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2019.12.13 17:00
増える外国人、多文化共生に必要なもの
日本が移民大国だと知っていますか?

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日本は移民が多い国だという印象のある人がどれくらいいるだろうか?
OECD国際移民データベースによると、外国人人口の流入(有効なビザを保有し、90日以上在留予定の外国人)は2015年に39万1,200人で世界第4位になった。
在留外国人の数は年々増加しており、その数は146万人を超え、過去最高人数となっている。

日々の暮らしのなかで外国人労働者とふれ合うことも多く、その場面は職場や学校、コンビニ、観光地などさまざまだ。

2020年の東京オリンピック開催にあたり、さらに多くの外国人が日本にやって来る。多言語やキャッシュレスへの対応を中心に準備が進められているが、違う国で育った人と接するとき、生じる壁は言語の違いだけではない。

特別ではなく当たり前に関わり合う存在だからこそ、自分と相手の両者の立場に立って考える意識をたいせつにしたい。

国際化がいっそう進展している社会においては、国際関係や異文化を単に理解するだけでなく、自らが国際社会の一員としてどのように生きていくかという主体性を一層強く意識することが必要だ。

文部科学省は国際教育の観点から、国際社会の一員として必要なものを3つ挙げている。
初等中等教育段階において身につけるべきこと

1. 異文化や異なる文化をもつ人々を受容し、共生することのできる態度・能力

2. 自らの国の伝統・文化に根ざした自己の確立

3. 自らの考えや意見を自ら発信し、具体的に行動することのできる態度・能力
● 🔗 文部科学省 - 初等中等教育における国際教育推進検討会報告-国際社会を生きる人材を育成するために-第1章 国際教育の意義と今後の在り方

この3つは、他者を受け入れ自己を豊かにするための方法だ。この観点を行動に移すために、実際には多文化とどう接していけばよいのだろうか。

 

そこで、二人のゲストから話を伺い、国際社会の一員として他者に歩み寄る行動とは何か考えていく。
市民に求められるインバウンド対応とは?
日本を訪れた外国人観光客は、2019年1月から10月までで2,691万4,400人で、昨年の同じ期間より80万5,071人(3.1%)増加している。インバウンド需要はショッピングなどの“モノ消費”から、温泉や文化体験などの”コト消費”へ移行してきている。

都心部よりも地方の訪日観光客数が伸びてきており、これまで外国人との接点が少なかった土地にも多文化共生の意識を根付かせる必要がある。インバウンドをきっかけに外国人留学生や移住者が増加するなど、地域活性化につながった事例も増えつつある。観光客とはその場限りのお付き合い、という考えでは不十分な時代になってきた。

梅原愛雄さん(JICA/JOCVカウンセラー、ODAジャーナリスト)は、アフリカでの取材中に見た光景から感じたことを話してくれた。

<ゲスト紹介>

梅原愛雄(うめはら・ちかお)。
JICA/JOCVカウンセラー、ODAジャーナリスト。
21世紀 夢の独立: 南海の小国 東ティモールの挑戦 高鳴る序曲 限りなき前進』の著者。


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“ 1つ目は主導的な複数人の生徒によるもの。あまり目立たない集団のため、いじめが表面化しにくいのが特徴です。2つ目は目立つ主導者とその取り巻きで構成された「いじめ集団」によるもの。

 Aは「靴は足に履くものなのに、このあたりの人は頭の上に載せて歩いているではないか」つまり「売っても意味がない」と言うのです

一方Bは「はじめての靴で汚したり、壊したりしたらもったいないからだ。お財布に余裕ができればすぐ買ってくれるはず」と譲りません。
同じ光景を見ている2人が、まったく違うことを感じていて、そこから言い争いが生じている。

しかし、どちらの主張が正しいか答えは出ないだろう。
2人の話を聞いた私は、「首を切る」としたら雇い主はどちらを選ぶだろうと考えました。しかし本当に靴を売る必要があるのかは、現地の人々にしかわからないことです。1度居合わせただけの私にはわかるはずがありません。
たとえば、靴が必要ない人にいくら売っても、ただ不要なものとなってしまう。反対に靴が必要な人に売れない環境でも、もちろん相手を困らせる。

自分が必要だと思うものを押し付けても、それが相手にも必要だとは限らない。実際に生活してみなければ、他者の生活や文化の背景を本当の意味で理解することはできないだろう。

理解できないこともあるという前提を持ちつつ、相手が必要としていることは何か想像しながら話を聞くことが大切だ。

「観光客だから」と一括りにしたテンプレート的な対応は、相手に不親切だと思われる可能性がある。できる限り丁寧に寄り添ったコミュニケーションを大切にしていきたい。


多文化共生が発展させてきた人類のあゆみ
高野ジョウさん(東急百貨店勤務、ミラノ駐在員、タイシルク「ジム・トンプソン」のバイヤーなどを歴任)は、多文化交流の大切さについて、歴史的な視点から語ってくれた。

<ゲスト紹介>

高野ジョウ(たかの・じょう)。
株式会社東急百貨店に29年間勤務。その間、ミラノ駐在員、タイシルク「ジム・トンプソン」のバイヤーなどを歴任。
北イタリア物語: 青いメロディが聞こえる』の著者。


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「多文化共生」は巨大なテーマであり、今後私たちが考え続けざるをえないテーマです。人類はアフリカ大陸に生まれて以降、各大陸へ移動しながら、環境に適応しつつ変化して来ました。
たとえば、イタリアの歴史。すでに古代ローマ帝国以前に、数多くの国々との交流し、いかに民族やその文化に影響を与えてくれたのかが理解できます。

この島国の日本でさえも古代に行けば行くほど、アジア大陸や南方の島々との深いつながりがわかって来ました。
私たちが生きる現代は、多文化との出会いがなければここまで発展していない。人類は他国から影響を受け、そこから自分たちだけの文化をつくっていった。これまでにもこれからも、人類の発展のためにお互いに影響し合う関係は欠かせない。
異文化からの新たな発見を、チャンスと捉えることが大切だと、高野さんはいう。
“ 私たち人類は大昔から互いにつながっています。自分とは少し違う人たちを見かけたら、それは「学びのチャンス」と思いましょう。人類に先輩や後輩はありません。ただ、歩いて来た道が違うだけです。
日本人は自分たちの文化に誇りを持ち、常識的だと考えている人が多いのではないだろうか。

しかし島国である日本の文化が、世界に驚きを与えてしまうこともあるかもしれない。

まずは相手に興味を持ち、日本に対してどう感じているのか率直に聞いてみるのもよい。考え方のちがいに戸惑うこともあるだろうが、「なぜ日本はこうなのか」自分なりの考え方を伝える努力をしよう。

伝えることは、相手にも理解してもらうきっかけになり得る機会だ。
自分と違うところにがっかりしたり否定したりせず、新たな価値観として楽しみながら多文化を受け入れていこう。


この記事のまとめ
◯ 理解できないこともあるという前提を持ちつつ、相手が必要としていることは何か想像しながら話を聞くことが大切。
〇 考え方が違っても、「なぜ日本はこうなのか」自分なりの考え方を伝える努力をすれば、相手に理解してもらえる可能性が拡がる。 
( 企画・執筆:佐藤志乃 林幸奈 / 企画・制作:一条恒熙)