2020.01.10 15:00
自然災害から命を守る危機回避能力
親子で避難に役立つ、家庭での新たな避難訓練方法とは?

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全国各地で自然災害が多発し、大きな被害を受けた令和元年。災害が特別なことではないとあらためて実感した年だった。

「災害が明日来る」という意識と日常的な備えが身を助ける。しかしニュースやSNSで被災者の実態を見聞きしても、都心で暮らす人々は自然の恐ろしさをどこか他人事だと考えているのではないだろうか。

台風上陸のニュースが出るたびに、食品・飲料類の買い占めが報道される。この出来事から、多くの人々は日常的な備えが不十分だとうかがえる。


首相官邸の防災の手引きによると、家庭での備蓄についてつぎのように発信している。

“ 防災のために特別なものを用意するのではなく、できるだけ、普段の生活の中で利用されている食品等を備えるようにしましょう。”

災害は「特別」ではなく「日常」だという意識をもつべきだろう。

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暮らしのサイクルに「備える」を組み込む考え方は、物資の備蓄だけに限らない。行動の面でも実体験のともなった備えが必要だろう。いざというとき、人はパニック状態で自分が思っている以上に行動できないものだ。

たとえば、近隣の避難場所を知っていても、実際の経路を歩いたことがなければなかなか辿り着けないかもしれない。避難経路を知っていても、予想外の土砂や雨風で移動が困難かもしれない。とくに車が使えない状況で子供や高齢者を引き連れて避難する場合、予想外の出来事の連続だろう。

政府広報オンラインの資料(国土交通省提供)を見ると、ほとんどの都道府県で土砂災害が発生していることがわかる。


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全世界で発生する地震(マグニチュード6.0以上)の20%が日本周辺で発生しており、土地の性質上、土砂災害を避けることはできない。これらのことをふまえて、地すべりや地割れ、家具などの転倒によるケガといった2次災害も考慮した備えをしていきたい。

では、どのように備えたらいいのだろうか?備えるといっても、そもそも都会人は足場がよくない場所を歩き慣れていない。そこで、自然に親しむライフスタイルの作家2人から話を伺い、日常の延長線上で状況判断力の育み方を考えながら、新たな備え方を探っていく。

 

登山で自然と身につく緊急時の状況判断力とは?

登山歴65年でお遍路エッセイの著者である田口隆二さん(登山家)は、登山でいざというときの対応力が身につくという。

 

<ゲスト紹介>

田口隆二(たぐち・りゅうじ)
1951年から山歩きを始め、現在まで登山歴65年。山行回数1700回。
山男の歩き遍路: 四国八十八ヶ所巡礼の著者。


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“ 山歩きは体力・気力・緊急時の状況判断力などが総合的に身につきます。家族で取り組みやすいアウトドアです。登山の経験がない人は、専門的な知識や特別な体力が必要で素人には危険、といった先入観をもつ人もいるでしょう。

しかし、山歩きといっても色々あります。やさしい里山歩きであれば危険が少なく、費用もさほどかからないので意欲さえあれば誰でも挑戦できます。それでいて、楽しく健康的で、災害対応能力も自然に身についてしまう、一石三鳥も四鳥もあるアウトドア活動です。

都心からでも行きやすい場所にも小川や里山はあります。どこの市町村でも散策目的の人向けに無料マップが用意されているので、親子でお弁当を持って歩いてみるのもいいでしょう。 身近な里山にも傾斜の急な坂や水たまりがありますし、急な天候の変化もよくあることです。シーズンによって突然の雷雨、猛暑、寒風などさまざまです


山は標高差が大きいほど天気が変わりやすい。スポーツ庁は登山事故防止について、つぎのことが大切だと通知している。
〇 数日前からのゆとりある計画を立て、備えること
〇 目的に合わせた装備を持参すること
〇 最新の気象情報の把握すること
〇「つまずき」などの小さなきっかけによる転倒が大けがにつながるため、無理をせず一歩一歩慎重に進むこと
・参考 🔗 - スポーツ庁 / 冬山登山の警告文夏山登山の警告文


これらは登山に限らず災害時にも意識すべき注意点だ。体験をともなうからこそ学べることがあり、いざというときに学んだことを応用する方法が思い浮かぶ。



“ 災害時にも通用する技術や用具などのノウハウが、とくに意識をせずとも楽しみながら身につくのが登山のよいところです。継続的に行うとより効果的でしょう。実践的な学びにするため、つぎの3つを取り入れてみてください。”
1 現地まで車を使わずに行くこと。電車やバスなどの公共交通機関を利用し、現地はすべて徒歩が望ましい。
→どこで被災するかわからないため、車がない状況に慣れておく必要がある。

2 スマホアプリなど自動的にルートをナビゲートする手段に頼りすぎないこと。緊急連絡のためにスマホは必要だが、地図を見ながら親子で相談し、場面に応じて自分たちで判断する。
→災害時は電波がつながりにくいため、アナログの方法に慣れておく必要がある。

3 登山後に反省・感想を記録しておくこと。体験を次回の準備に役立てる。
→記録することで記憶を整理して残せるので、体験を応用しやすくなる。

クーラーボックスとペットボトルが命を救う!?

20年前の玄倉川水難事故のニュースに危機感を覚えた安蔵貞夫さん(元高校教師  / 日本赤十字社特別社員)は、生徒と身近なもので身を守るための実験を行ったという。

<ゲスト紹介>

<ゲスト紹介>

安蔵貞夫(あんぞう・さだお)。
水戸南高校通信制勤務、日本赤十字社特別社員。
エッセイ 山からの手紙: 人生の単独行をゆく君へ』の著者。


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“ 神奈川の玄倉川水難事故では、キャンプ中の家族13人が亡くなりました。8月のキャンプシーズンのことでした。川の中州での野営は危険であるとの度重なる警告を、大人たちは完全に無視し、増水した中州に取り残されました。

状況の深刻さに気付いたときにはすべての資材が流され、ダンゴになって固まるしかなく、最終的に子供たちを含む全員が流されてしまいました。事故後、生徒といっしょに実験をした結果、つぎの4つのものが役立つとわかりました。”
1 空のクーラーボックスにヒモを十字に結び、持ち手をつくると5~6人の大人が放射状につかまって浮かべる。

2 空のペットボトルを着衣の胸に入れ、飛び出さないようにヒモで結べば簡易ライフジャケットになる。2リットルなら大人用のライフジャケットが作れる。1リットルのビンでも効果は高い。

3 グランドシート(テントの下に敷く保護シート)一体型のテント単体でプールに3時間くらい浮かべられる。赤ちゃんであれば短時間乗せて浮かべられそうなので、緊急時にボートとしての役割が期待できる。

4 釣り竿のおもりを遠くに飛ばし、糸づたいでロープをかけられる。水の中でもつかまる場所ができる。

これらはあくまでも緊急時の代用品だが、ほかの水害発生時にも応用できそうなアイディアだ。ただし子供がいる家庭の場合、より安全なライフジャケットを備えておくとよい。子供は着なれないものを拒否することが多いので、行楽シーズンに海や川で着用して遊んでおくとよいだろう。

大人は子供にとっての危険をよく考えてみてください。自然の危険を完全に避ける方法はないです。大人たちの力量、シーズン、装備などを十分に考慮して備えましょう。


この記事のまとめ 

〇 暮らしのサイクルに「備える」を組み込むことが大切。

〇 地震や台風による二次災害(地すべり・地すべり・転倒によるケガ 等)を想定し、行動面でも備えが必要。

〇 災害発生時に役立つ知恵登山は体力や気力だけでなく、急な気象の変化への対応が緊急時の状況判断力を育む。

 

〇 災害発生時に役立つ知恵家庭にある身近なもの(ペットボトルやクーラーボックス)を工夫すれば、いざというとき水に浮かべる。水や海でライフジャケットを着用して浮かぶ体験をするとよい。

 

〇 家族で継続的にアウトドアに出かけよう。自然とふれ合いながらさまざまな可能性を知っておくと、実践的な危機回避能力が育まれる。

(執筆:佐藤志乃 / 制作:一条恒熙)