2020.01.21 14:00
なぜ政治の話はタブーなのか?
20歳代の投票率は30%、「難しくてよくわからない」無関心な若者に知ってほしい損をしないための話

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「商売のときは政治・宗教・野球の話はするな」とされていることをご存じだろうか。なぜこの3つの話題がタブーなのかを考えてみると、タブーというよりも話さない方が無難であると言った方が正しい。

自分と違う意見を支持する人たちと言い争いたくない、そこから関係を壊したくない、という思いからきているのだろう。空気を読み、協調性を重んじる日本人らしい考えだ。

日本人は幼いころからそうした空気を察知し、若者は政治について周囲と話す経験がないまま大人になる。インターネット上の意見や街中で行われる選挙活動を見ても、選挙が自分の生活に結びついている実感がもてない。どこか自分とは関係ない世界のように思ってしまうだろう。

その結果、若者は政治に無関心になってしまった。国政選挙の年代別投票率がその現状を示している。

【平成29年10月に行われた第48回衆議院議員総選挙】

〇 10歳代が40.49%
〇 20歳代が33.85%
〇 30歳代が44.75%
(全年代を通じた投票率は53.68%)

【令和元年7月に行われた第25回参議院議員通常選挙】
〇 10歳代が32.28%
〇 20歳代が30.96%
〇 30歳代が38.78%
(全年代を通じた投票率は48.80%)

<参考:総務省 / 国政選挙の年代別投票率の推移について>

令和元年の参議院選挙では投票率50%を割り、予測を大幅に下回った。平成28年に選挙権年齢が20歳以上から18歳以上に引き下げられたが投票率は低下しており、10~30代の政治への無関心は深刻な問題だ。有権者の約半分が投票をしていないこの現状、見て見ぬふりを続ければ、日本の未来があぶない。
あぶない理由

〇投票率が高い高齢者向けの政策が優先され、若者が得をしない税金の使い道が増える
〇組織票(宗教団体・労働組合など各種団体の票)が有利にはたらく

政治について難しくて自分の意見がまとまらない、知識不足のため人前で意見を言うのが難しい、そう思う人もいるだろう。


そこで二人のゲストから話を聞き、政治を少しでも身近に感じるためにできることはなにか考えていく。
無難を選んで生きる社会は平和なのか?

瀬戸岡紘さん(元駒沢大学経済学部教授)は、日本人が政治を語りたがらない理由は2つあるという。

 

<ゲスト紹介>

瀬戸岡紘(せとおか・ひろし)
元・駒沢大学経済学部教授。
アメリカ 理念と現実: 知っているようで知らないこの国を深読みする の著者。


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“ 1つ目に、日本は社会の安定度が諸外国にくらべて高いために、政治のことを話題にしなくて済んでいるからです。たとえばアメリカでは、業種間・地域間・階級間などの格差が大きく、社会の安定度が低いため、政治について多く語られます。

2つ目に、世間に政治の話を抑制する空気が漂い、政治家の態度がそれを助長しているからです。とくに学校の先生はリスク回避の意識が強く、踏み込んだ政治の話を避けます。

社会について学ぶ場であるはずなのに、子供たちは理由がよくわからないまま、なんとなく政治の話はよくないと思ってしまうのです。どこか浮世離れした政治家の行動や発言が、私たちの生きる社会とは別物だと思わせるのも問題です。”



世界的に見れば日本は平和な国で、日本にいる私たちもそう感じている。周囲にあわせて過ごしていれば、争いもなく静かに暮らしていけると思っている人が多い。未来の平和よりも、自分が今の平和な空気を壊してしまう方が恐ろしいことなのだ。しかし日本人は、これまで政治の議論を繰り広げてきた長い歴史があると、瀬戸岡さんは話す。


“ 遡ると、『古事記』にも庶民の政治に対する気持ちが詠まれている。現代では1960年代末~70年代初頭の第二次安保闘争のときだ。将来を大きく左右する政治決戦時、日本の国民は大きく議論し、行動しました。それぞれの時代で庶民が政治と向き合ってきたからこそ、今の日本があるのです。


未来のための選択を他人任せにしていると、自分が思ってもみなかった方向に進んでからことの大きさに気づくかもしれない。しかし、人はだれもが未来のために行動する力を持ち合わせている。政治は本来、自分が生きていく世界をよりよくするためのものだ。勇気を出して声を上げれば、大きな権力を動かすきっかけになると信じている。


政治について「なんとなく、黙っているほうが無難だ」という思い込みは捨てましょう。日本は思想・信条の自由があるといいながら、意見がぶつかったあとでも、気まずくならずに親しい関係でいるのが難しいことがあります。社会のあり方を決めるのは一部の権力者ではなく、 国民一人ひとりです。これをあたり前だと認識することが、市民社会・民主主義のあるべき姿なのです。


お金への影響を知り、自分にとって損か得かで考える

政治は他人事ではなく、自分の生き方を決めるものだ。しかし、若者がそれを実感する機会は少ない。ニュースで取り上げられる政治家の下世話なゴシップが政治への期待を裏切り、世間にあきらめ感を漂わせる原因のひとつになっている。

政治に対して難しさを感じている若者は、自分にとって損か得か、シンプルに考えてみるのもよいだろう。佐竹忠さん(会社経営)は、経済を見ることで政治を身近に感じることはできないかと話す。

<ゲスト紹介>

佐竹忠(さたけ・ただし)。
会社経営。
我総理大臣なりせば: 日本の未来のために』の著者。


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 自分のお金で株式投資をすれば、経済が見えてきます。株価の動きは日々変化し、自分の利害に直結するため、必然的に経済の動きが気になるでしょう。日々動いていくものが経済であり、その背景にあるものが政治なのです。生活をよりよくするために自分ができること=選挙なのだと考えるはずです。”


株式投資は最低10万円あればはじめられるという。決して安い金額ではないが、自分で働いてお金を稼ぎ、モノやサービスに代金を支払うだけではわからない、お金と社会の関係が見えてくる。

政治の動きは景気を左右し、サービスや金銭の流れを変える。戦争や自然災害、海外情勢などもモノの需要や供給を変え、経済に動きを与える。私たちの生活に欠かせない「お金」を「政治」と結びつけて考えれば、これまで流し見ていたニュースの情報から実感をともなった感想が生まれるだろう。


“ 政治がおろそかになれば、国家は衰退します。国民が政治に関心を持たなければ、政治家はどんどん怠慢になっていきます。表面上は平穏な毎日に考えることをやめた国民もいることでしょう。

しかし、世界情勢は大きく変化していく予兆があり、日本にも影響は及ぶでしょう。変化を察知し、自分自身でどうしたらいいか考えることが大切です。そのためには政治や世界の動きに関心をもち、政治家の動きに注目する必要があります。


「自分が政治をつくっていく」という意識が大切であると、佐竹さんは言う。


小さなことでも自分の生活と関係があることから話をひろげ、疑問は言葉にしていきましょう。近年の低い投票率のままではいけません。民主主義の日本は、すべての国民が政治をつくる権利をもっています。それが選挙ですから、自分のためにその権利を使ってください。”


政治も経済も、同じ日は2度とこない。「なんだかおかしい」と大きな流れに気がついてからでは遅く、日常の小さな違和感に気がつくことが大切だ。未来の動きをイメージし、今できる最善の行動はなにか考えてみよう。

国民に与えられた権利である「選挙権」の使いどきは今だ。


この記事のまとめ 

● 政治の話しなくても済むからといって未来が平和だとは限らない。

● 政治の話を抑制する空気が、
選挙に行かない無関心な若者を生み出した。

● 無難を選択して一次的な平穏を得るより、意見がぶつかったあとでも気まずくならない本当に親しい関係を築く方が尊い。

● お金の動きを知れば、実感をともなった政治の重要性がわかる。

●小さなことでも自分の生活と関係があることから話をひろげ、疑問は言葉にしていこう。

● 民主主義だからこその政治をつくる権利を使い、自分のためになる選択をしよう。その選択肢のひとつが選挙である。

(執筆:佐藤志乃・林幸奈 / 制作:一条恒熙)