●「本物がわかる人」になるための方法

伝統や自然の価値がすり減っている!? インスタ映えよりも大切な、未来へ残したい感性とは。


最近の大学生たちは、どこに出かけるかインスタグラムを中心に決めている。写真を撮ることを前提として出かけるからだ。タグやスポットで検索してみると、若者にとって雑誌のモデルよりも気軽にまねしやすい一般人のおしゃれな写真であふれている。

 

しかし、インスタグラムの普及は、ワクワクする情報をわたしたちに提供してくれる半面、さまざまな危惧を生む。情報を受け取る側がアプリのフィルターによって被写体の繊細さやリアリティが塗りつぶされた写真を見ても、表面上の良さしかわからない。観光地などで投稿するための写真を撮って満足している人が多いことから考えると、もっと深いところにある、その土地や自然が持つ本物の良さにどれだけ目を向けているのか疑問である。

 

情緒あふれる自然や歴史ある神社仏閣などが、伝統の価値をまったく知らない人たちに消費され続けることが恐ろしい。このままではこころに潤いを与える価値観や感受性が失われていくだろう。

 

四季や伝統を愛することはこころを育むことであり、人生の豊かさの象徴だ。何度時代が変わっても今に残っているものには必ず魅力があり、そこには未来をつくるためのヒントが隠れている。

 

そこで今回は3人のゲストから話を聞き、人生を充実させるためのヒントを考えていく。

 

|ひらめきは自然のなかから生まれる

自然豊かな岐阜県可児市で約40年間暮らしている澤田盛夫さん(歴史小説家)は言う。

日課の里山ウォーキングは、健康維持のためだけではありません。自然のなかを歩いているときが1番リラックスできます。そして、その土地の歴史に思いを馳せると意外なアイディアが出てくることがあり、創造力がかき立てられます。

澤田さんは、秋になると美しい紅葉を楽しむために市外の寺院まで出かけるという。澤田さんが毎年訪れている下呂市飛騨金山の要仲山玉龍寺(通称「もみじ寺」)は、とくに紅葉の名所と言われていて、下呂市指定文化財で天然記念物である「左巻きの榧(がや)の木」など見所が多い。

境内を真っ赤に覆う紅葉を裏から透かすように見ると、艶やかな美しさが見事です。それだけでなく、池に映る鮮やかな色彩や、歩いた道を振り返ったときの紅葉のパノラマも圧巻です。そのなかにひっそりと飛騨の偉人の石碑もあったりして、歴史に名を残した人たちと同じ景色を見ているのだろうと考えてしまいます。

さまざまな角度から自然と向き合い、日常的に季節の美しさを楽しむ方法を知っている澤田さん。そこから得られるインスピレーションが執筆活動の原動力だ。

なにかを見て「素敵だな」と感じたその先にある感受性を大切にしている。美しい自然への感動に加えて、昔の人の気配をイメージするなど、そこにあるものとないもの両方と向き合う姿勢がある。