先日の台風19号の影響で、スーパーでは飲料や食品を買い求める人の行列ができ、商品の品薄や品切れが相次いだ。



災害に備える行動が目立つ一方で、どこかで「自分は死なない」と思っていませんか?


2019年に発生した自然災害13件のうち、8件で死者が発生している。この8件で確認できる死者は88人にのぼる。


<参考:『内閣府 防災情報のページ』災害状況一覧 令和元年/平成31年(10月23日9:00現在)>http://www.bousai.go.jp/updates/


この他に、避難生活の疲労や環境の悪化による病気、持病の悪化による災害関連死も多数あることを考えると、災害による死は他人事ではない。


|人生で3回は被災する時代、正常性バイアスに危機感を持とう
そこで、平塚千尋さん(災害情報リテラシー研究家、元NHK局員、元大学講師)から人々の災害に対する危機管理の姿勢について話を伺った。


災害は『同じところで繰り返す』、『忘れたころにやってくる』、『常に新しい顔をして現れる』、『地域に特徴的な顔をして現れる』とよく言われています。

今回の台風19号による災害も、まさにこの言葉があてはまるものでした。記録的な豪雨ではありましたが、ほとんどの被災地は過去にも災害にあっています。

さらに、各自治体のハザードマップで予想された被災地区と重なっていました。これまで、一生に1度被災するかどうかでしたが、すべての人が生きている間に2度3度と被災する可能性があるという認識が必要です。
防災について、物資を備える意識は広まってきているが、災害に直面したときの避難行動はまだまだ危機管理の意識が低い。


人は異常事態になると、「自分は大丈夫」と心の平穏を保とうとする正常性バイアスがかかる。これは決して悪ではなく、人間の心の健康を保つために無意識に行う自然なことだ。


しかし、この正常性バイアスが逃げ遅れにつながり、死の可能性を高めることもある。正常性バイアスにより被害が広がった例として、西日本豪雨で甚大な被害を受けた倉敷市真備町が挙げられる。


川の決壊により広範囲で家屋の1階が浸水したが、それでも避難しない人(できない人)が多数いた。そのほとんどが高齢者で、過去の水害を覚えていたため、「今回も大丈夫、死なない」という意識があったという。


ことの重大さに気づいたとき、体が不自由で体力のない高齢者ではもう避難できないほどの水の深さになっていた。その結果、真備町では51人が亡くなり、そのうちの42人は逃げ遅れたと見られる人たちだった。


今回の台風19号でも、死者77人のうち半数以上が水害で死亡したという。平塚さんは、過去の災害を知る人ほど逃げ遅れる傾向があるという。


台風19号上陸のかなり前から気象庁は危険性を指摘し、警戒情報を発信していました。河川の情報水位・警戒・決壊情報については、一部遅れや欠如があったものの、インターネットや放送で大量に流れていました。

それにも関わらず、死者が発生する大災害となった理由のひとつに、人々の正常性バイアスが挙げられるでしょう。地域社会・自治体・住民は、過去の災害を単なる記憶として認識してはいないでしょうか。避難について、経験則から判断することは危険です。
自治体が発信する災害情報の内容は充実してきているが、情報の届け方と情報を受け取る側の意識に課題がありそうだ。


「避難しなくても助かった」はとても危険だという意識を持ち、「避難したけど何もなかった」と思えるような行動を選択していきたい。


|まとめ


災害大国日本では防災に関する情報があふれており、人々の意識が高まっていることが伺える。とくに、避難時の荷物や家庭での備蓄品についての興味関心が高い。


しかし、避難所へ行くことはまだまだハードルが高いようで、危険な状況になる前に避難行動をとっている人は多くない。


「死」に対して、どこか他人事のようにとらえているとしたら、意識を変えることが一番の防災だ。


●だれもが正常性バイアスを持っていることを知ろう。災害時の「自分は大丈夫」という考えは危険。「自分は死ぬかもしれない」という意識が大切。

●自治体の情報を基準に判断し、早めに避難しよう。経験則で避難するかどうか決めることは危険。

 

 企画・執筆:佐藤志乃 / 企画・制作:一条恒熙


▼ ゲスト紹介

平塚千尋
(ひらつか・ちひろ)。
災害情報リテラシー研究家、元NHK局員、元大学講師