2020.04.09 15:00
売り場に残り3箱のマスク。隣で購入規制にキレる人。
なぜ不確かな情報が買い占めを起こすのか

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新型コロナウイルス感染症により、世界各国で買い占めが起こっている。

イタリアではパスタの棚が空になり、アメリカでは弾薬の注文数が増えたという。緊急時に人々が必要と感じるものにも、国柄が出るのだろうか。

当然、日本でも買い占めは深刻な問題となっている。コロナウイルスの感染拡大による人々の不安から、マスクや消毒用アルコールが店頭から消えた。また「製造元の多くが中国だから、今後品薄になる」というフェイクニュースにより、トイレットペーパーの売り切れが続出している。

こうした話を聞いて、「多めに買っておいたほうがいい」と近所のドラッグストアに向かった人がいるかもしれない。

しかし品不足や買い占めにより、疲弊している人々がいる。マスクやトイレットペーパーは不足に伴い、購入規制をする店も増えた。仕入れ分はすぐに店頭から消え、連日仕入れや在庫に関する問い合わせが相次ぎ、ドラッグストアなどの店舗側も対応に追われているという。転売目的の買い占めもニュースとなり、さらに人々の手に渡らない原因となっている。

台風や大型地震などの自然災害時も、店頭から食料品や飲料水が消える。空になった棚を見ると、ここまでする必要はあるのかと考えてしまうが、買い占めはなくならない。

買い占めをしてしまう心理と、なぜダメなのかを考える。

買い占めによって困るのは誰か

買い占めにより、それを必要とする人の手に渡らなくなる。

2月から国内感染拡大が深刻化した新型肺炎は、花粉症のピークと期間が被った。花粉症は4人に1人が発症していると言われるほどで、国民病とも呼ばれる。

そんな花粉症の人たちは今、マスクが手に入らなくて困っているという。


ほかにも喘息や鼻炎により、日常的にマスクが手放せない人は多い。医療現場でも不足は深刻で、マスクを命綱としている人たちが、大変な思いをしている。トイレットペーパーも誰もが使うもので、どこの家庭でも必需品だ。

最近は買い占めのイメージのせいで、ただ購入しただけなのに白い目で見られたり、普段より買いづらさを感じたりすると聞く。当然、家の在庫がなくなり購入する人はいて、そうした人が困っている。


店頭に3個商品が残っていたとして、1人1個ずつ買えば3人の手に渡るが、1人で3個買ってしまうと、1人しか買えない。1人で買い占めてしまう人がいなければ、非常時でも普段通りの買い物ができるはずだ。

たくさんの人の手に十分な量が行き渡るため、分けあう精神を大切に、不要な買い占めはやめよう。

 



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人々を買い占めに向かわせる心理・情報とは?

大災害や感染症の拡大などの非常時は、これから先のことが漠然とした不安につつまれる。そこで買い占めのニュースや、実際に棚が空になっている店頭を見ると「自分も今後に備えて、なにか買わなくてはいけない」と思う。買い占めがさらに買い占めを呼ぶのだ。

人々が不安で情報も少ない中、不確かな情報が流れる。コロナウイルスに関連する買い占めも、SNSなどの影響が大きい。マスクや消毒液は、感染を防ぐために購入されたが、トイレットペーパーは「店頭から消える」というフェイクニュースが実現してしまった。

ちなみに経済産業省は「トイレットペーパーやティッシュペーパーは、現在も通常通り生産している」と発表している。マスクや消毒液の配布情報も掲載されているので、不安があればホームページを確認しよう。
<参考:経済産業省/マスクや消毒液やトイレットペーパーの状況~不足を解消するために官民連携して対応中です~>


現在、納豆や乳製品なども急激に売り上げを伸ばしている。免疫力向上に効果的と言われる食材だが、ウイルスに効くという噂もされているらしい。不確かな情報は人々を混乱させる。非常時はこうした情報から、不要なものも買っておいた方がよいと勘違いするかもしれない。

簡単に手に入るもので効果が期待できるような、都合のいい話には注意が必要だ。正しい情報を見極めよう。


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不要な買い足しをなくすための習慣

台風や災害時に食料品の棚が空になるのは、人々が「家の在庫では足りないかもしれない」と、どんどん買い足しを進めるからだ。その時にはすでに需要がありそうなインスタント食品・飲料水などは完売していて、とりあえず必要かわからないものを買ってしまった…という経験はないだろうか。

災害の備えについては、飲食物の備蓄は3日分(大規模災害では1週間分)と言われる。常備薬や救急用品、乳児のいる家庭ではミルクや紙おむつも用意が必要だ。
<参考:首相官邸/災害に対するご家庭での備え~これだけは準備しておこう!~>


トイレットペーパーは、古くはオイルショックから東日本大震災の際も、買い占めの対象になった。マスクは持病などでマスクが欠かせない人は、多めの予備があると安心だ。そうでない場合でも、避難時・避難所生活で役立つ。

マスクやトイレットペーパーなどの生活用品も、1週間分の買い置きを習慣付けてはどうだろう。街中ですぐ近くに店がたくさんあると、「必要になったら買いに行けばいい」と、買い置きの習慣がなくなる。

普段から必要なものは事前に買っておく習慣があれば、非常時にムダな買い足しをしなくて済む。非常時の不安をなくすためにも、日用品や食料品の備蓄を習慣化しよう。



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この記事のまとめ 

✔︎ 買い占めをすると、必要としている人の手に渡らない

✔︎ 必要なものと正しい情報を見極めよう

✔︎ 不要な買い足しをなくすため、買い置きを習慣化しよう

(執筆:林幸奈)

今回のコメンテーターからのご意見
溝口啓二郎(みぞぐち・けいじろう)
台湾台北市に生まれる。元大分県立高等学校の教員。定年退職後は大学・専門学校で非常勤講師としてドイツ語を教える。平成8年、アメリカの大学でドクター(文学)の学位を取得。『台湾と日本 二つの故郷 (22世紀アート)』他の著者。

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「買い占め」という言葉を目にすると、私のような昭和七年に生まれ、次第に物資が不足しはじめた時期に幼・少年期を過ごした者には、「買い溜め(この語の意味する行為は小規模の買い占めだと私は思う)」という単語が脳裏に浮かぶ。昭和十五年に米・味噌などが切符制になった。

その頃私は小学校の二年生だったが、あの頃食糧と並んで不足しはじめたのが衣類だった。純綿は化学繊維のまざっていない木綿の織物だが、この純綿が「手に入らなくなる」という噂が、その頃庶民の間に広がりはじめていた。主婦達の中には純綿を買い溜める人がいたが、私の母もその中の一人だった。スフと呼ばれた化学繊維でできた織物が、純綿の代替品として出回るようになったが、私は戦争の末期でも母のお陰で何となく薄っぺらな感じがする、この代用品とは無縁の日々を過ごすことができた。

「買い占め」の動機は未来についての漠然とした不安に起因し、非常時に生じる。あの頃は非常時が叫ばれ続けた時代だったが、その状況は年毎に深刻化していった。「買い溜め」はこうした時流を見越した庶民の生活防衛策だった、とも言えると思う。
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