2020.06.05 15:00
女性の90%が泣き寝入りする痴漢被害の実態
弱者を守るためにもつべき被害者視点とは?

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今年は1月18日、19日に実施されたセンター試験。遅刻できない受験生を狙う痴漢がインターネット上の書き込みなどから話題になり、有志による痴漢見守り運動も実施されました。Twitterで「#withyellow」と検索すると、活動の様子や反響を知ることができます。

平成30年の痴漢検挙件数は2777件、電車内における強制わいせつの認知件数は266件でしたが、この数字に含まれない被害者も多くいただろう。
<出典:警察庁 / 2-43 痴漢事犯の検挙状況等の推移(平成26~30年)>

電車内などにおけるいわゆる痴漢は、各都道府県の迷惑防止条例違反の痴漢事犯、または強制わいせつ事犯として、認知・検挙されています。

痴漢と聞いて、どんな被害をイメージしますか?

多くの人が「体を触られる」とイメージするのではないでしょうか。


しかし痴漢の手口は多様で、思いもよらぬ行動も多いです。「顔の近くで息を吹きかけられる」「匂いを嗅がれる」「体を押しつけてくる」「移動してもついてこられる」など、犯罪かどうかグレーなことも多いです。犯罪として立証できなくても、怖くて気持ちが悪いことであるのは変わりありません。

このような話をすると、しばしばSNS上では「被害者にも問題がある」「冤罪被害についてはどう考えるのか」などの意見が出てきます。

これは被害者の苦しみを置き去りにしてまで、優先して議論することなのでしょうか?戦うべきは男性でも女性でもない、痴漢をする犯罪者であることを忘れないでほしいです。

弱者の視点に立って考えられる人、被害から守るために行動する人が増えるよう、切に願います。

そこで、実際の被害状況について知り、被害者を助けるために周囲ができることはなにか考えていきます。


痴漢被害者の90%が泣き寝入りする

私は学生時代、痴漢が多いといわれる埼京線を利用して通学していました。当時よく一緒に過ごしていた5人の友人たち全員が、痴漢被害を受けた経験があります。体感として、痴漢は身近な犯罪で被害者が多く、決して珍しくないという印象です。

毎日1時間半かけて通学していた友人は、車両を変えてもついてこられ、週に何度も嫌な思いをしたといいます。混雑した電車に乗車するタイミングを狙い、押し込みながら体を触ってくるというのはよくある手口で、拒否を示さなければエスカレートします。
【痴漢被害の実態】

午前7時から午前9時の通勤通学時間帯に集中して発生。
 (被害件数の約30%)

〇 痴漢の被害者は、約70%以上が10~20歳代。

 しかし、年代問わず30~40歳代も被害にあっている。

〇 被害に遭った女性のうち、相談・通報できたという人は10人に1人だけ。
 被害者の約90%が泣き寝入り

<出典:警察庁>

なぜ、被害者は相談・通報せずに泣き寝入りするのでしょうか?



痴漢だと確信しても声を上げられない

被害にあったとき、ドラマで見るような「この人痴漢です!」という言葉はまず出てきません。人は危ない目に遭うと、怖さのあまり声が出ないものです。声を出さないのをいいことに、「相手が受け入れている」と考える恐ろしい人もいるそうですが、本当に信じられません。

あらゆるハラスメントを社会からなくすことを目的に活動する団体「#WeToo  Japan」の調査によると、痴漢被害者は圧倒的に女性が多く、女性の7割が公共空間でのハラスメント被害を経験しているといいます。通勤時間が長い人ほど被害経験が増えることもわかっていて、女性にとって電車は安心できない場所なのです。

もし声を上げられたとしても、相手が逆上してくる可能性もあるでしょう。実際に、「ブス」などまったく関係のない容姿を罵倒する暴言を吐く人もいるといいます。

それでも女性は、男性が痴漢冤罪を恐れていることをよく理解しています。電車内で両手を上げたり、カバンを抱えて誤解されないように努めている男性の姿を見ているからです。

体を触られても「自分の勘違いかもしれない」「混雑しているから偶然当たってしまっているのかもしれない」・・・このように、必死に自分を責めようとすることもあります。

被害を見て見ぬふりすることがどれだけ心を摩耗するでしょうか。また、被害者に原因があるような発言がどのような影響を与えるか、1度でもイメージしてみてほしいです。

 

女性の容姿や年齢を揶揄する論点ずらし

先日、とあるテレビ番組が女性専用車両について偏った印象を与える内容である、と炎上しました。取り上げられていたのは「女のバトルが繰り広げられている」、「香水の匂いがキツイ」、「乗りたくない」、といった女性の声。この話題は、弱者の安全を守るための場所である、という被害者視点が抜け落ちており、自分の感覚とズレがあったので驚きました。

ほかにも、若い女性が「(車両は)どこでもいい」と言っているのに対し、中年女性が「(女性専用車両が)あると安心」と語る有名なキャプチャ画像が以前からインターネット上に出回っています。

女性専用車両の話題が出ると、この2人の容姿や年齢をくらべて揶揄する発言を見かけますが、「だれが言っているか」でまったく違う話として捉えられてしまうことは非常に危険ではないでしょうか。


 「#WeToo  Japan」はストリートハラスメントの実態調査結果から、このように考察しています。
〇 制服層と私服層を比較すると、制服層の方が私服層よりも多く被害にあっている
〇 通勤・通学時間の長さという、コントロール困難な要因が被害リスクを増加させる
〇 若いほどこの1年間での被害経験が多いが、40 代でも 10 代の3分の1程度にしかリスクが軽減されない
〇 年齢が高くなるほど、これまでに被害にあったことがある人が多い

痴漢被害については、本人にはコントロールできない要因が大きく影響することがわ
かる。若い女性は、スカートを短くしていなかった人でも、高い確率で被害に遭ってい
る。
1)どの車両に乗るかは自由であり、
2)中年であっても新たな被害に遭う確率が一定以上あり、
3)高齢になるほどこれまでの被害経験が伸びることから、電車内で痴漢を避ける行為を取るのは合理的である。

これまで感覚で語られていたハラスメントの実態が明らかになり、「被害にあう方にも原因がある」「そんな服装しているから・・・」「自衛が足りないのでは?」などの声が的外れであると思わされました。これらの声は被害者に変わることを求める声です。加害者が人を傷つけるのは仕方がない、という意識が根底にあるように思います。

被害者を守るために、徹底して加害者を許さないという姿勢が必要です。「冤罪で加害者になるかもしれない」ではなく「自分(大切な人)が被害者になるかもしれない」と考えられる人が増えてほしい、そう強く願っています。

もし身近で困っている人がいたら、最寄りの警察署生活安全課や鉄道警察隊に相談しましょう。


〇犯罪があったら#110
〇相談は#9110

<出典:政府広報オンライン / 暮らしに役立つ情報>

 

 

この記事のまとめ 

✔︎ 痴漢被害に遭った女性のうち、相談・通報できたという人は10人に1人だけ。被害者の約90%が泣き寝入りしている。

✔︎ 
女性の7割が公共空間でのハラスメント被害を経験している。通勤時間が長い人ほど被害経験が増える。

✔︎ 年齢やスカートの長さ問わず被害者がいる。本人にはコントロールできない要因が大きく影響するため、容姿や年齢を揶揄するのは的外れ。

✔︎ 「冤罪で加害者になるかもしれない」ではなく「自分(大切な人)が被害者になるかもしれない」と考えよう。

✔︎ 被害者を守るために、徹底して加害者を許さないという姿勢が必要。


(執筆:佐藤志乃)