2020.01.23 16:00
子供にとって本当に「いい親」とは?
しつけで親子関係を悪化させないための心構え

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子供がなにを考えているかわからない、どう接したらよいかわからない・・・こんな悩みをだれにも相談できず、一人で抱えていませんか?

大人の親子関係は、乳幼児期~学童期~青年期の親から子供へのかかわり方が大きく影響しています。家庭教育において、家庭が子供にとって無条件で安心できる場所(=認めてもらえる場所)であることが大切です。

なぜなら、子供にとって親はもっとも身近な信頼できるお手本であり、倫理観の基礎や社会マナーをマンツーマンで教えてくれる人だからです。学校教育と家庭教育はそれぞれ別の役割があるため、しつけを学校任せにせず、しっかり子供と向き合う時間をつくることも親の責任でしょう。

文部科学省が実施した調査によると、親が子育てについて、つぎのことを「不安だ」「知りたい」と思っているとわかりました。

子育てについての悩みや不安の内容
1位 「子供の勉強や進学のこと」  59.9%
2位 「子供のしつけやマナーのこと」  47.4%
3位 「子供の健康や発達のこと」 40.7%


家庭教育について知りたい情報
1位 「子供のほめ方・叱り方」  48.2%
2位 「子供のしつけ」が 46.8%
3位 「子供の健康・発達に関すること」 44.5%

<出典:文部科学省 / 平成28年度「家庭教育の総合的推進に関する調査研究~家庭教育支援の充実のための実態等把握調査研究~」>

どんな家庭でも親たち共通の悩みである「子供のしつけ」。親も悩みを抱える一人の人間で、子育てをしながらさまざまなことを学んでいきます。子供は親から学び、親は子供から学んでいくのです。

そこで今回は3人の作家から話を聞き、どうすればお互いに成長できる親子関係を築けるのか、ヒントを探っていきます。
無条件の愛が子供に自信を与えるのはなぜ?

野間口至さん・敞子さんご夫婦(作家)は、約30年前に長女を亡くした経験から感じたことを語ってくれた。

 

<ゲスト紹介>

野間口至(のまぐち・いたる)
野間口敞子(たかこ)

作家。
ふりむいて 真理子の著者。


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“ 私たちの長女が天国へと旅立ったのは突然のことでした。親バカかもしれませんが、やさしい性格で人付き合いもよかったです。文章も上手で優秀、親としては充分満足な子供でした。

それだけに過大な期待を持ち、そのことをよく口に出していたため、親の期待に応えようと努めていたのではないでしょうか。娘がそれを言葉や態度に出すことはなかったです。”


どんな子供も心の奥深くで親を愛しており、それと同時に、「愛されたい」という感情を生まれながらに持っています。だからこそ、自覚のあるなしにかかわらず親の期待に応えようとするのです。その傾向は、真面目な「いい子」ほど強い。


“ 当時、娘は大学3年生で、進路について迷っていました。医学部への転向を考えていましたが条件に合わず、悩んでいる節があるようでした。また、そのことをおくびにも出さず、勉学に部活動に励んでいるように見えました。

しかしある日突然、将来と現実の狭間で心境が変化し、世を儚んでしまったのではないでしょうか。「私たちが変化に気づけなかったのか」、「考え過ぎなくていい、ゆっくりでいいと伝えられなかったか」と、私たちの至らなさをただ後悔するばかりです。

今も自責の念に駆られていますが、時は戻りません。せめて、娘の冥福を祈るため月命日の墓参りを欠かさないことで、自らを慰めている次第です。”


子供は「〇〇して褒められた」という経験があると、親を喜ばせたいという思いから「褒められるために〇〇する」ようになることがあります。自分の意志で選択した経験が多ければ、自分の生き方に自信が持てるようになるでしょう。その自信の土台となるのが、親から受ける無条件の愛です。


子供は親の思い通りにならない・してはいけない

竹村公彦さん(元名城大学教諭)は、子供を自分の思い通りにしようとする親に待ったをかける。

<ゲスト紹介>

竹村公彦(たけむら・きみひこ)。
元名城大学教諭。
ヒトが人になれた理由(わけ)』の著者。


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 親は子供の人生がよりよいものになるよう願っています。そのためにどうしたらよいのか、自分の体験から理想的な育て方を考えます。

そのなかで、「私の子供」という意識が強いがゆえに本人の人格を無視し、親が描いた人生設計通りになることを夢見てしまう人もいるのです。

しかし、子供が親の願望通りになることはありません。親が「こう育っているはず」と考えたとしても、子供と親は別人格です。”



親が考える理想の幸せが、必ずしも子供にとっても幸せであるとは限りません。思い通りにならなかったとき、責めたりグチを言って子供に罪悪感を抱かせないようにしましょう。「子供のため」は「親のため」のエゴになり得ることを心にとめておきたいですね。


“ 子供の人生をよりよくしたいのならば、できるだけ多様な体験をさせるとよいでしょう。人は豊かな体験をしていると想像力も豊かになりますし、他者に理解を示せるようになります。

とくに乳幼児期~学童期の体験が大切だといわれています。そのために親や周囲の大人ができる支援は、機会をつくることです。

さまざまな体験を通して人と協力できる人間に育てることは、結果的に社会にとってよいことでもあります。


見守ることや耐えることは難しいかもしれません。人間には感情があるのでイライラもするし、怒りたくなることもあると思います。そんなときは「思い通りにならなくてイライラする自分」を自覚することからはじめてみましょう。自分の感情を理解し、少しずつでもコントロールしようとすれば、子供の見え方が変わってくるはずです。


社会で自立するために必要な人としての資質とは?

人は社会と接しながら生きていきます。自立した社会人になって欲しいという思いは、多くの親の願いでもあるでしょう。「生きるための意欲」が社会で必要な人としての資質なのではないか、と竹村さんはいう。


“ 遊びは知的好奇心を育む絶好のチャンスです。面白がったり珍しがったりしたら、子供が満足するまで好きに追及させてみてください。偶然の思いつきや、気づいた”何か”におもしろさを感じて熱中していきます。それを繰り返すなかで、思考力・洞察力・判断力などが発達していくのです。

子供が「やってみたい」「知りたい」と思うことは成長のきっかけとなる刺激です親の都合で抑制や禁止をするのはやめましょう。安全面での配慮や見守りは必要ですが、やみくもに「危険だ」「汚い」などで行動を制限してはいけません。子供のためを思った行動でも、親の発言が成長を妨害することがあります。”


子供にとっての危険は必ずしも悪ではなく、危険なことを正しく認識できれば、自ら工夫して対応しはじめます。その機会を奪うことがないよう、親がなんでも先回りしてやるのは避けましょう。


“ 親と適度な距離を保ち、自立した活動の機会を与えてください。さまざまな人との出会いが刺激となり、自然と個性がつくられていきます。

「好き」や「得意」が深まると、生きる意欲が湧いてくるのだと思います。意欲やそこから生まれる自主性は、人として大切な資質ではないでしょうか。”

この記事のまとめ 

✔︎ 子供は親の期待に応えようとするもの。無条件の愛が安心できる場所(=認めてもらえる場所)をつくる。

✔︎ 
子供と親は別人格。「思い通りにならなくてイライラする自分」を自覚することからはじめよう。

✔︎ 親が先回りして危険なことから抑制や禁止をするより、自分で考える機会を与えよう。

✔︎ 自立した活動の機会から得る刺激は、生きる意欲や自主性を育む。



(執筆:佐藤志乃 / 制作:一条恒熙)