●自分を持っている人になる【後編】

だれかに認められると自信がつく。でも、だれかの声に支配されるのはやめよう。自立するための直観力ってなに?
2019.09.13 11:00

【前編】のポイント
●社会的に認められる人=素直な人。相手の事情を思いやる心が大切。
●今あるものを深めるか、新しいことをやってみると自信がつく。
この記事のポイント
●社会の「普通」にとらわれず、自分が見たもの・感じたものを信じよう!
●「直観力」が自分をつくり、自分を支えてくれる。
|「普通」から「特別」になる

佐藤。

SOCIO編集長。

佐藤|
関西大学教授(社会学部)・京都大学教授(大学院教育学研究科)・放送大学客員教授などを歴任してきた教育学博士(京都大学)の德岡秀雄さんにお聞きします。
世間でよく使われている「普通」という言葉に違和感があります。ときどき、「普通は〇〇だよね」と言ってしまうことがあるのですが、なにを持って「普通」とするのか説明できません。

德岡秀雄(とくおか・ひでお)

関西大学教授(社会学部)、京都大学教授(大学院教育学研究科)、放送大学客員教授、などを歴任。

教育学博士(京都大学)。著書に『仏教の現世利益』。

德岡|
まず、世間で「普通」と言われているものごとの基準は横軸で考えられています。つまり、時間の経過を縦とした場合、同じ時間を共有したものごとはつながっているものとして考えられ、横並びで考えられてしまうのです。「普通」の基準を考えるとき、法律・道徳・倫理が用いられます。
あくまでもこれは相対的な基準で、だれかとくらべているにすぎません。世間から非難されないためには基準の範囲内で振る舞う必要がありますが、その基準が地域や時代によって変化するのは当然です。近年では、何事も気にしすぎてしまう生きづらい人に「HSP(Highly sensitive Person感覚過敏)」というレッテルを貼ることがありますが、これはあくまでも平均値(偏差値)が尺度です。
佐藤|
「普通」って自分が思っているより曖昧で、絶対的なものではないのだと考え直させられました。世の中が勝手につくった基準に振り回されるより、自分自身でものごとを判断できる「特別」な目を養うことの方がずっと大切なことですね。それはどうやったら養うことができますか?
德岡|
情報が過剰に氾濫する現代は、メディア・リテラシーが課題となります。アメリカのある政治家は、自分に都合の悪い情報を「フェイク・ニュース(虚偽の情報)」だと主張しています。情報が多いと自分で考えなくても済んでしまいますが、情報源を自分で確かめる姿勢が重要になります。そして、情報社会だからこそアイ・コンタクトがコミュニケーションの基本であることを忘れないでください。
面と向かって話ができる人間関係を大切にしましょう。「友だちの友だち」が「わたしにとっての友だち」になるためには、アイ・コンタクトが基本です。
|空気を読みすぎない
佐藤|
どれだけインターネットでのコミュニケーションが発達したとしても、目を合わせたときに感じられることってありますよね。現代は、SNS上は活発だけど、対面で話すことが苦手という人が増えています。
自分の発言や行動がもたらす影響を想像して恥ずかしく思い、自分が考える普通からはみ出ることを恐れた結果が「空気を読みすぎる」ということにつながっているように思います。そのような窮屈さで苦しんでいる人になにを伝えたいですか?
德岡|
ものごとを縦軸で考えてみてほしいです。横軸ですべてがつながっていると考えてしまうと、目の前のことに疲れてしまうと思います。わたしが印象深かったエピソードに、歌舞伎役者の七代目・坂東三津五郎の話があります。彼は、今は亡き師匠である先輩の眼を意識して「死者の前で踊る」と言ったそうです。
日本のビジネスの場でよく聞く「お客様は神様です」ということとは90度違っていて、方向性そのものが違います。目の前にある「普通」ではなく、もっと広い視野で「不変・普遍」を意識してみましょう。空気を読むことだけに疲れてしまう日々とは、違った感覚が得られるはずです。
佐藤|
目の前にあるものだけがすべてではないということですね。空気を読むこと=想像力だと思うのですが、それが行き過ぎると、逆に想像力が足りない行動につながってしまいます。勝手に相手を自分のなかの型に当てはめているようなものですし、わたしたちが他者について想像できる範囲というのは思っているよりもずっと狭いはずです。なぜ「普通」に違和感があるのか、わかってきました!
德岡|
世間に目を向けていると、「〇〇でなければならない」といった義務感が襲ってきます。しかし、ものごとを縦軸で考えてみると実際には見えないけれど心にあるものに目を向けることになり、緊張感が和らぎほっとします。たまには現実生活を切り離し、ひとりでものごとに向き合う時間をつくってみましょう。きっと心に余裕ができるのではないでしょうか。
佐藤|
もっと自分の内側に広がる世界に目を向ける時間が必要なんですね。日常の情報が多いと他者に共感するあまり、自分が本当はなにを考えているのかわからなくなることがあります。諦めではなく、自分を確立するためにも「自分と相手は他人である」という視点が必要なのかもしれませんね。そのうえで、自分自身の考えを言葉にし、伝えることを諦めずに人とコミュニケーションをとっていきたいです。次に、自分との向き合い方を考えていきます。

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