2020.03.04 14:00
人との出会いは、コスパ重視で本当にいいのか?
良い縁と悪い縁は、築く過程と結果で決まる。

写真
春から新生活が始まる人も多いだろう。
楽しみな気持ちで迎えられればよいのだが、新しい環境に緊張や不安はつきものだ。 

主な原因の一つが、人間関係。環境に慣れつつ、知らない人と一から関係をつくるのは大変なことだ。同僚とは仲良くしなくては、上下関係は厳しいだろうか……と、相手によって関係の理想も変わってくる。

初対面の人にも気軽に声をかけたり、気配りが上手だったりと、新しい環境でも円滑に人間関係をつくれる人は羨ましい。しかし、そうした人と比べることで「どうして、うまくできないんだろう」と、知らないうちに自分を責めてしまう。

全員と仲良くできるとよいのだが、どうしても相性というものはある。つきあうべき人・そうでない人を見極める方法はないものか。職場や学校での人間関係は、長くつきあっていくもの。できればストレスの少ない方がいい。


人間関係に悩みはつきものだが、「こうすればいい」という正解はあるのだろうか。仕事を通じて、たくさんの縁を築いてきたゲストとともに、良い縁とはなにかを考える。


良縁は訪れるものではなくつくるもの

日本人はおみくじや占い好きの人が多い。神社仏閣へお参りに行くとつい、おみくじを引きたくなる人も多いのではないだろうか。おみくじや占いに書かれている縁の話は、受け止める人の精神状態や状況によってどんな影響をもたらすか変わってくる。

何を信じるかは人それぞれですが、自分の日々の行いや人に対する接し方、心の持ちようを整理して考えるにはよいきっかけとなるでしょう。清水征政さん(一級建築士)は、縁に対する考え方について語ってくれた。


現代人は、最初から損しない縁をつかみたがる人が多いと感じています。しかし損得勘定から関係を結ぼうという心がけでは、結果として悪い縁になりそうです。縁の良し悪しを決める基準なんて、ないと思います。縁を良くするも、悪くするも、それは縁が結ばれたあとでなくてはわかりませんから。


<ゲスト紹介>
清水征政(しみず・ゆきまさ)。
都立高校非常勤講師。
サクラ群衆: 「個」の獲得のために』の著者。

写真 


出会った人との「縁」を育くむことは大切だが、「縁」に頼りすぎて自分で考えることをやめてしまってはいけない。人間関係は損得勘定だけでは深まっていかないからだ。

初対面ではわからなかった素顔も、時間が経つに連れて見えたり、意外な場所に同じ趣味や目標を持った人がいたりして、長いつきあいになることもある。自分らしくいられる人との付き合いを大切にし、良縁にしていこう。


写真


仕事における信頼関係を築くためには?

清水さんは一級建築士という仕事を通じて、たくさんの出会いがあった。


建築設計は、材料や資金との格闘であるとともに、その家に住む人たちとの関係をゼロから築いていく仕事です。縁の良し悪しは仕事が終わったあとで、「納得してもらえる建物」として受け取ってもらってから言えること。


家を建てるのは家族にとって、人生に一度の大きなイベント。信頼関係を築き、建物が理想通りに完成してはじめて、良い縁が生まれるのだという。仕事で重要になる信頼関係のつくり方を、清水さんはこう話す。


なにに対しても常に誠実な人が、信頼できる人だと思います。自分がそういう人でなければ、人の苦しみ・悲しみがわからず、たとえ信頼できる人に出会っても、その出会いを活かせないでしょう。


あいさつや言葉づかい、仕事に対する真面目な姿勢など、基本的なことのつみ重ねから信頼は集まる。それが誰にでも平等に出来ているかどうかも、周囲は見ている。おろそかにせず、誰に対しても基本的なマナーを大切にしよう。


写真


無理をしない・疲れない人間関係のつくり方

誠実な態度によって、第一印象は良くなる。しかし「多くの人に気に入られたい」「人間関係を円滑にしたい」と思うあまり、真面目がいき過ぎたり無理をしたりすると、人間関係に疲れを感じてしまう。ゴールデンウィーク頃に話題になる「五月病」も、こうした頑張りが原因とされる。清水さんは、無理をして良い自分を演出することは薦めない。


私は職責を誠実に果たすようにしていますが、欲を出したり、いい格好をしたりはしません。そうすれば、自然と大切にすべき縁が見えてきますよ。


無理をした自分でいると、周囲が寄せる期待と本心のギャップに苦しむ。期待に応えられない自分を否定し、自信を失う。悩みによって表情や雰囲気が暗くなっていき、周囲の人が離れてしまった……とならないためにも、無理は禁物だ。

自然体でいることで、自分に合う人・そうでない人を見極めることもできる。最初のうちは意見がぶつかったり、戸惑ったりするが、それを繰り返すうちに関係が出来ていく。


もともと、最初から適切な距離感のわかる人などいないのです。自分で距離感をつかんでいくことで、人として成長できます。”


また、自分を大切にしてくれる相手に対しても、ありのままの個性を受け入れる姿勢が必要だ。人間関係は、仕事やグループでの活動に大きく影響する。互いに無理をしない、心地よい環境をつくろう。人間関係に「こうすればいい」という正解はない。

目の前にいる人をしっかり見ることが、よい人間関係を築いていくために必要だ。


写真
この記事のまとめ 

✔︎ 良縁は、自分の人との付き合い方でつくられていく。損得だけで人間関係を決めず、出会った人と誠実に向き合おう。

✔︎ 
信頼関係は、あいさつ・言葉遣い・真面目な姿勢など、基本的なことのつみ重ね。おろそかにせず、誰に対してもマナーが良い人になろう。

✔︎ 「良い人に思われたい」と思って無理をすると、周りの期待が大きくなりすぎて、自分を責めることになる。互いに自然体が受け入れられる環境をつくろう。


(執筆:林幸奈)