2020.08.19 11:00
かかりつけ医をもつメリットや見つけ方とは
なんでも相談できて、病院選びや診察がラクになる
体調を崩したとき、どこの病院に行けばいいだろうと、その都度調べていませんか?あるいはとりあえず、大きな総合病院に行っていませんか?そんなとき「ここに行けば大丈夫」という、
かかりつけ医があると便利です。
かかりつけ医とはなんでも相談できる上、最新の医療情報を熟知して、必要なときには専門医、専門医療機関を紹介でき、身近で頼りになる地域医療、保健、福祉を担う総合的な能力を有する医師。
<引用:厚生労働省/医療提供体制のあり方 日本医師会・四病院団体協議会合同提言 2013年8月8日>
「大きくて設備の整った病院に行きたい」と思う人もいるかもしれません。しかし施設の整った総合病院は、それだけ多くの人が、さまざまな症状によって病院に来ています。診察は緊急医療が必要な人から優先され、いつも病院は混雑しています。もし自分が大きな病気にかかったとき、長時間待ったあとで、1から症状を説明することになったら……と考えると、不安になりますね。
こうした問題を解決するのが、自分の健康状態を把握している、かかりつけ医の存在です。いつも病院に行く際に悩む人も、かかりつけ医のメリットや探し方を考えてみましょう。
かかりつけ医による理想の診察とは?
この患者は緊急なのか、そうでないのか。体質や普段の様子を把握していれば、はやく判断できます。
継続的に同じ医師の検診を受けることで、生活習慣や過去の病気、体質やアレルギーなどを細かく把握されます。過去に処方された薬や検査のデータにより、説明や検査の重複も起こりません。さらにちょっとした体調の変化でも相談しやすく、
早期発見や
適切な診断が望めます。
島根県・岡山県・埼玉県などでは、かかりつけ医や
連携している地域の医療機関で、 患者の既往歴・処方内容・検査データなどを共有しています。これにより情報の収集や活用を効率的に行い、薬局で具体的な症状を伝え、救急時に検査結果などの情報と照らし合わせることなどが可能です。
<参考:厚生労働省/横断的事項 かかりつけ医機能(その1)平成29年2月22日 3.取組事例
(2)かかりつけ医と専門医療機関等の連携の例>
診察は「
短い待ち時間で、しっかり診てもらう」が理想。一人ひとりが自分にあった医療を選択することが、適切な医療の形をつくる第一歩です。
かかりつけ医は家族の健康相談や介護も安心
「自分は病院にほとんど行かないけれど、家族の健康が心配だ」という人もいませんか?
かかりつけ医には、
家族で通うことがおすすめです。健康状態を把握している医師であれば、家族の病歴から出やすい症状を調べられます。家族の健康で気になることも、信頼できる相手からアドバイスがもらえます。子どもがかかる小児科医の場合は、兄弟で同じ病院に通いましょう。
また介護においても、かかりつけ医がいると安心が大きいのです。要介護認定の申請には、
主治医意見書が必要になります。市町村の病院を受診する場合、1回の診察では普段の様子をすべて把握してもらうことが難しいです。かかりつけ医がいれば、投薬や健康状態を理解する立場から、適切な意見が期待できますね。
在宅医療ができる医師であれば、寝たきりになってからも診察してもらえます。そうでない場合も、地域の専門医や介護支援専門員への連携により、在宅医療や介護のサポートが期待できます。
<参考:厚生労働省/横断的事項 かかりつけ医機能(その1)平成29年2月22日 疾病の経過に応じ想定されるかかりつけ医の役割(案)
~生活習慣病を有する患者の例~>
かかりつけ医は自分だけでなく、
家族の健康管理もサポートできる存在なのです。次は家族ぐるみで信頼できる、かかりつけ医の探し方を考えます。
かかりつけ医の見つけ方・信頼の築き方は?
かかりつけ医には、一般的には幅広く診察できる内科医がおすすめです。ただし腰痛があるから整形外科がいいといった、症状が明確な場合はふさわしい病院を選びましょう。
通いやすさや緊急時の受診を考えると、できる限り家に近い方がいいですね。地域に密着した医師だと、近くで流行っている感染症などにも詳しいです。インターネットなどで調べて、診療時間や曜日も確認して決めましょう。
調べていくと、評判のよさも目に入ります。インターネット上の評価や口コミは、病院の環境や専門分野、どれだけの人に信頼されているかを見るためには有効です。
しかし人には相性があるため、同じ医師でも「そっけない態度だった」「簡潔でわかりやすい対応だった」と、人柄については評価がわかれます。かかりつけ医とは、なんでも話せる関係をつくることが大切。風邪を引いたときなどに一度受診し、雰囲気を見て信頼できる医師を探しましょう。
信頼関係を築くためには、自分の健康状態をしっかり伝えることが必要です。受診前には自分の症状をまとめ、「いつからか」「きっかけはなにか」など詳細に説明ができるよう準備します。余裕をもった時間にくる、咳が出る場合はマスクをするなどのマナーも守りましょう。診察に必要な保険証・診察券・おくすり手帳も忘れずに。
信頼できる医師をもつことは、自分の身体について理解し、必要な処置を見極める力につながります。適切な医療を受けて健康でいるために、かかりつけ医をもちましょう。
この記事のまとめ
- かかりつけ医は、身近で健康についてなんでも相談できる医師
- 理想的な「短い待ち時間で、しっかり診てもらう」が可能
- 地域の連携・データの共有により、専門医や介護支援員にも情報提供できる
- かかりつけ医には家族でかかることがおすすめ
- 信頼して話せる医師を身近に見つけよう
(執筆:林幸奈)
今回のコメンテーターからのご意見
かかりつけ医とは、家族、生活、環境を含めて、病気如何に拘わらず、患者の健康に責任を持ち、また、病気の時は治療し、健康な時は健康が維持できる支援を行う医師のことであろう。全体を見て最適な医療をナビゲートしたり、患者を総合的に診て、入院治療したほうがいい場合には、適切な病院を紹介し、逆に本人が治療を望まないのであれば、多職種と連携しながら生活支援を行う務めを担っているのがかかりつけ医だ。
かかりつけ医にもっとも求められているのは、コミュニケーション能力や人間力だと考える。高齢者が増えるということは、治らない病気を抱えながら生きていく人が増える、ということである。例えば、がん末期の診断が出たとして、どう伝えるか。同じことを伝えるにしても、相手によって方法は違う。また、患者がどのように生きたいのかを理解し、尊厳を守りながら医療面からどう支援していくのかを考え、実践していくことが重要であり、病気や障害があったとしても、その人らしい暮らしを実現できる支援をする。そのために、今後のかかりつけ医には、哲学的理解や、総体的な人間力が今以上に求められると考える。
歯はかかりつけ医と長期的な関係を築くことでよりよい治療が行えます。例えば、現在は小さな初期の虫歯は食生活の改善やフッ素を用いた歯の手入れをすることで、再石灰化により元に戻ることがわかってきました。小さな虫歯をすぐに削って治すというのは、継ぎ接ぎをしているだけで、いずれは悪化します。再石灰化という本質的な治療は、長期的に歯科医師との関わりが必要になるので、経験豊富なかかりつけ医や歯科衛生士が必要になります。
また歯周病の予防も長期的な治療になり、一生の付き合いと言っても過言ではありません。つまりその人その人に応じた、施術、生活習慣に関する知識の享受、手入れ方法の指導など、かかりつけ医との長期的な関わりが大切になってきます。同じ目線でコミュニケーションがとれる信頼できるかかりつけ医をじっくりと探してみましょうね。
・小島晃(こじま・あきら)
株式会社小島薬局 代表取締役社長。薬剤師・国際中医師。東京薬科大学と北京中医薬大学日本校を卒業後、1998年に中国政府認定の国際中医師となる。2003年発刊の「東洋医学の名医134人徹底紹介」に紹介される。2008年より中国・湖北中医薬大学客員教授に就任。現在は(株)小島薬局代表として、小島薬局漢方堂で漢方相談を行いながら、後進の指導や中国医学の普及に努めている。『体にやさしい妊活漢方:周期療法で妊娠力アップ【電子書籍版】(22世紀アート)』の著者。
「かかりつけ薬局」とは薬をもらうならこの薬局、相談をするならこの薬局と決めることのできる行きつけの薬局のことです。1つの薬局を「かかりつけ薬局」とすることで、今まで飲んだ薬や体質などを考慮して安全にお薬を服用できるように適切なアドバイスをもらえます。「かかりつけ薬局」には次のようなメリットがあります。
- 複数の病院に通っている場合、お薬の飲み合わせによる副作用を事前に防ぎ、安心安全にお薬を飲んでいただくことができます。
- お薬の飲み方や使い方について、専門知識に基づいて細かいアドバイスを受ける事が出来ます。
本来は全ての薬局が「かかりつけ薬局」になる機能を有するとよいのですが、現実的には薬局の機能や個々の薬剤師の知識に差があります。また、漢方薬になると適切な知識を持ってアドバイスできる薬剤師は限られてきます。ぜひご自身に合った「かかりつけ薬局」を見つけることをお勧めします。