2020.03.10 13:00
「とりあえず転職」では、変化も成長もできない?
新しい環境でも結果が出せるビジネススキルとは

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「会社に入れば安心」という考えはもう古く、終身雇用は難しい時代とされる。
新卒の社員は、入社時点で転職を考えている人もいるそうだ。

2019年の転職率は、男女ともに15~24歳がもっとも高く、12.3%。しかし以前まで「転職は35歳まで」と言われていたが、最近では40・50代の転職も増えている。転職率は45~54歳は3.6%。55~64歳は4.4%で、2009年から1%(人数でいうと9万人)増えている。
<参考:総務省統計局/労働力調査(詳細集計)2019年(令和元年)平均(速報)結果の概要>

平成25年高年齢者雇用安定法の改正によって、希望者は65歳まで勤め続けられる。再雇用で定年後も仕事を続ける人も多く「能力を活かし、長く働きたい」と、転職を考える人が増えた。一方で、
◯長く会社にいるものの、システムの変化に対応できない
◯過去に身につけたスキルが活かせない
◯若手と意識にズレがある
などの理由から、会社でうまく仕事ができない、居心地が悪いと感じている中高年も増えている。

「若いから大丈夫」と思っていると、いつの間にか時代や技術の発展に追いつけなくなるかもしれない。時代や職場が変わっても、活かせるスキルはどんなものか?

さまざまな世界で仕事をしてきた3人のゲストから、話を聞く。


スキルを活かし、伸ばせる職場を見つけるには?

仕事を探すときに見るべきは「できること」「やりたいこと」「求められること」

北三平さん(NPO法人利根川流域交流会監事)は1960年1月、日立製作所の課長から中途採用の紹介があり、採用試験に受かったものの、入社をためらっていた。



 そのころは中小ながら将来性のある企業で、楽しく仕事に励んでいましたし、3月に結婚式を控えていました。何度も紹介者とやり取りをしましたが、いつも「来てほしい」と言われます。

その年の8月、課長と話をしました。実際に対面すると、会社や働く人のイメージががらりと変わり、入社を決めたのです。


<ゲスト紹介>
北三平(きた・さんぺい)。
NPO法人利根川流域交流会監事。
ユートピア: クルマのない村、西益津村の物語』の著者。

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また北さんは現在、所属するNPO法人で、国交省から依頼されたバイオトイレの実証実験をしている。

バイオトイレとは…好気性微生物の活動によって排泄物を分解する、水をほとんど使わないトイレ。

<北さんの行った研究>
◯河川1.5kmに3台、トイレを設置
◯週2回の清掃
◯チェックリストによるデータの収集



“ 大学教授に交じって研究に加わりましたが、メーカーで培ったことが役立っていると感じます。研究報告会や国際シンポジウムに参加でき、特許も取得できました。


「できること」「やりたいこと」「求められること」が合致する場所によって、仕事で輝ける。また挑戦を続けられる人は、新しい場所でもどんどん成果を出せる。自分のスキルを、より活かす方法を常に探求しよう。

仕事は継続が評価される。しかしスキルアップや経験を増やすためなど、前向きな理由から転職をする人も多い。進むべき道を迷っている人に、北さんはエールを送る。


 やる気になれば、なんでもできる。さまざまな挑戦をした結果私は、経験したことのなかった多くを学びました。他の道と比較なんてできませんが、この道を選んで本当によかったと思っています。


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他者に負けないサービスができる力とは?

技術の発展が早く、新しいものがどんどん生み出される今、他の人と差をつけるのが難しいこともある。しかし仕事で求められるのは、技術的なスキルだけではない。光山忠男さん(元ソニー(株)勤務)は、「対応力」によって問題を解決した経験があった。


 電機メーカーに勤務していたころ、物流会社に出向するよう言われました。会長から「秋葉原の量販売店に、昼締切の注文を、翌日の昼までに届けてほしい」との指示。一日半の配送をすでに企画・現場で検討をしており、そのままでは半日の壁が破れません。


<ゲスト紹介>
光山忠男(みつやま・ただお)。
ソニー(株)に勤務、1993年定年退職。
バビロンの空中庭園』の著者。

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光山さんは現場の監督と協議を重ね、「個々の量販店の注文を、すべて中央流通センターから直接届ける」という対応をとった。


 配送車は増えますが、販売会社配送業務が大幅に削減されます。さっそく、会長に報告し実施することになりました。実験は成功し、量販売店・販売会社の現場・会長に感謝されました。


今までにないパターンを推測し、解決することは、人工知能にはできないことだという。価格やスピードだけでなく、臨機応変なサービスによって、類似した他のサービスとの差別化を測れる。もちろん、仕事の質も重要だ。

早くていねいな仕事を続ける中で、「対応力」を身につけよう。新しいことに挑戦するには、不安はつきもの。新鮮な気持ちで挑戦しようと、光山さんは言う。



はじめてやることは、誰にとっても冒険と未知への挑戦です。「失敗は賞賛」という言葉は、仕事に追われる私たちにこそ、必要ではないでしょうか。


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どんな職場でも円滑な人間関係を築くには?

「対応力」と同じく、どこでも求められるのが、「コミュニケーション能力」。職場の人間関係が理由で転職しても、原因がわからないと似たような後悔をすることもある。小川郷太郎さんは外務省外交官として40年ほど勤め、そのうち合計23年を7カ国で過ごした。問題や課題があるときも、両立した立場で解決策をさぐる姿勢が感謝されたという。


 東南アジアのある国の、日本大使館で勤務していたころ、現地の職員から給与の引き上げを要求されました。私は現地の物価動向や現地職員の給与状況などを調べて示し、説得に努めます。

外務本省は引き上げに応じ、当初の希望通りまではいかないものの、現地の人たちは喜び仕事もより励んでくれました。


<ゲスト紹介>
小川郷太郎(おがわ・ごうたろう)。
元外務省外交官。
世界が終の棲み家: 外交官の仕事と新たな日本の国のかたち』の著者。

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当初、外務本省はよい返事をしてくれなかったという。小川さんは現地職員の事情をよく知っていたからこそ、対応ができた。仕事の人間関係は、大人数での協力やチームプレイが必須となる。多方面から物事を見て、相手に寄り添って意見を聞こう。


“ 戦争や紛争も多くの場合、相手国に対する誤解や無知、偏見が原因だと感じます。たとえば日韓問題だって、日本で報じられているのはほんの一部。日本にいてものを考えるだけでは、真相はわからない。会って話をするのが一番です。


小川さんの著書『世界が終の棲み家』は、「人間の感情は、世界のどこでも基本的に同じ。会ってつきあえば心が通じる」という確信からタイトルをつけた。お互いを理解してつきあえる人は、どんな場所でも人間関係を円滑に進められる。
平等な目線を大切にし、相手ときちんと向き合おう。



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この記事のまとめ 

✔︎ 若者だけでなく、40代50代も転職を考え、長く働く時代。

✔︎ 
職を探す上で大切なのが、「できること」「やりたいこと」「求められること」

✔︎ 臨機応変な対応力は、他者との差別化に役立つ。

✔︎ 平等で多角的な視野によって、どんな環境でも人間関係はうまくいく。

(執筆:林幸奈)