2020.03.05 13:00
親だけで育児はできません。
子育てしながら働く現代。ワンオペ育児はもう限界?

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あなたの周りに、仕事をしながら子育てに奮闘する人はいるだろうか。

そう言われると、女性を思い浮かべる人が多いかもしれない。しかし今、男性も育児に参加すべき、という考えは一般的になった。環境大臣が2週間の育児休暇を表明したことも話題になり、「これからは男性も育児休暇が取得しやすくなるのでは」と言われている。 

2週間は仕事に打ち込む人には長く、子育てに苦労した人からは短いと感じられる期間。そもそも育児休業・休暇は、どのくらいの間取得できるのか。法律ではこのようになっている。

労働者は、その養育する一歳に満たない子について、その事業主に申し出ることにより、育児休業をすることができる。
<引用:育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律 第五条>

育児休暇は通常の休暇と同じ扱いのため、明確な期間は法律では定められていないが、原則1歳の誕生日まで(条件次第で1歳6か月、2歳まで延長可能)の休業の取得は可能になっている。このような法律があるのに、育児休業を取得しづらい環境ができてしまっている。

妊娠した女性が職場で不快な思いをさせられる、マタニティハラスメントが問題となった。最近では、男性が育児休暇・休業を取得しにくい環境をつくる、パタニティハラスメントという言葉が話題となっている。今は無縁と思っている人も、いずれは子どもが産まれ、育てていくかもしれない。

ゲストとともに育児の現状を見ながら、子育てがしやすい環境をつくるために、私たちができることを考えていく。


待機児童とカウントされない子どもがいる

男性の子育て参加には、仕事を続ける母親が増えている背景がある。18歳未満の子どもがいる母親のうち、72.2%が「仕事あり」と答えている。0歳の子どもがいる母親を見ても、「仕事あり」は42.4%。
<参考:厚生労働省/平成30年 国民生活基礎調査の概況 統計表>

そこで問題になるのが、保育園だ。私市保彦さん(作家)は、保育園の現状について、こう話している。


 子どもを育てながら働いている女性、あるいは働こうと思っている女性にとって、保育園は欠かすことのできない命綱。減少傾向にあるとはいえ、保育園の待機児童は現在も問題になっています。潜在的には、調査数よりも多いかもしれません。


<ゲスト紹介>
私市保彦(きさいち・やすひこ)。
作家。
ネモ船長と青ひげ: 童話、冒険小説、児童文学論』の著者。

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平成29年10月と比較して8.235人減少してはいるが、平成30年10月の待機児童数は47.198人。
<参考:厚生労働省/平成30年10月時点の保育所等の待機児童数の状況について>

私市さんが指摘する通り、待機児童になれない子どもはいる。「保育園に入れない」「夜間に母親が仕事をしなければならない」といった理由で、ベビーホテルなどの認可外保育施設に子どもが預けられているためだ。

ベビーホテルとは……
次のいずれかを常時運営している施設。
ア:夜8時以降の保育
イ:宿泊を伴う保育
ウ:利用児童のうち一時預かりの児童が半数以上
<引用:厚生労働省/平成21年地域児童福祉事業等調査結果の概況:用語の定義>

待機児童の解決には、
◯待遇の改善を含む保育士不足の解消
◯安定した財産の確保
◯市町村・育児者が働く企業のサポート
などが必要になる。しかし保育園を取り巻く問題は、待機児童だけではない。

 


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「子どもがうるさい」と言ってしまう大人は許されるのか?

2016年4月。市川市の私立保育園が、市民の反対運動により開園を断念した。主な反対理由は、狭い道に送り迎えの車が往来し、危険であること。そして、園児たちによる騒音だ。市川市に住んでいた私市さんは、当時問題となった場所へ足を運んだという。


周囲は静かな住宅地でした。建設予定地は、前の道路がやや狭く、車が往来する一般道路から入ってすぐのところだったのです。事故が起こる危険性については納得できましたが、園児が遊んだり騒いだりする声は、仕方ないものでしょう。


他に東京都江戸川区、杉並区などでも反対運動が行われた。反対理由は同じようなものだ。赤ちゃんが泣くことや、子どもがマナーを知らずにはしゃいでしまうのは、仕方のないことだ。一見冷たい意見のようだが、「子どもがうるさい」という発言は、最近では個人の主張として、受け入れられてしまっている。


 「子どもがにぎやかだと、楽しいではないか」という声より、個人の生活を守ろうという声の方が大きくなったようです。このような意識では、また同じことが繰り返されてしまいます。


子どもへの冷たい対応で、肩身の狭い思いをするのは親たちだ。子育ては、親がすべてやらなくてはいけない、と思っている人は多い。個人の生活・プライバシーを守ろうとしたため、他人の子どもを見守り、時には叱る大人がいなくなってしまった。子どもが小さい親は経験も少なく、不安が多いなか子育てをしている。

ただ「うるさい」と片づけてしまうだけでなく、あたたかく見守る気持ちを持とう。



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子育てを頑張る人に周囲ができることは?

男女ともに育児休業を取得しにくい背景にも、周囲の冷たい目や、「親だけでなんとかなるだろう」という理解の薄さがある。育児者が働く企業のサポートも課題だ。育児休業の取得ができても、休んでいてなにも知らされない間に仕事が進むと、復帰が難しくなる。育児には周囲の協力が不可欠であると、私市さんは言う。


 子どもは、みんなで大切に育てなければならない」という社会性、「自分の子どもだけでなく、ほかの子供もりっぱに育って欲しい」という昔ながらの心が、失われていると感じます。


たとえば育児休業の間も、業務内容をこまめに確認できるよう連絡を取り続けるなど、育児休業取得者が置いてけぼりにならないよう、協力的な姿勢が必要だ。また、子育て経験者の協力は欠かせない。


 最初から静かで、誰にも迷惑をかけない子どもを育てられる親なんていません。子どもを育てた経験があれば、子どもは叫んだり泣いたり、笑ったりするものだと理解できるはずです。


育児休業への理解を深めるためにも、育児経験者が率先して、育児休業とはどんなものでなにが必要かを伝えていくとよい。一人一人が声をあげ、周りがサポートしていくことで、新たに育児が必要となった人も助けが求めやすい環境ができる。

一人ひとりの意識を変えることが、子育てのしやすい環境をつくる一歩になる。「子育ては親だけではできない」「周囲の協力が必要」という気持ちを持とう。



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この記事のまとめ 

✔︎ 子どもが1歳の誕生日になるまでの育児休業は、法律上可能となっている。

✔︎ 
18歳未満の子どもがいる母親のうち、72.2%が働いている。

✔︎ しかし保育園に入れない待機児童や、ベビーホテルで過ごす児童、そして市民の反対運動による保育園の開園中止が問題となっている。

✔︎ 生活を大切にするあまり、「子どもはうるさい」という意見も受け入れられるようになり、他人の子どもを見守る大人がいなくなってしまった。「子育ては親がやるもの」という意識を捨て、周囲の協力が必要であることを忘れない。


(執筆:林幸奈)