2020.02.27 14:00
趣味がない人の老後はつまらない?
ガンと向き合う作家が見つけた趣味とは呼べない「楽しみ」

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「趣味を持っています」と胸を張って言える人は、どれくらいいるだろう。

休日や息抜きの楽しみはあるけれど、趣味というほどでは……という人も、多いのではないか。

「趣味・娯楽」の行動者数は 9,855万9,000人。行動者率は人口の87.0%となっている。日本人のほとんどが趣味を持っている、ということになる。内容を見ると、映画・音楽鑑賞、読書の人気が高い。空いた時間に一人でできることも、人気の理由だろう。

<参考:総務省統計局 平成28年社会生活基本調査 生活行動に関する結果 結果の概要>

「老後の趣味」というテーマは、よく耳にする。定年後は自分の時間が増えるため、趣味が大きな役割を果たすという。

しかし若いころは仕事が忙しく、趣味に時間をかけられなかったため、定年後に時間をどう使っていいかわからない、という人は案外多い。また「遠くへの旅行が困難になった」「激しい運動が難しい」など、体力・健康面の衰えを理由に、若いころの趣味を続けられない場合もある。


老後を楽しく過ごすためには、新たに趣味を探さなくてはいけないのだろうか。きっかけや一緒にやる人が見つからない中で、新しいことをはじめるのは難しい。楽しむ前に、頭を悩ませてしまうような趣味では、本末転倒だ。

理想的な楽しい老後とは、どんなものだろうか。
定年後も楽しみを見つけて過ごしている作家に、話を聞く。


趣味がなくても、日常で楽しみを見つけるには?

楽しみと趣味は違うのだろうか。技術が得られたり交友関係を広げたりと、趣味は楽しいだけでなく、なにかを取得できる輝かしいものという印象だ。岩井昭さん(作家)は世間的な趣味のイメージと、自身の楽しみについて、こう話す。


<ゲスト紹介>

岩井昭(いわい・あきら)。
作家。
感動と物語に生きる:マージナル・ライフの実践』の著者。


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“ たしかに一つの趣味に打ち込んでいる人は、輝いて見えるでしょう。しかし特定の趣味がなくても、楽しむ心や面白がる力のある人は、その時々の感動や体験で充実しています。私のように、思いがけないものに触発されて、関心事が生まれることもあるのです。”


岩井さんは定年退職を前にした59歳で、多発性骨髄腫(血液細胞のうち、抗体をつくる働きがある「形質細胞」がガン化する病気)を宣告された。しかしそこから、新たな発見があったという。


病がきっかけとなって、多くのことを考えるようになりました。ガンとはどういうものか。命とはどんなもので、どこかにあるのか。正しい判断、正しい治療という時の「正しい」とは、どういうことか。こうした問いが、肉体から湧き出てきたのです。

そうしたことを考えつつ、60項目あまりの検査データを読むため、参考書や哲学書を読むようになりました。


 
楽しむ心を大切にすれば、無理やり趣味を見つけなくても、なにげない日常でもたくさんの発見がある。逆を言えば旅行や芸術鑑賞でも、目で見たものを面白がって、自分のなかに取り込む力がなければ、楽しむことはできない。なにをするかよりも、なにが楽しいかを大切にしよう。



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なぜ病気と向き合いながら楽しめるのか

岩井さんは自身のガンを「哲学的な病」と言う。正解への出口がない点で、哲学と完治が極めて難しい病は共通しているのだそうだ。病気や命について調べていくと、病状が悪化したケースや死といった、暗いテーマにぶつかるだろう。それでも情報を求めていくことには、勇気がいるように思える。


 若いころだったら、死や病気は恐ろしいものだったでしょう。しかし今は余計なことを考えたり、ためらったりする必要がないのです。「死」が近づいている状態で哲学に取り組んだとて、徒労に終わるだけではないと私は信じています。


今までの経験で、新しいものをシャットアウトしては、楽しみや発見を見逃してしまう。また、趣味に技術や利益などの得られるものがないと、やっていても意味がないと考えている人がいる。それもまた、ただ楽しむことを否定する、ネガティブな思考に近い。岩井さんのような前向きな姿勢が、楽しみを見つける上でとても重要だ。


答えの出ない問いを見据え、私がしていることは「読む」ということ。正解を出すためではなく、ただ読んで考えることが、今の私にとって楽しみなのです。


岩井さんは病を悲観することなく、あふれてくる疑問を楽しんで、自分の世界を広げている。楽しむ心と前向きな姿勢を大切に、日常のなかで楽しみを見つけられる人になろう。




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この記事のまとめ 

✔︎ 趣味と呼べるものがなくても、老後の楽しみは見つかる。

✔︎ 
楽しむ心を持てば、なにげない日常の中でも楽しみが見つける。面白がり、楽しむ心を持とう。

✔︎ 今までの価値観や、得られるものがないという理由で否定せず、前向きな姿勢で新しい楽しみとの出会いを受け入れよう。


(執筆:林幸奈)