東日本大震災以降、「ハザードマップ」という言葉をよく聞くようになった。これは、自然災害が発生したときの予測被害範囲が示された地図のことで、各自治体などから配布されている。

 

ハザードマップについて知っていても、どのように見たらよいか深く知らない人もいるのではないだろうか。もっとも大切なのは、危険地域を確認するだけでなく、その先を考えることだ。

 

そこで、平塚千尋さん(災害情報リテラシー研究家、元NHK局員、元大学講師)からハザードマップの必要性と見方について話を伺った。

 

| ハザードマップを見て何を考えたらよいか

私たちは、ハザードマップ上で自宅が災害区域かどうか見るだけでなく、その内容を理解しなければなりません。自分の日常生活の延長線上に災害が起きることを想像し、その状況でどう行動するかイメージトレーニングをしておくことが大切です。これにより、少なくとも人的被害は抑えられます。
東日本大震災以降、ハザードマップがあらためて注目されているが、都心部は上京者が多いことや単身世帯化などを理由に、住まい周辺の情報に詳しくない人もいる。


自治体が地域の情報を届けること、住民が地域の情報を調べること、お互いにハザードマップの活用方法を考えられるしくみが必要だ。
台風19号犠牲者の多くが高齢者でしたが、高齢者にとってハザードマップの理解は難しく、情報も伝わりにくいです。結局は親族や地域の近隣住民、町内会・自治会、自治体の対応に頼らざるを得ません。地域と住民の連携、そのための体制整備は今後の大きな課題です。

自治体の対応として、単にハザードマップを配布するだけでは不十分です。地域のハザードマップ説明会を開き、担当者が話すことで住民はより理解を深められます。

過去の災害の経緯やその後の対応はどうだったのか、ハザードマップでは具体的にどのような気象条件(雨の降雨量、降水時間、時間経過)や過去の災害事例をもとに想定しているのかまで深く考えられるとよいです。
ハザードマップの説明会を開く自治体は増えているが、多くはない。説明会を休日に開催している自治体となるとさらに少なく、参加できる住民は限られる。


帰宅が遅い社会人や小さい子供を抱える親、会場までの足がない高齢者、言葉がわからない外国人など、さまざまな環境の人に広く情報を届ける工夫が必要だ。


|ハザードマップの新しい活用方法
 
そこで、この問題を解決するための一策として、説明会の動画をYouTubeで配信することを提案する。


すでに、東京都の足立区は『動画deあだち』に「足立区洪水ハザードマップ(通常版・字幕入)をアップロードしている。

積極的に動画を制作し、広く住民に届けようとする取り組みが素晴らしい。これを参考に必要な内容をアップデートし、地区ごとの動画があったら便利だ。



さらに、日本語・英語などの字幕を付ければさまざまな環境の人に届きやすい。YouTube動画は個人で見るものというイメージが強いが、専門家から直接話を聞くことが難しい場合に学校や自治会の場で見るなど、さまざまな活用方法が考えられる。
 


動画をつくる際に、芸能人やインフルエンサーに出演してもらうこともひとつの手だ。まずは多くの人に見てもらえる動画をつくることに価値がある。


時代の変化とともに情報を集める方法は変わっていくが、ただ情報を受け取るだけの受け身な姿勢は危険であると自覚したい。


受け取った後、さらにどんな情報が欲しいか考えることで理解が深まっていくので、情報を持っているだけでは宝の持ち腐れだ。みなさんが手にした情報が、行動の原動力となるよう願っている。


 

 

|この記事のまとめ



ハザードマップについて知っていれば絶対に安全ということはない。なぜなら、人々の想像を超えてくるのが災害だからだ。


災害に備えるほど「自分は死なない」という意識が強くなっているかもしれない、このことを忘れないでほしい。


● ハザードマップを見て、避難行動のイメージトレーニングが大切。自宅が危険かどうか見るだけでは不十分。
● ハザードマップの内容を最大限活用するしくみが必要。説明会や動画など、新しい手法も視野に入れていきたい。
企画・執筆:佐藤志乃 / 企画・制作:一条恒熙

▼ ゲスト紹介

平塚千尋
(ひらつか・ちひろ)。
災害情報リテラシー研究家、元NHK局員、元大学講師