2020.01.14 15:00
ペットと災害に備える
ペットの迷子や避難所トラブルを未然に防ぐ方法とは?

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「ナイス犬しまい」というハッシュタグをご存知だろうか。台風の際に、室外で飼われている犬をはじめとするペットを家のなかに「しまう」という考えからきている。ペットを屋内で保護し、被害から守ろう、という呼びかけである。

2019年は、災害の多い年だった。9月9日に上陸した台風15号は、千葉県を中心に、都心の交通網にも数日間影響が及ぶほど、被害が大きなものだった。避難指示は4県8,613人に出され、実際に避難したのは1,128人にのぼる。


10月12日に上陸した台風19号は、東北地方・関東地方・甲信地方と広範囲に被害は広がった。避難指示は21府県22,525人に出され、実際に避難したのは13,579人
15号よりも19号の避難人数の割合が増えているのは、そうした情報を受けての結果ではないか。繰り返し大きな台風を迎える中で、避難所の様子や現地で必要なもの、もっと早くからやっておくべきだったことなど、多くの情報が発信された。避難や準備の大切さを痛感した人も多い。「ナイス犬しまい」も、こうした思いから生まれたものだろう。

また2011年の東日本大震災では、青森県で少なくとも 31 頭、 岩手県で 602 頭、福島県では約 2,500 頭の犬が震災により死亡したことがわかっている。無事に災害を逃れた場合でも、飼い主がわからなくなってしまったペットの保護や、避難所でのペットの受け入れなど、問題はいくつもあった。

ペットを飼っている人は、避難で離ればなれになりたくない、自分で世話をしなくてはいけない、という思いが当然あるだろう。家族と同じようにペットも最優先で避難ができるように、事前にできることはなんだろうか。

ペットと防災を考えるため、阪神・淡路大震災の体験記『阪神大震災と7匹の猫』の著者である大鳥喜平さん(医学博士 / 大阪府医師会会員)に話を聞いていく。

 

パニック時のペット同行避難、
不安を和らげるために必要な備えとは?

大鳥さんは、屋外で飼われているペットを室内に入れ、安全を確保するのはもちろんのこと、人間の防災と同様に準備をしておく必要があると話す。

 

<ゲスト紹介>

大鳥喜平(おおとり・きへい)
医学博士。大阪府医師会会員。
阪神大震災と7匹の猫の著者。


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“ 大雨や台風が来たとき、普段外飼いのペットをそのまま屋外に放置することは、たいへん残酷です。災害時にペットも一緒に避難できるよう考えるのは、飼い主として当然のことではないでしょうか。

いざというときを想定した準備は、飼い主としての義務です。移動用ケージをはじめとするモノの準備だけでなく、使い方や避難経路など、確認することはたくさんあります。できることならペットと一緒に避難訓練をしてみてほしいです。前もって避難計画を立てておきましょう。


食料・飲料・生活必需品などの備蓄は、3日分必要だといわれている。大規模災害発生時には1週間分だ。人間と同様に準備しておこう。

ペットは人間以上に環境の変化に敏感で、混乱状況下ではトイレを我慢する、食事・水分を摂らないなどが原因で体調を崩しやすい。安心できる食べ慣れたもの、使い慣れたものを用意しておこう。



“ また災害時は衛生環境が整わず、伝染病に感染する可能性があります。予防接種を強化する必要もあるでしょう。”


昨年の台風19号上陸時、避難所によってはペットとの同行避難を断られた人もいるという。避難所では、ケージやエサ・水の用意やワクチンの摂取など、ペット受け入れの条件がある。条件は市区町村によって異なるため、事前に住んでいる地域のホームページを確認しよう。


殺処分される被災地の迷子ペット、
飼い主と自治体がするべき備えとは?

準備や避難経路は自分で確保すべきであるが、その先は一人でペットを守れるだろうか。避難所での生活は、自分や家族以外に大勢の人がいる環境で生活しなければならない。ペットの鳴き声やしつけ不足などがきっかけで、避難所でトラブルが発生したケースもある。自治体と連携する必要についても、大鳥さんは話している。


台風の上陸が予想されている地域などで避難勧告の可能性が考えられる場合、早めの避難が重要です。さらに私は、前もってペットを安全な地城に避難させておくことはできないか、と考えています。

予測できる災害が来たとき、早い段階でペットを預けられる避難施設があると飼い主も安心でしょう。岩手県のペット保融施設などを参考に、自治体とペット保護のノウハウのある団体が連携する体制づくりが必要です。


東日本大震災の際、15 都県市のうち、東日本大震災発災以前より、避難所でのペット受け入れについての方針を定めていたのは7自治体であった。159 区市町村のうち、東日本大震災以前より、避難所でのペット受け入れに関する方針を定めていたのは 41 自治体で、このうち 5 自治体は受け入れ不可とする方針を定めていた。
また地域によっては、犬・猫・小鳥その他小動物に限るなど、受け入れるペットの範囲が決まっている場合がある。珍獣・特殊動物の飼い主は通常より入念な準備が必要だ。このような実情があるため、ペット同行避難が難しい場合、ペット専用の施設が必要だと大鳥さんは話す。


 施設の設置には預かり費用や補償などさまざまな問題が発生すると思われます。保護の質も大切ですから、多方面に考えて検討しなければならなりません。

悲しいことに今の日本は、多くのペットが殺処分されている現実があります。ペットに関しても、人間と同じように自治体や法律の力を借りて進めるべきことがあるでしょう。


平成30年の犬、猫の殺処分数は38,444頭に及ぶ。5年前に比べて3分の1までに減少はしているが、被災地で飼い主が見つからなかったペットが殺処分されている現実をもっと多くの人々に知ってほしい。

飼い主側も、ペットの迷子で悲しい思いをしている人が多くいるという。迷子になってもだれかに助けてもらうため、つぎのような対策ができる。
1 首輪に迷子タグ(住所・名前などを書いたもの)を付ける。
2 マイクロチップを埋め込む。
3 非常用持ち出し袋にペットの写真(印刷したもの)を入れておく 。(避難所で人に尋ねるとき、目撃情報を募るときに使える。)
ペット防災についての課題はまだまだ多い。今後のさらなる情報発信・共有がペット防災について考えやすい時代をつくっていくのではないだろうか。飼い主に危険に対する認識の差があることも問題だが、ペットを飼った経験がない人にも問題意識を持ってほしい。

なぜなら動物と人間は、どちらも比べようがない尊い命であり、緊急時には助け合いが必要不可欠だからだ。


ペットは高齢者や子供のように、最優先で避難させるべき存在です。危険な被災地でのペットの扱いには、見直すべき点がたくさんあります。ペットと一緒に防災の準備をすることで、自治体が動くきっかけとなってくれることを望みます。”



この記事のまとめ 

〇 災害時、屋外のペットは屋内で保護し、避難は早くすませよう。

〇 ペットも人間と同じように、避難することを考える。食料や水の確保に加えて、避難経路の確認などペットと一緒に避難訓練をしよう。

〇 避難所のペット受け入れ条件(種別の限定、ワクチン接種の有無など)は地域によって異なる。事前に住んでいる地域のホームページを確認しよう。

 

〇 災害が予測できる場合、前もって安全地域にペットを預けることも視野に入れよう。

 

〇 飼い主が見つからない迷子ペットは殺処分されてしまう。大切な家族を失う前に、できるかぎりの迷子対策をしよう。

(執筆:佐藤志乃・林幸奈 / 制作:一条恒熙)