2019.11.15 17:00

第四章
すぐにイライラする暴力に頼る人、圧倒的に足りない力とは?
宮野彬(元明治学院大学法学部教授)


これまで、社会背景からいじめ・暴力について考えてきたが、殺伐とした社会で大きな構造改革をするには多大な時間とお金がかかる。

そこで、少しでも平穏な日常生活を送るために一人ひとりがどんな意識を持てばよいか考えていく。

「刑事裁判のあり方は、社会的な条件などの変化によって大いに変わる」と宮野彬さん(元明治学院大学法学部教授)はいう。


未成年のいじめ・暴力について考えるとき、素質と環境の両面を見る必要があります。

なかには暴力的性格を強く持って生まれる人がいますが、幼少期の親の関わり方で抑えていくこともできます。

関わり方によっては性格が強くなっていき、親の見えない環境でさまざまな問題が起きます。

最悪の場合、遊び仲間を通じて暴力団員と出会い、いずれ本人も所属するようになるでしょう。そういった人は暴力団組織のなかでは従順ですが、社会のなかではまったく人が変わります。
人間は自分が見ている世界のことしかわからない。自分が正しいと思っている倫理観は、あくまで個々の狭い世界でつくられているという意識を持とう。

忘れてはならないのが、社会には自分の想像できる範囲を超えた環境で育ち、多様な経験をしている人(あるいは経験をしていない人)がいるということだ。

宮野さんは人との関わり方についてこう語る。


もっとも大切なのは想像力を持つことです。想像力があればイライラをコントロールする力が育まれます。

なにか夢中になれる仕事や趣味があれば心が充実し、相手のことを考える余裕が生まれるでしょう。

相手のことを考えるという意味では、言葉の影響力が大きいです。

暴力に頼る人の特徴として、平穏な言葉遣いが少ないことが挙げられます。

言葉で伝える能力の不足を補う形で激しい言葉に頼るのですが、激しい言葉を多く発することに慣れると、暴力行為に出るのは簡単です。

私は、言葉の勉強が想像力を育むと考えています。


幼少期にどんな言葉とふれ合ってきたかが、どんな大人になるかを決める。

自分が扱う言葉の影響力を理解し、社会とつながっていきたい。家族や友人、同僚だけでなく、街ではじめて出会う人に対してもだ。


まとめ


〇日本の教育が重んじる平等の精神が若者に窮屈さを感じさせ、進学や就職のタイミングで格差社会を実感する人が多い。

〇家父長制のなごりは現代に不要。他者と認め合い、主体的な態度で自分らしく生きよう。

〇絶対的な価値観などない。主権者意識を持ち、あきらめずに話し合いをしよう。

〇言葉について学ぶと想像力が育まれる。言葉の影響力を理解し、意識してやさしい言葉を使おう。


▼ ゲスト紹介

宮野彬(みやの・あきら)
元明治学院大学法学部教授。
1933年
 東京に生まれる
1957年
 中央大学法学部卒業
1963年
 東京大学大学院博士課程修了
鹿児島大学法文学部講師・助教授を経て現在 明治学院大学法学部教授
主著 『安楽死』(日経新書)(日本経済新聞社、1976年)
『刑事訴訟法100問』(共著)(蒼文社。1978年)
『刑法入門』(共著)(有斐閣新書)(有斐閣、1979年、[新版]1989年)
『安楽死から尊厳死へ』(弘文堂、1984年)
『刑法各論』(共著)(青林書院、1984年、[増補版] 1988年)
『犯罪の現代史』(三嶺書房、1986年)
『日本の刑事裁判』(三嶺書房、1987年)
『おもしろ公務員刑法雑学読本』(公人の友社、1988年)
『刑法の社会学』(三嶺書房、1989年)
『刑事和解と刑事仲裁』(信山社、1990年)
『裁判のテレビ中継を』(近代文藝社、1993年)