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2019.12.12 11:00
無自覚な子供の集団いじめ、大人の対処法とは?
ー加害者に足りないものと必要なものー

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あなたは学校や職場でいじめを見たことがあるだろうか。
自分に都合よく、いじめといじりの境界線を引いていないだろうか。
平成30年度、全国の小中高校で認知されたいじめの数は54万3,933件。そのうち42万5,844 件が小学校で、9万7,704 件が中学校で認知されたものである。
2013年に施行されたいじめ防止対策推進法によると、学校はいじめを相談された・いじめが疑われた時点で調査をする義務がある。必要に応じて外部機関とも連携する必要があり、いじめを解決するためには、「見て見ぬふり」は決して許されることではない。
いじめが深刻な社会問題である、ということは誰もが知っているはずだ。しかし、「どうすれば解決できるか」自信をもって答えられる人はごくわずかだろう。いじめには4種類の人がかかわっていると言われている。
いじめの4層構造
森田洋司(1986年)
〇 いじめる生徒
〇 観衆(はやしたてる、おもしろがって見ている)
〇 傍観者(見て見ない振りをする)
〇 いじめられる生徒
いじめの持続や拡大には、いじめる生徒といじめられる生徒以外の「観衆」や「傍観者」の立場にいる生徒が大きく影響している。「観衆」はいじめを積極的に是認し、「傍観者」はいじめを暗黙的に支持しいじめを促進する役割を担っている。
立場に関係なく、いじめを認知している人は関係者なのだ。見て見ぬ振りをする、あるいは無関心でいることは、加害者と同様に誰かを傷つけていることとなるだろう。
自分がいじめ関係者であることを自覚し、勇気を持って行動する人になる必要がある。

 

「いじめを見つけたとき、どう向き合えばよいか」
「いじめをどう断ち切るか」
「集団の中で、自分らしく生きていくためには?」
 
そこで3人のゲストから話を伺い、いじめ解決のヒントを探していく。
善悪の判断をマヒさせる集団いじめ、大人の対処法は?
元木更津市青少年指導センター所長の木田繁さんは、いじめには2つのパターンがあると話す。

<ゲスト紹介>

木田繁(きだ・しげる)。
元木更津市青少年指導センター所長。
「いじめ」撲滅のための学校経営を目指す。』の著者。


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“ 1つ目は主導的な複数人の生徒によるもの。あまり目立たない集団のため、いじめが表面化しにくいのが特徴です。2つ目は目立つ主導者とその取り巻きで構成された「いじめ集団」によるもの。

主導者は常に従者のような仲間を連れ、弱者に対して陰惨な暴力行為をします。集団の一員になってしまうとそこから抜け出すのは難しく、自分の本意とは違う行動をするようになります。”


その状況が続くと、大人になっても取り返しのつかない「反社会的行動」を起こす可能性が高くなるでしょう。
ニュースで報道されているいじめは集団によるものが多いが、属している集団の狭い人間関係に囚われ、自覚なくいじめに参加している人もいるだろう。自分の行動を「いじり」や「ひやかし」といった言葉でごまかし、善悪の判断ができていない。

悪いことを「悪い」といえる勇気がある人を支持する社会であるべきだ。いじめの相談ができる身近な大人を見つけ、助けを求めることが大切だと木田さんは訴える。
“ 教師など身近な大人がじっくりと話を聞き、この問題を受け止めていくことが必要なのではないでしょうか。そうすれば事態の深刻化を防げるケースもあるでしょう。

生徒や学級の個性にあった対応がいじめを減らすという意識のもと、集団いじめの解消に向かってほしいです。”
いじめ加害者は複雑な家庭環境のものばかりではないが、まったく問題がないわけではない。大人からのプレッシャーや勉強・習い事のストレス、友人関係など原因はさまざまだ。

なにかことが起きてから話を聞くのでは遅い。大人が日常的に肯定的な言葉を使い、いつでも傾聴する姿勢を示しつづけていこう。


コンプレックスの塊、克服して自分を認める方法とは? 
小説家の小牟禮昭憲さんも、集団いじめの解決に難しさを感じている人の一人だ。

<ゲスト紹介>

小牟禮昭憲(こむれ・あきのり)。
小説家。
終わりのない旅』の著者。


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“ 人間にはコンプレックスがあります。自分が認めたくないところを欠点や弱点としてとらえ、ついつい他人と比べてしまいます。

相手に自分より優れたところを見つけたとき、自分を否定し、そのネガティブな感情を相手にぶつけてしまうのではないでしょうか。”
とくに学生時代は、同世代のなかで自分を見つめ、進路を考えなくてはいけない多感な時期だ。受験や就職など進路を決める場面では、これからの人生がすべて決まってしまうのではないかと不安になることもあるだろう。
他人と比べて未来を描くスピードが遅かったり、自分の思い描いた通りにいかないと自己否定の気持ちが生まれる。

自己肯定感が低ければ、本来の自分がもつ魅力に気がつくことはできない。小牟禮さんは、自分を見つめ直すことが大切だという。
“ 加害者本人も、心のどこかでいじめを否定する気持ちがあるのではないでしょうか。行動とは裏腹に、冷静さや理性を同時に持ち合わせているはずなのです。

自分を見つめ直す機会と心の余裕があれば、新しい自分を手に入れる未来の可能性は残っていると、私は信じています。”
いじめ加害者の心には余裕がない。心に余裕がなければ想像できない。自分以外のことを想像する習慣が心の余裕を生むのだろう。


他人から認められる人=自分を認められる人 
少子化の影響もあり、小中学校の学校数や生徒数は減少の傾向にある。学校だけでは限られた人とばかり顔を合わせていて、多様な人たちとのふれあいが足りない現状があると想像できる。
● 🔗 文部科学省 - 文部科学統計要覧(平成30年版)
会社経営者の永井一夫さんも、相手を認められる人になることが大切だと考えている。

<ゲスト紹介>

永井一夫(ながい・かずお)。
会社経営者。
歌から生まれた不思議な不思議な国・日本: 若者に知ってほしい伝統と精神』の著者。


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学校や会社などに属して日常生活を送る人々は、つい自分の見ている世界だけがすべてであると考えてしまいがちです。しかしそういった状況では、視野が狭くなってしまいます。

偏見や差別など、いじめにつながるようなものの根底には、こうした考えがあるのではないでしょうか。
「視野が狭い」とはなんだろうか?やりたいことがある人は、いじめという「百害あって一利なし」なことはしない。将来を想像して行動できる人は、今のストレス発散のために他人を傷つけることがどれほど無意味か理解している。

視野が狭い人は自分の価値観が絶対的なものだと勘違いしているが、視野が広い人は他人の価値観を否定しない。
“ 世界にはたくさんの人がいて、それぞれに個性や価値観があります。自分が「正しい」と思うことも、「狭い世界だけでつくられた認識なのではないか」と省みる気持ちが大切でしょう。

多様な価値観を知り、お互いの個性を認めることが、いじめ解決の第一歩ではないでしょうか。”
この記事のまとめ
〇 集団いじめは被害者一人で解決することは難しい。
大人が日常的に傾聴する姿勢を示すことが大切。
〇 強いコンプレックスがある人は自己肯定感が低く、自分の魅力に気がつけない。
人と自分を比べるのではなく、自分以外の人を想像する習慣をつけ、心に余裕を持とう。
〇 自分の見ている世界だけに捉われず、自分が正しいと思うことでも省みよう。
他人の価値観を受け入れると視野が広がる。

 

( 企画・執筆:佐藤志乃 林幸奈 / 企画・制作:一条恒熙)