2020.03.03 10:00
怒らない子どものしつけ
4月から児童虐待のための法律が改正。「人前で叱れない」と怯える親が、子どもを注意するには?

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自分の子どもがマナーを守れなかったり、人に迷惑をかけてしまったりしたとき、きちんと叱れますか? 

子どもを叱れない親が増えています。原因は人前で子どもを怒鳴る・強い言葉をかける、といった行動が、虐待と見なされるのを恐れていること。

実際に平成30年度中、全国212か所の児童相談所が児童虐待相談として対応した件数は159,850件。これまでで最多の件数となりました。
<参考:厚生労働省/子ども虐待による死亡事例等の検証結果等について(第15次報告)>

また、昨年6月19日に改正児童虐待防止法・改正児童福祉法が成立し、今年4月から施行されます。児童のしつけに際する体罰の禁止、児童相談所の体制強化のため、厳しすぎるしつけについても、今以上に問題視されるでしょう。
<参考:厚生労働省/児童虐待防止対策の強化を図るための児童福祉法等の一部を改正する法律案の概要>


ちょっとしたことでも、虐待として通報されるかもしれない……と、子どもを注意できない親が多いのです。

しかし、子どもがマナーを守れないまま成長してしまうと、多くの人に迷惑をかけてしまいます。子ども自身が困るだけでなく、「しつけは親の役目」と考える人も多いため、親も責任が問われるでしょう。実際に、子どもが多くの時間を過ごすのが家庭です。親や家庭は、外でのふるまいに影響を与えます。


「そんなことをしてはダメだ」と叱るだけが、しつけではありません。強い言葉や態度を見せると、子どもは嫌になり、大人の言葉を聞かなくなります。

子どもにしっかりと伝わるしつけとは、どんなものか。二人のゲストから聞いていきましょう。


頑張る親が陥ってしまう「押しつけ」と「しつけ」の違いは?

小泉秀人さん(都立高校非常勤講師)は、「礼儀は社会生活を気持ちよく送るための知恵で、それを教えるのがしつけである」と言う。


<ゲスト紹介>

小泉秀人(こいずみ・ひでと)。
都立高校非常勤講師。
学校が育てた「生きる力」: 素敵な若者たちへのインタビュー』の著者。


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親が一方的に「しつける」という発想には、反対です。「しつけ」が「押しつけ」になってはいけません。親もまだ人間として不完全であり、子どもはそれを見抜きます。不完全な人間である親が、さも自分は完璧であるかのように礼儀を「押しつけ」たら、子どもも、大人への不信感を募らせながら育ちます。


子どもが幼ければ、親もそれだけ経験が浅いことになる。不完全な自分の思いを押しつけるだけでは、しつけにはならない。言葉で言うだけでなく、やって見せる。体験したことを「こうしてもらうと気持ちがいいから、ほかの人にもやってみよう」と、子ども自身が思える経験が大切だ。


お互い不完全な人間同士である親子がリスペクトしあい、互いに成長する、という関係性を大切にしましょう。具体的には、
◯ 目をあわせたあいさつ
◯ 相手を尊重した言葉遣い
◯ 困っていたら助ける
◯「すごい」と思ったら褒める

などを、親子で一緒にやっていくのです。

 
幼い子どもには一度にたくさんのことを教えず、一つずつ確実にできるように教えていこう。また、できるようになったことは、どんなに小さなことでもしっかり褒める。褒めることによって自信がつき、もっと新しいことができるようになりたい、と言う意欲が増す。子どもと一緒に成長することを、小泉さんは勧める。


“ 親子の関係性から自然に身について、人格の一部として結晶した礼儀こそ、接する人の心をうつものです。そうした子どもの姿を通じて、親も成長していくのではないでしょうか。”


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「褒め」と「叱り」のちょうどいいバランス

武産合氣道会八段師範をしている秋山圭介さんは、子どもの指導をする場面も多い。


<ゲスト紹介>

秋草圭介(あきくさ・けいすけ)
元新聞記者、武産(たけむす)合氣道会八段師範、宇都宮支部長、居合道無双直伝英信流三段。
遺恨の刃: 番外紅白試合』の著者。


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 家庭でできないしつけを、武道の世界に求めている保護者は多いです。道場では、靴は爪先を外に向けて脱ぐ、道場の出入り時には必ず一礼する、が有無を言わせぬ掟です。稽古中、ふざけてばかりの小学生を「やる気がないなら今すぐ出て行け!」と怒鳴りつけたことがあります。

子どもたちはシュンとなりましたが、保護者からの抗議はありません。むろん、態度が良いときには褒めます。オーバーに思えるほどに。子どもは褒められると俄然、やる気を出します。私の方針は「褒め7、叱り3」です。


叱るポイント
◯ 感情的にならない
◯ 手をあげない
◯ どうして駄目なのか、誰が困るのかなどを具体的に説明する
◯ 子どもの気持ちを肯定する
◯ 強く叱るのはその時だけ。後で引きずらない
◯ できるようになったら、褒める

「自分の思い通りにしたい」という一方的な押しつけでは、子どもには伝わらないし、心理的暴力と同じことだ。また、コミュニケーションの9割は声と表情で決まるという。子どもが怒られていると感じるような、強い口調や表情にも注意しよう。多くの子どもを指導する秋草さんは、しつけのできない家庭の多さを案じている。

本来、しつけは学校や外部の活動ではなく、家庭ですべきものだと思います。ライオンは親から狩りを習い、ラッコも親から教わるまでは泳げません。人間も生まれて最初に出会うのは親であり、自立まで最も長く過ごすのは家庭です。

家庭は人格形成に大きな影響を与えるのです。幼児虐待で摘発される若い親の多くは、虐待被害者だと指摘されています。



家庭によって、しつけの仕方や厳しさは異なる。親だけの基準で、「これでは子どもにとって、厳しすぎる」と判断するのは、難しい場合もあるだろう。周囲から見て、しつけなのか虐待なのかわからないというケースは、児童相談所への相談も考えよう。

児童相談所虐待対応ダイヤル「189」は、近くの相談所に連絡ができる。通報は匿名でも可能。昨年12月からは、無料で通話ができる。
<参考:厚生労働省/児童相談所虐待対応ダイヤル「189」について>

しつけはしつけとして、子どもに伝わらないと意味がない。感情に流されず、子どもが怖がらない態度と言葉で叱り、褒めることを忘れずに。


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この記事のまとめ 

✔︎ 親自身も、一人の不完全な人間。一方的に自分の考えを押しつけず、自分の未熟さを自覚し、子どもと一緒に成長しよう。

✔︎ 
子どもを叱るときは、相手を肯定しつつ伝わるように叱る。できるようになったこと、良かったところは褒める。バランスは「褒め7、叱り3」。

✔︎ 長い時間を過ごす家庭が、子どもに大きな影響を与える。親自身が子どもになってほしい人間像になり、手本を見せよう。


(執筆:佐藤志乃 / 林幸奈)