2020.01.16 14:00
「働きやすさ」と「働きがい」が生まれる職場
良好な上司と部下の関係を築くコミュニケーションの量と質とは?

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「ブラック企業」この言葉を知らない人はほとんどいないだろう。

過重労働やサービス残業、パワハラ・セクハラなどが体質化した、劣悪な労働環境の職場をこう呼ぶ。

もともとは1990年代頃からネットスラングとして使われていた言葉だが、2009年に「ブラック企業」をテーマとした映画が公開されたことをきっかけに広まり、大衆にも使われる言葉になった。

近年では就活生や社会人から「ブラック」「ホワイト」という言葉で働きやすさを表現されることが多い。残業時間、給与、有給消化率などだけでなく上司や同僚との対人関係も、働きやすさを計る指標に含まれている。

最近の就活生は「だれと働くか」を重視する傾向があるという。職場選択において、対人関係によるストレスを回避することへの優先度が高いということだろう。

では、どのようなことがストレスになるのか。働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト「こころの耳」によると、人間関係が職場の快適さに大きな影響を与えるという。 職場の協力体制は、上司(評価者)と部下(被評価者)の良好な関係を生み、最終的に信頼関係を築く。人間関係が悪化状態にあると、上下・左右間のコミュニケーション総量の減少が顕著で、協力しあわない風土になる可能性がある。(参考:厚生労働省 / 1 「職場の快適さ」と「人間関係」の関係)

上司と部下がコミュニケーションをとるとき、世代や立場による感覚のギャップがコンプライアンス意識のズレとなってあらわれ、職場の対人関係に亀裂を生むことがある。昨今さまざまなハラスメントに付けられる「〇〇ハラ」という名称に怯え、保身を優先する管理職が増えている。これが部下とのコミュニケーションの量が足りなくなる原因のひとつになっているのではないか。


そこで今回は2人の作家に話を伺い、「働きやすさ」と「働きがい」について考えながら、上司と部下が良好な関係を築くためのヒントを探っていく。 
自然と部下が動くようになる指示の出し方とは?

上司から部下への強制的な指示は仕事に対するモチベーションを下げるというが、モチベーションの低下は「働きがい」のない職場をつくり出す。風間嘉隆さん(元三井銀総合研究所取締役、元都市銀行系総合研究所取締役)は、「動けない部下」に困ったら上司が指示の出し方を見直す大切さについて語る。 

 

<ゲスト紹介>

風間嘉隆(かざま・よしたか)
元三井銀総合研究所取締役、元都市銀行系総合研究所取締役 。
南アルプス幾星霜の著者。


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“ 組織で仕事をする上で、取り組む仕事の方向性と方法を共有し、理解し合ってスタートをするということが前提です。それを示すのが上司です。その指示を受けて部下は考え、行動します。

この場合、その仕事をすること自体がはじめから嫌だという部下は例外なのでこのテーマの対象としません。 部下が動かないとしたら、意思の疎通が十分でないと考えるべきです。部下の行動で困ったときは、自分の言動を客観的に振り返り、自分に非がある場合は直しましょう。”

1  取り組みはじめたとき、部下から意見や提案があったか。
→十分に話し合ったかどうかが大切。

2  部下は上司の指示を黙って聞いていたか。
→仕事の内容を伝えた後、丸投げしないこと。必要であれば方法を一緒に考え、教えることが大切。


令和元年版 労働経済の分析によると、上司の適切な行動が「働きやすさ」と「働きがい」の両立を助け、人材の定着や自発性を育むことにもつながるという。
〇「働きやすさ」の向上が定着率などを改善し、「働きがい」の向上が定着率に加え、労働生産性、仕事に対する自発性、顧客満足度などさまざまなアウトカムの向上につながる可能性がある。

〇「働きがい」を高める取り組みとしては、職場の人間関係の円滑化や労働時間の短縮などに加えて、上司からの適切なフィードバックロールモデルとなる先輩社員の存在を通じて、将来のキャリア展望を明確化することが重要である。(参考:厚生労働省 / 令和元年版 労働経済の分析)

部下は納得できない何かがあるから動けないのだと考えてみてください。部下は仕事を進めるなかで、取引先以上に上司の意向や顔色を伺うことがよくあります。そして実績のある敏腕な上司が先に意見を言ったあとでは、なかなか本音が言えないものです。意思疎通のために最善を尽くすことは、部下に気持ちよく動いてもらうために大切な上司の仕事です。


上司と部下の関係において、上司が思っている以上に肩書きの力は大きい。否定的な言葉ばかり使っていないか振り返り、肯定的な言葉で話を受け止める姿勢が大切。


器の大きい上司は他人を変えずに自分が変わる

理想のリーダー像に「器の大きい人」がよく挙げられるが、これは一体どんな人なのだろうか。「器の大きい人」は人を変えずに自分が変われる人だ、と宮川輝子さん(会社経営)はいう。

<ゲスト紹介>

宮川輝子(みやかわ・てるこ)。
会社経営。
日本のロケット 真実の軌跡 合本版』の著者。


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「器の大きな人」を具体化するとどんな人か、これは私にとって永遠の課題です。私もその大きな器を目指して日々精進しています。自分の意図通りに人を動かそうと悩むこと自体が、「器の小さい人」がすることなのかもしれません。他人を変えようとする前に、自分が変わろうとする意識が大切です。私は3つのことを大切にしています。
1 倫理観
2 自己の仕事への情熱 
3 物事を俯瞰する努力

“ 相手に協力してもらうために、「褒める」ことや「気持ちを汲む」ことも必要でしょう。自分にとって難しいことではありますが、仕事の目的を果たすための解決策になります。相手の変化に気づき、必要に応じて言葉や行動で表すと人間関係も良くなります。”


部下の変化に気づくことは心の健康の配慮でもある。心の健康を守ることは「働きやすさ」においてもっとも大切なことだ。管理監督者として「いつもと違う」部下に早く気付くのも仕事のひとつだろう。
次のようなサインに注意しながら部下を見守ろう。
 〇 遅刻、早退、欠勤が増える
 〇 休みの連絡がない(無断欠勤がある)
 〇 残業、休日出勤が不釣合いに増える
 〇 仕事の能率が悪くなる。思考力・判断力が低下する
 〇 業務の結果がなかなかでてこない
 〇 報告や相談、職場での会話がなくなる(あるいはその逆)
 〇 表情に活気がなく、動作にも元気がない(あるいはその逆)
 〇 不自然な言動が目立つ
 〇 ミスや事故が目立つ
 〇 服装が乱れたり、衣服が不潔であったりする

(出典:独立行政法人 労働者健康安全機構 / 職場における心の健康づくりrelax~労働者の心の健康保持増進のための指針~)



 上司が変わるといっても、業務上妥協できないこともあります。しかし上司側の意見への説得は、人間関係を悪化させる原因になり得ます。雑な説明で協力は得られません。

慎重に丁寧な話し合いを心がけてください。短気を抑えて笑顔で接することはとてもエネルギーがいりますが、相手に安心感を与えます。


部下にとって「働きやすさ」と「働きがい」のある職場は、結果的に自分にとっても働きやすい環境になるはずだ。相手を変える方がもっとエネルギーが必要で、難しい。だから自分が変わろう。


この記事のまとめ 

● 職場の協力体制は、上司(評価者)と部下(被評価者)の良好な関係を生み、最終的に信頼関係を築く。

● 上下・左右間のコミュニケーション総量が協力しあう風土をつくる。

● うまくいかないときは意思の疎通が不十分。部下は思っている以上に上司の顔色をうかがっている。一緒に考える話し合いの機会を大切にしよう。

● 部下の「いつもと違う」点を見守りながら、よりよい環境のために自分が変わる意識を持とう。
(執筆:佐藤志乃 / 制作:一条恒熙)