料などで香りづけされる製品を指します。添加物や香料の多くは、化学物質。本人の容量を超えた化学物質の摂取は、化学物質過敏症を起こします

化学物質過敏症の症状
  • 頭痛
  • めまいや吐き気
  • 動悸
  • 不眠
  • 下痢や便秘
  • 関節痛 など

 具体的なシチュエーション 
  • 「エレベーターで隣の人から柔軟剤のにおいがして、5分以上せきこんだ
  • 「授業参観の日、香水や化粧品の香りが強くマスクをしても倒れてしまう
  • 「レストランで、従業員の制服から柔軟剤の香りが強く感じられ、味がわからなくなる
  • 「人の少ない学校や職場の廊下を歩くだけでも、微量の物質を感じ、体調を崩す


化学物質過敏症は、生活の改善と原因を取り除くことが求められますが、根本的な治療方法がないといいます。多くの人が気づかないほどの微量な化学物質でも発症し、ひどくなると仕事や学校に行けず、外出もできなくなるそうです。

身近な人の理解は得られても、街のどこかで化学物質と遭遇する可能性もあります。現在はまだ理解が進んでおらず、当事者が声をあげにくい環境も問題です。また「いい香りだと思って身につけていた」「体臭ケアはマナーだ」と考える人も多いのではないでしょうか。

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制汗剤や柔軟剤。過敏なケアになっていませんか?

香害が問題となる一方で、スメルハラスメントという言葉もあります。主に強い体臭について指すもので、スメルハラスメントから制汗剤などによる対策が進んだとされます。制汗剤や強い香りの柔軟剤がブームとなった裏には、体臭が気になる人の気持ちが強いのです。

さらに自臭症と呼ばれる、几帳面・潔癖な性格から、自分の体臭が必要以上に気になってしまうクセのある人が増えています。体臭が気になる気持ちから自信がもてなくなり、必要以上に気をつけ過ぎて、結果として人工的な香りが強くなっていくのです。

「体臭には気をつけないといけない」「よい香りつき洗剤の方が、好感がもてる」というメディアの強い呼びかけも、人びとを敏感にさせているのだと感じます。対面での話題にしづらいテーマだからこそ、メディアが主力となった呼びかけに賛同する人も多いのではないでしょうか。

またこうした言葉に飛びつく背景には、体臭のケアやまとう香りについて、具体的な適量がマナーとして示されていないことも大きいと感じます。香りについて考えるため、人びとが声をあげやすい環境が必要です。


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香害を気にせず過ごすよう必要な意識とは?

自分の使っている製品には、どんな化学物質が使われているのか。マナーとして、どの程度においに気をつければよいのか。香害について考える前に、私たちには知らないことが多いと感じます。

化学物質に苦しむ人たちは、「製品で使用する香料の成分を開示してほしい」という主張を続けてきました。無添加と呼ばれる商品なら安全、と考える人がいるかもしれません。しかし商品における無添加とは曖昧な表現で、たとえば「着色料無添加」とは「着色料が無添加」という意味であり、ほかの添加物は入っている可能性があります。さらに含有量が1%未満の成分は、成分表に表記する義務がなく、表記されていない少量の化学物質が入っている場合もあるそうです。<参考:厚生労働省/化粧品の全成分表示の表示方法等について>

まずは当事者が「この物質・製品は自分にあわない」と、声をあげられる環境が必要です。成分表を見ながらよりも、具体的な製品や対策をあげて、マナーとしてみんなが気持ちよく過ごせるケアを考えられるとよいですね。そうした動きが広がると「どこかにこの香りがあわない人もいるかもしれない」と街中に意識が広がり、当事者が化学物質を気にせず過ごせるようになります。

体臭で迷惑をかけないように、と力を入れてきた香りのケア。香害を頭において、考えなおしてみませんか?


 この記事のまとめ 
  • 香害はにおいの不快感だけでなく、化学物質による体調不良を起こす
  • 背景には、体臭に気をつけ過ぎる風潮がある
  • 製品に使われる化学物質や、マナーとしての適量など、わからないことが多い
  • まずは当事者が声をあげやすい環境が必要
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