2020.02.18 13:00
あなたもいずれ介護する。
ストレスと戦う未来。なにを準備すべきか?

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高齢化社会の今、介護は大きな問題となっている。

いずれ自分の親に必要になるかもしれない、とは思っていても、身近な問題としては考えたくない、というのが本音だろう。

介護サービス受給者(現物給付平成30年11月サービス分、償還給付12月支出決定分)の人数は、居宅(介護予防)サービス受給者数は、378.6万人。地域密着型(介護予防)サービス受給者数は87.5万人、施設サービス受給者数は94.4万人となった。
<参考:厚生労働省/介護保険事業状況報告の概要(平成31年1月暫定版)>

居宅サービス…在宅の人を対象とした介護サービス

地域密着型サービス…市町村の指定・監督のもと、介護度が重くなっても住み慣れた地域で生活できるようにするサービス

施設サービス…介護保健施設に居住して受けるサービス

介護は肉体的にも精神的にもストレスが多く、苦労や悩みがつきないイメージがある。平成28年の調査によると、介護者のうち、日常生活での悩みやストレスが「ある」と答えた人は68.9%。原因は、男女ともに「家族の病気や介護」が 73.6%・76.8%ともっとも高い。
<参考:厚生労働省/平成28年国民生活基礎調査の概況 IV 介護の状況>


それだけではなく、介護の費用や介護者自身の健康など、介護者の悩みは多岐にわたる。身近な人に介護が必要になったとき、気をつけるべきことはなんだろうか。そもそも介護には、なにが必要だろうか。
二人のゲストから話を聞き、考えていく。


要介護とはどんな状態を指すのか

要介護認定とは、65歳以上の高齢者を対象に、どの程度の介護が必要なのかを判断する基準。判定は、市町村に設置される介護認定審査会でされる。申請書・保険証が必要になり、申請をしてから結果が出るまでは1か月程度かかる。
基準はそれぞれ、以下の通りになる。

〇 要介護1
・歩行が不安定
・身のまわりの世話に、見守りや手助けが必要
・混乱や理解低下がみられることがある。

〇 要介護3
・身のまわりの世話、
歩行、排泄が自分ひとりでできない
・いくつかの不安行動、全般的な理解の低下がみられることがある。

〇 要介護5
・寝たきりの状態
・意思疎通が困難



また、要介護(要支援)認定者数は、平成31年1月末時点で656万人にのぼる。
<参考:厚生労働省/介護保険事業状況報告の概要(平成31年1月暫定版)>


特別養護老人ホームなどの施設は、待機期間がある場合でも、申し込んだ順ではなく介護が必要な度合いによって優遇される。日常生活が困難になった・サービスを受けたいという場合は、はやめに申請をしよう。


「条件があわず入居できなくなった」とならないための施設選び

豊田勝良さん(医学博士、鍼灸師、あん摩・マッサージ・指圧師、薬剤師)の母親は、85歳で認知症気味になり、介護が必要になった。


<ゲスト紹介>

豊田勝良(とよだ・かつよし)。
医学博士、鍼灸師、あん摩・マッサージ・指圧師、薬剤師。
伊勢路の女』の著者。


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“ 兄夫婦の家で生活していましたが、近所の人々とトラブルが多くなり、私の家で世話をしてくれと依頼があったのです。当時私は自宅兼店舗で薬局と鍼灸院を営んでおり、介護をする余裕はありませんでした。

幸いなことに、講師をしていた看護学校が運営する、介護老人保健施設に入ることができました。しかし、介護老人保健施設の入居は、三か月までとなっていたのです。”


介護施設には社会福祉法人や自治体が運営する公的施設と、民間事業者が運営している民間施設がある。その中でも、必要なサービスや介護度などによって、細かく役割・条件がわかれている。

介護老人保健施設は、医師による医学的管理の下で、在宅復帰を目指すための施設。自宅に戻るためのリハビリを目的としているため、入居期間は原則3~6ヶ月となっている。


その後、他の施設を探しましたが、どこも満員で見つかりません。そうこうしているうちに、私が誰だかわからなくなるほどに、母の認知症は進みました。施設の附属病院に入院し、二か月後に、誤嚥性肺炎で他界したのです。

 
公的施設は、費用の安さや経営面の安定などから人気が高く、入居申し込みをしても待機期間がある。その期間が1年以上というケースも。厚生労働省によると、平成31年4月1日時点における特別養護老人ホームの入所申込者は、292,487人に及ぶ。
<参考:厚生労働省/特別養護老人ホームの入所申込者の状況>

また「自立者向けの施設にいたが、介護が必要になった」「認知症になってしまい、今いる施設での受け入れが難しい」などの理由で、施設の利用が不可能になるケースもある。介護や施設の利用は、長期的な目線で考えよう。

 

介護者がボロボロになってしまう、老々介護の現状や対策は?

豊田さんは、介護をする側の高齢化についても話している。


人生百年時代に入り、少子高齢化が進む社会です。介護する人も介護される人も高齢者という、老々介護という状況は増えており、厳しい社会になることが予想されます。


老々介護は、65歳以上の高齢者を同じく65歳以上の高齢者が介護している状態。2016年の調査では、介護者のうち65歳以上の割合は54.7%であることがわかった。
<参考:厚生労働省/平成28年国民生活基礎調査の概況 IV 介護の状況>

また老々介護の中でも、認知症の要介護者を、同じく認知症の症状がある人が介護する、認認介護がある。この状況では介護者が自身の認知症の進行に気がつかず、危険を判断するのが遅れる。


介護は、一人だけではどうにもならないことがあります。今後はいっそう、公的な施設の充実や人材確保、そして経済的な援助が欠かせなくなるでしょう。


「家族だから」と責任を背負いすぎて、自分がボロボロになっていくのに気づかず、介護を続ける人がいる。第三者による手助けやアドバイスが、時には必要だ。家族を施設に預けず在宅で介護をする場合も、居宅サービスを利用し、負担を軽減できる。

また、市区町村や社会福祉法人・医療法人・NPO法人などにも、介護に関する相談窓口がある。一人で抱えず、誰かの手を借りることも忘れずに。


責任の押しつけや介護離婚で、家族がバラバラにならないためには?

久保井勝巳さん(作家)は、介護によって家族の気持ちが離れてしまうことを案じている。

<ゲスト紹介>

久保井勝巳(くぼい・かつみ)
作家。
亡妻との追憶: 共に生きた40年の日々』の著者。


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親と別居している場合、方法の一つとして夫婦のどちらかが別居生活をしたり、実家に通うことが必要となります。離れている時間が増えると、夫婦の崩壊へと流れる可能性が大きいものです。かといって、都心の住居での共同生活も難しい。


実は介護離婚という言葉があるほど、介護により夫婦がすれ違うケースは多い。
主な原因
◯ 介護の分担ができていない(相手の親に介護が必要な場合)
◯ 義理の親の介護が辛い
◯ 義理の兄弟・親との人間関係(自分の親に介護が必要な場合)
◯ 家族に迷惑をかける

また、「介護は長男、あるいは同居している家族がするべき」「家に長くいるのだから、介護は女性が主体となるべき」といった思いこみによって、介護から解放されない人がいる。兄弟や親戚を含めて、家族でしっかりと話をし、協力的に分担することが必要だ。介護をする側とされる側で、意見が一致しない場合もある。

久保井さんは介護をする側だけでなく、介護をされる側の気持ちも考えるべきだと言っている。



長く続く病状・介護生活は、介護をする周囲の人もそうですが、介護される側もとても辛いものです。子どもに心配や迷惑がかからない生活を、誰しも願っていると思います。大きな負担をかけることは親として忍びないですから。

病とともに自力で生活ができればいいのですが、次第に自分がコントロールできなくなってしまうのです。

 

家族に迷惑をかけてしまう申し訳なさ、環境や周囲の人の対応が変わってしまうことへの不安など、介護をされる側も悩みは多い。物事の判断が難しくなったから、ほかの家族ですべて決定しようという親切が、さらに戸惑いを与えることもある。

高齢者を置いてけぼりにせず、一緒にどうしていきたいかを話そう。



この記事のまとめ 

✔︎ 要介護認定とは、どの程度の介護が必要なのかを判断する基準。

✔︎ 
介護施設は目的によって種類があり、入居期間や条件が決められている。入居まで待機期間がある場合も。施設を選ぶ際は、長期的な利用も考慮しよう。

✔︎ 老々介護や認認介護といった、介護する側の高齢化が問題視される。「自分がどうしてもやらなくてはいけない」という思いこみはやめて、サービスを利用した無理のない介護を考えよう。

✔︎ 介護は家族全員で分担すべき。パートナーや兄弟も交え、家族でしっかりと話をしよう。また、介護される家族の気持ちも忘れない。


(執筆:佐藤志乃・林幸奈)